カリスマホストがITで炎上子育て
日本に革命を起こす新時代のイクメン小説!
「こんな未来ありえない!」とは、どうしても言えないのです。──西加奈子氏
1975年、大阪府大阪市生まれ。兵庫県姫路市育ち。2004年『左巻キ式ラストリゾート』でデビュー。著書に『零式』『全滅脳フューチャー!!!』『愛についての感じ』『ニコニコ時給800円』『明日、機械がヒトになる ルポ最新科学』『夏の方舟』などがある。
著者エッセイ
日本の子育てはデスゲームです
「保育園落ちた、日本死ね」が流行語になったのも記憶に新しい今年、ぼくは一本の育児小説を刊行した。
『キッズファイヤー・ドットコム』
ホストが捨て子を拾って、世間に非難されながらもクラウドファンディングで子育てする──そんな内容の小説である。
編集者から「育児小説を」と依頼されてから実に6年が経っていた。
6年のあいだなにをしていたのか?
子育てである。
これまでそのことをあまり表立っては口にしていなかったのだが、実際大変すぎてネタにしているヒマもなかったのである。
ワンオペ育児は地獄
今の日本で子育てすることの大変さは、連日いろいろなメディアが伝えているが、こればかりは体験しないとわからない部分が多い。それに加え、男女・経済・地域によってそれぞれ、あまりに状況がちがいすぎるため、誰かが何か意見を言うたびに炎上しているのを見かける。
以前は他人事だったが、今ならわかる……はっきり言って、日本の子育ては罰ゲームを超えたデスゲームのレベルである。
ぼくの場合、ひとりで面倒を見ている時期がデスゲームのピークだった。保活に戸惑い、なにもかもわからないまま自宅で面倒を見た1年目。2年目にパートナーが体調を崩し、ぼくのワンオペとなる。ぎりぎりなんとか保育園に入ることができたものの、そこは区外の認証園(私立みたいなもの)だった。
毎朝起きて子供を抱っこひもでかかえ、通勤ラッシュの地下鉄に乗り込み、圧死の危機を感じつつ自宅から30分かけて園に子供を連れて行く毎日……眠れない、働けない、お金がない、時間がない。
地獄だった。
普段は社会問題に興味がないぼくだが、さすがにこの状況を目の当たりにしてびっくりした。
もはや呆れて言葉が出なかったが、ものを書くのが仕事なのでそうも言っていられない。というわけで、このような実体験を経て生まれたのが本書である。
クラウドファンディングで子育て?
小説のなかでキーワードになる「クラウドファンディング」というのは、あるプロジェクトを立ち上げ、それに共感する出資者を集めて寄付を募るシステムだが、この仕組を使って子育てができないだろうか──。
当時はそんなことを考えていた。もし、日本中の老人が貧しい家庭に産まれた赤ちゃんに寄付をしたなら、現在の経済・世代間格差が解消されるかも知れない。
読者の一部から、「クラウドファンディングで子育てするという発想が荒唐無稽では……」と指摘されたこともあるが、実はこのアイデアは2013年に実現している。
借金のある妊婦がツイッターで窮状を訴えたところ、起業家の家入一真がそれをサポート。口座を晒して募金を募ることを提案。賛否の意見があふれて炎上騒ぎになったものの、彼女の口座には、実際にいろいろな人がお金を振り込んだ(現在もアカウントはあるが更新されていない)。
この事件を知ったのは、ぼくが小説を書いた後だった。事件のことを知っても「まあ、あるだろうな」とあまり驚かなかった。現在の育児環境を知れば知るほど、そのくらいのことはありえるだろうと思った。
様々な人が声を上げているにもかかわらず、一向に根本的解決を見ないこの状況……。社会問題は、たくさんの人間がその大変さに心から共感できてこそ改善されていく。ぼくの小説がその一助となれば幸いである。
イクメンが話題の時代、全国の書店員さんから共感の声!
