『いとしの犬 ハチ』や『てぶくろ』など、「大切なものはなにか?」をテーマに作品づくりを続けるいもとようこさん。新作ではアイディアをあたためていたという「スマホ」がテーマ。「子ども向けの絵本のテーマがスマホ?」と思われる方も、そうでない方も、スマホと人間との関わり方について、ちょっと立ち止まって考えてほしい、そんな思いがこめられた絵本と、いもとさんのメッセージをご紹介します。
「本当に必要なこと、大切なものは何か」を問いかける
近年、スマホの普及は若年層にも急速に広がりをみせています。しかし、ネットへのアクセス、各種アプリの利用などでますます便利になる一方、スマホに頼りきった生活や、ネット依存など「人間とスマホの関わりかた」が問題視されています。
青少年の携帯電話・スマートフォンの利用状況 (平成26年度)
(出典)内閣府「青少年のインターネット利用環境実態調査」
青少年のインターネット接続機器の利用状況
きつねたちから見えるわたしたちの世界は?
きつねのせんせい、スマホを手にして 「いったい これは なんでしょう?」
「あれって このごろ にんげんが みんな もってる やつじゃ ない?」
「きみは どう おもいますか?」
そして、あなたは どう おもいますか?
いもとようこさんから
メールをしたり、いろいろ調べたり……スマホは便利です。
私も使うのでとっても便利なのはよくわかるのですが、このまま使い続けてだいじょうぶなのだろうか、と考えはじめるようになりました。
世界中につながっていて、自分の世界が大きくなったように感じるかもしれませんが本当にそうでしょうか。すぐに答えが出てくるよさがあるのですが、みんなに同じ答えが出てくることで自分の考えが育ちにくくなってはいないでしょうか。
これからも便利なものはたくさん増えていくと思います。そんななかで必要になる「独自性のある人間」が育っていくためには、外の景色を見たり、歩いたりして自分の感性を磨いていくことがたいせつなのではないでしょうか。
兵庫県生まれ。金沢美術工芸大学油画科卒業。貼り絵の手法による、心あたたまる世界は、幼児からおとなまで、幅広く愛されている。『ねこの絵本』『そばのはなさいたひ』でボローニャ国際児童図書展エルバ賞を2年連続受賞。『いもとようこうたの絵本1』で同グラフィック賞受賞。その他、『とんとんとんのこもりうた』『とうさんのあしのうえで』『いとしの犬 ハチ』『てぶくろ』(講談社)など、多くの作品がある。フランスや中国など海外からの評価も高まっている。