史上初の日本人の血を一滴も持たない日本文学者のデビュー作。「血とか母国とかどうでもいい」と心から言い切れればステキですがそうはなれず、「えっ、アメリカ生まれのアメリカ人が書いたの?」という驚きを禁じえません。しかし描かれる青年期の葛藤、世間に対する違和感は日本で暮らす金髪ロン毛碧眼の青年を通すことで、よりくっきりと描き出され、ベンが言葉や偏見や国を越えようとするように、いつしか読んでる方も、そんなもの越えてしまおう、いや越えた!みたいな気分になってきます。素晴らしい本でした。(カラスヤ)
レビュアー
1973年生まれ。漫画家。著作に『カラスヤサトシ』『カラスヤサトシのおしゃれ歌留多』『強風記』『喪男の社会学入門』『毎日カラスヤサトシ』『オレは子を見て育とうと思う』『カラスヤサトシの世界スパイス紀行』『おとろし』など多数。『アフタヌーンはカラスヤサトシのもの』を「アフタヌーン」で連載中。近刊に新書館『カラスヤサトシの孫子まるわかり』、講談社『カラスヤサトシ』9巻、リイド社『カラスヤサトシの戦国散歩』があります。
近況:何十年ぶりにキャンプに行ってきます、知らない人も来ます、まったく寝れない予感がします。