社会巻き込み型で、心の中に革命が起こるかもしれない小説です。そして、そこには愛がある。──山田恵理子さん(うさぎやTSUTAYA矢板店)
そんなことをしてもいいの? と、自分や相手を責めたくなる時に、この本を読んで欲しいです。神威のチャラくてまっすぐな言葉が心に響きます!──鈴木かがりさん(ジュンク堂書店藤沢店)
「子供は社会で、みんなで育てなければいけない」と語っていた友人の言葉を思い出しました。異色だけど、気づいたら最後まで読んでいました。──佐伯敦子さん(有隣堂伊勢佐木町本店)
弱者たち、強者への逆転! 子育てした方にはもちろんのこと、子育てはまだの人にもぜひ読んでほしいなぁと思いました。──江連聡美さん(書泉ブックタワー)
育児が全く似合わないカリスマホストが今日から赤ちゃんと同伴出勤。いつもながら著者は発想や提言が具体的ですごい。──冨田昭三さん(明林堂書店別府本店)
面白い!! その日のうちに読破してしまいました! いろんな流行や時事関連のネタも豊富! 熊本は「赤ちゃんポスト」を設置している病院もあるので、身近な話題として興味深いです。──三瀬弘泰さん(蔦屋書店熊本三年坂)
カリスマホストから子育てサイトの管理者に。えーっ、という展開だけど話の面白さに引っ張られて、あっという間に読了。もしかして、これ、新しいビジネスモデルになるかも!?──井上哲也さん(大垣書店高垣店)
社会問題を俯瞰的に論じないで、情緒にぐっと訴えられているところ、それもまったくあざとくなく、良い方向に期待を裏切られました。──市岡陽子さん(喜久屋書店阿倍野店)
ホストのチャラさとカッコよさ、そこに独特のアイデアが合わさって、とんでもないプロジェクトが立ち上がりました! ぶっとんだ感動育児小説!──猪俣宏美さん(旭屋書店新越谷店)
二編ともとても面白かったです。特に、清春の言語中枢が焼き切れそうになる辺りを頂点に、本当に笑わされました。──児玉真也さん(長崎書店)
かなり突飛で考えられない行動も、今のもつれた社会問題を解決させるには、このくらいの強引さが必要なのかもしれない。──鶴田真さん(正文館書店)
複雑な家庭環境ながらも、何事にも前向きに生きる神威。見知らぬ赤ちゃんも受け入れ、世界を巻き込んでの子育てに驚きつつ惹きこまれました。魅力的な登場人物と、根底にある「愛」の力で、重たげなテーマも軽やかに読めました。──竹腰香里さん(丸善名古屋本店)
どんな形であれ、見捨てずに手を差し伸べてくれる世の中になれば、不幸な子がいなくなる! いつか、そんな時代がやってくるだろう! と思わせてくれる。──星由妃さん(ゲオ)
新感覚の育児小説⋯! 何よりも神威のポジティブ思考に励まされた。いろんな「今」が詰まった素敵な作品。子育て世代の働くお母さんたちに優しい世の中になってほしい。合言葉はもちろん「ウェーイ!」(笑)──山本机久美さん(柳正堂書店オギノ湯村SC店)
ふと「子育てはたくさんの手があった方がいい」という祖母の言葉を思い出し、まさにクラウドファンディング=たくさんの手に思えました。奇抜なアイディアだけど、社会のひずみをシビアに指摘しています。──稲葉範子さん(ブックエース結城店)
「キッズファイヤー・ドットコム」で子育てから現代社会の問題を提示し、ITと人の誠実さからひとつの可能性を描き、「キャッチャー・イン・ザ・トゥルース」でその可能性を敷衍してあり得べき未来を描いてみせる。めちゃくちゃにおもしろくて、とてもリリカルなSFだ。──月元健伍さん(宮脇書店松本店)
ユーモアの中に皮肉たっぷり、あふれるアイディアに風刺がピリリ……。決して笑い飛ばせない現在を描ききったこの作品は、世の中を刺激する絶妙なスパイスとなるだろう。意外なくらい潔い真っ直ぐさに一票!──内田剛さん(三省堂書店営業企画室)