2016年8月の映画公開で話題の『ルドルフとイッパイアッテナ』で知られる児童文学作家、斉藤洋さんの新作童話が生まれました。斉藤洋さんの初期作品『どうぶつえんのいっしゅうかん』は、1988年の刊行以来、国語教科書や、NHK「母と子のてれび絵本」で採用されるなど、33刷のロングセラーとなっています。この秋誕生した「サバンナのいちにち」は、実に28年の時を経て刊行される『どうぶつえんのいっしゅうかん』の姉妹編といえる作品。作の斉藤洋さん、絵の高畠純さんのお2人と、担当編集者から刊行によせてメッセージが届いています。
■「サバンナのいちにち」はこんなお話
【あらすじ】
毎朝かけっこをするサイとカバ。
そのサイをまちかまえて、「こんじょうだめし」をするヒョウの3兄弟。
シマウマのむれにしのびこんで、いたずらをするオカピ。
自分より何倍も大きいニシキヘビにけんかをしかけようとするシママングース。
天の川は星なのか川なのかをたしかめるため、夜空を飛んでいくワシとワシミミズク——。
美しい大自然の中、ユーモラスな動物たちの1日のようすが生き生きと描かれます。
物語の舞台は「サバンナ」!
雨季と乾季のある熱帯に分布する、疎林と低木を交えた熱帯長草草原地帯です。
■本書刊行によせて
【作:斉藤 洋さんから】
『ルドルフとイッパイアッテナ』でデビューさせていただき、4冊目の本が『どうぶつえんのいっしゅうかん』でした。高畠純先生とは、そのとき以来のおつきあいです。およそ30年の間、「ペンギン」シリーズなど、さまざまな本でお世話になりました。
『サバンナのいちにち』は、『どうぶつえんのいっしゅうかん』の姉妹編であります。この機会に、私は高畠純先生に申し上げておきましょう。
「これで終わりと思うなよ!」
1988年8月に刊行された「どうぶつえんのいっしゅうかん」は、斉藤洋さんと高畠純さんの2人で手掛けた最初の作品。ユーモアあふれる動物園の動物たちの1週間が描かれています。ラマの夢を食べすぎてお腹をこわしたバク、吠えるサービスをしすぎ声をからした気のいいライオン、自分勝手なペンギンなど、愉快な動物が7日間、日替わりで登場します。
【絵:高畠 純さんから】
斉藤洋の童話はリアルである。このお話に出てくる動物は、カバであり、アフリカゾウであり、ヒョウでもある。もちろんサバンナの地域に生息している。
各動物たちを描くにあたって、おもしろいことにも気づく。大きな動物といえども、爪の有りよう、指が様々なのだ。また、サバンナを感じさせるのは動物というより、独特のアカシアの木の形態。日本に住んでいるぼくはこの木が剪定された松の木にみえないよう一生懸命描きました。そんな中でのこの豊かな話、どうぞ味わってください。
表紙の候補として最後まで迷ったという1枚。ゼブラの大群の中、1頭だけ振り向くオカピの姿はなんともチャーミング。使われないのはあまりにも惜しい!ということで、書店での販売促進用POPに使用されています。是非お近くの書店で探してみてください。
【担当編集者から】
ロングセラー『どうぶつえんのいっしゅうかん』の姉妹編があったらいいなあ……ということで『サバンナのいちにち』を書いていただき、忠実に同じかたちの本を作りました。斉藤洋先生の文章も、高畠純先生のさし絵も完璧で「童話のお手本」とも言えるような本ができました。
個人的には、毎朝走ってくるサイの前で、根性だめしをするヒョウの兄弟の話が好きです。この本に出てくる動物たちは、みんな好き勝手なことをしているようでいながら、不思議なやさしさにあふれているんですよね。
担当編集・Sのおすすめエピソードの1ページ(背景には、高畠さんこだわりのアカシア!)。サバンナの雨季と乾季をくっきりと感じられる描写や鮮やかな朝の光景、心優しいサイとヒョウの3兄弟のやんちゃぶりをぜひ、本でご確認ください。
1952年、東京都生まれ。中央大学大学院文学研究科修了。1986年、『ルドルフとイッパイアッテナ』で講談社児童文学新人賞受賞、同作でデビュー。1988年、『ルドルフ ともだち ひとりだち』で野間児童文芸新人賞受賞。1991年、路傍の石幼少年文学賞受賞。2013年、『ルドルフとスノーホワイト』で野間児童文芸賞受賞。他の作品に『どうぶつえんのいっしゅうかん』、「ペンギン」シリーズ、「おばけずかん」シリーズなど多数がある。
1948年、愛知県生まれ。愛知教育大学美術科卒業。1983年、『だれのじてんしゃ』でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞を受賞。2004年、『オー・スッパ』で日本絵本賞を、2011年、『ふたりのナマケモノ』で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。斉藤洋とのコンビに、『どうぶつえんのいっしゅうかん』「ペンギン」シリーズなど多数の作品がある。