「文化の仕掛け人」と呼ばれた徳間康快をご存じだろうか? プロデューサーとして、宮崎駿を育てあげ、株式会社スタジオジブリの初代社長に就任した男だ。そのほかにも徳間書店を興し、『アサヒ芸能』編集長として部下を育て、その後『東京タイムズ』の社長に就任した。倒産寸前の『大映』の再建を請け負ったこともある。
さまざまな逸話を残した彼は、いい評判だけでなく悪い評判も転がっている。いったい彼はメディアの黒幕なのか? それともメディアの怪人なのか……。
本書は、徳間の葬式の場面からスタートする。最期に放った言葉は「オレはだまされた」だった。いったい彼は誰にだまされたというのだろうか? そしてそれを読み解くかのように、徳間の周りにいた人たちから得た証言をもとに、徳間のエピソードが紹介される。
他者から描かれる彼の人物像は、たとえば「時流を読む才に富んでいた」「ケンカ上手であった」「突拍子もないことを考えた」などまさに豪快であり、それでいて少しチャーミングでもあった。破天荒に振る舞うが、1つの筋はきっちりと通しているから、誰もが彼についていきたくなってしまうのだろう。それ以外にも徳間は「心配するな。カネは銀行にいくらでもある」「人間的魅力さえあれば、あらゆる艱難辛苦は乗り越えられる」と豪語する。その発言から見える彼の哲学には強く惹かれるものがあるだろう。
目次
- 第一章 読売新聞への愛憎
後輩・渡邉恒雄と氏家齊一郎/『権力の陰謀』事件 - 第二章 先輩にかわいがられる
松本重治という先達/緒方竹虎との出会い - 第三章 頼まれ人生
異色官僚との交友/念願の日刊紙『東京タイムズ』 - 第四章 濁々併せ呑む
大映に響く徳間ラッパ/つねに崖っぷちで生きる - 第五章 見果てぬ夢
ダイアナ妃に出演交渉/失敗こそ人生 - 特別対談・森村誠一氏
著者紹介:佐高 信
1945年、山形県酒田市生まれ。高校教師、経済雑誌の編集長を経て評論家に。経済評論にとどまらず、憲法、教育など現代日本について辛口の評論活動を続ける。『週刊金曜日』編集委員。著書に『人間が幸福になれない日本の会社』(平凡社)、『安倍晋三と岸信介と公明党の罪』(河出書房新社)、『安倍政権10の大罪』(毎日新聞社)、『自民党と創価学会』(集英社)、『新装版 逆命利君』(講談社)、共著に『偽りの保守・安倍晋三の正体』(講談社)など多数。
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レビュアー:名久井梨香
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