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2016.09.16

特集

スケベは早く老け、女たらしは歳をとらない。女だけが知る「男の色気」

お待たせしました! 「小説現代」の人気コラムが単行本に。
男は“男”を誤解している! 私たち女の方が、“男”に詳しい! だから教えます。男のいいとこ、悪いとこ、愛すべき男の、ウソほんと。
15万部ベストセラー『されど“服”で人生は変わる』の著者が緻密に無慈悲に、愛を込めて“男”を全方位から解剖。

齋藤薫語録 《フィジカル編》

● 気づいていただろうか? 女たちの多くが、軽い“手フェチ”であることに。

● 筋肉美のための筋肉は、「ほうら」と見せられた時点で、いや、たとえ人に見せる機会がなくても、男を何だか頭が悪そうに見せるのだ。

● 脚がとても長いからという理由で、女が男を好きになることはまずない。

● 名もなき“フツーの髪型”を貫く男が歳をとらない。

● 50代になったらもう、白髪の100本や200本はあっていいのである。

● ダイエットはやっぱり宿命的に男に向いていないのだ。

齋藤薫語録 《メンタル編》

● 女にとって、“マザコン”は鬼門である。しかし、偉くなる男ほど、じつはマザコン度が高かった。

● “笑い”は言わば、どこかでやっぱり男の義務なのだ。

● コンプレックスは知性の証明である。

● 人として有能な男ほど、“妻選び”にまったく迷いがない。

● “スケベ”は早く老け、“女たらし”は歳をとらない。

● 嫉妬する男は嫉妬される男に、嫌悪と紙一重の憧れを持っているのである。

著者からのメッセージ

男は女に、こう見られているという男の森羅万象。
だって、女は男のカガミ!

出版社に就職し、「ヴァンサンカン」という女性誌に配属されて以来、ずっと女モノの世界で生きてきた。女モノの中でも、おそらく最も女性ホルモン濃度の高いビューティページの担当を長くしたことから、独立後もなんとなく、美容の世界でのライティングを生業とするようになる。

ここだけの話、女目線オンリーの世界にいて、いつもある違和感が燻り続けていたの確か。女はやっぱり男がいるから美しくなりたいはずで、その偏りにとても不健全なものを感じていたのだ。

もう一つ、自分の中で燻っていたのが、“まったくの女目線で、男の生理的本質をあーでもないこーでもないと書いてみたい”ということだった。

かくして読者のほとんどが男性という「小説現代」での連載のお話をいただいて、私は飛びついた。たまった鬱憤を晴らすように、男の全方位を書き始めた。女の目に男はいつもこのように映し出されているのだという男の森羅万象を。

もちろんこれは、あくまでも男たちへのオマージュである。男のここにそそられる、でも、でもその一方、男のここがヘン、こんな男は許せない……って、アンタなんかに言われたくないと思うだろう。なんという不遜なことを吐く女、と思われるかもしれない。でも確と読んでもらえれば、そこにも不器用な愛が潜んでいることを垣間見てもらえるはず。そう。だから、「されど男が愛おしい」なのである。

例えば、男の嫉妬。男たちは、昔から散々「女はみんな嫉妬深い」と言ってきたが、女から見ると、むしろ「男の嫉妬のほうが厄介だ」。例えば、男はナルシスト。ナルシストな男を女はみんな嫌いなはずなのに、でも女にとってのカリスマ男は、みんなナルシストだったりする……。

こんなふうに、男にまつわる“言い伝え”には案外嘘が多かったりすることも、女の目から指摘したいのだ。永遠に訂正されそうにない男たちの誤解をくどくどと解きほぐしたいのだ。

いずれにせよ、女が男をかくも緻密に、無慈悲に、でも愛情をもって眺めているか、その一端を知ってもらうことができるかもしれない。女の目は、“男のカガミ”に違いないから。

【抜粋エッセイ】なぜ脇役は、“妙な色気”を放つのか?

人は人の意外なところに色気を感じる生き物で、たとえばバックベルトの靴からのぞく“女のかかと”に色気を感じるという男がいると思うと、黒い髪にわずかに混じり始めた“男の白髪”が色っぽいという女もいる。色気に関する認識は、男も女もお互い少しフェチにも通じる、“個性的”なものなのである。

だから、仕事においても妙なところに色気を見る。医者のくたびれた白衣、パイロットの帽子の大きさ、漁師の腕の筋肉や、寿司屋のツヤ肌……そういうものに色気を感じるという声は、女たちからよく聞こえてくるけれど、でもそれは言わば、“表の色気”。もっとマニアックに、意外な仕事の意外なところに、言ってみれば“裏の色気”を感じてしまうのは確かなのだ。

たとえばだけれど、“脇役”で成功している俳優は、なぜだかみな一様に色気がある。顔はよーく知っているのに、名前をギリギリ知らない。クレジットを目にしたことはあるが、覚えていない。けれど演技は毎度ものすごくうまい。すでに独特のキャラすら確立しているのに有名じゃない。そのギャップの大きさそのものに、何だか色気を感じるのだ。妙だけれど。

主役よりも自分の方がうまいのを知っているのに、いつも脇で支える。そこに、我慢とプライドの鬼気迫るようなせめぎ合いをひしひし感じるから、ではないか。あらゆる欲望を抑え、自分を殺して苦行に臨む修行僧などにも、だからそういう色気を感じてしまうことになる。

『譜めくりの女』というコワイ映画があったが、まさしくその譜めくりをしている女に色気を感じる、という男がいた。ピアニストの脇に存在しないかのようにひっそり座っている女も、当然のこととして、ピアニストを目指してきたはずだから、その切ない我慢が不思議な色気を醸し出すのだろう。我慢って色っぽいのである。

サッカー日本代表の控えの選手。威張り散らす上司に怒鳴られているマジメなサラリーマン。炎天下、汗だくでVIPの警備をしている警察官……。なんだか色っぽい。

どちらにせよ、男の色気はそういうふうに、少々複雑な精神性にこそ宿るものなのである。まさに、色気は異なもの……なのである。

(「不思議な色気をもつ男」より/P.227)

齋藤薫 (さいとう・かおる) イメージ
齋藤薫 (さいとう・かおる)

女性誌編集者を経て美容ジャーナリストに。女性誌において、多数の連載エッセイを持ち、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。「美しく生きること」について、独自の見解を発信し続けている。著書に、『美容の天才365日』『あなたには“躾”があるか?』『されど、服で人生は変わる』『“一生美人”力』ほか多数。

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