PICK UP

2026.10.27

編集者のおすすめ

New

壊れてしまった世界のあとで、少年たちはどんな世界をつくることができるのか?

「再会を必ず」。 「NO.6」最終巻の美しくも切ない別れから、14年が経ちました。

あさのあつこ先生が描く、少年たちのディストピア小説「NO.6」シリーズ。理想都市という名の巨大な虚構が崩壊したあの日、別々の道を歩み出した紫苑とネズミの背中を、涙とともに見送った読者の方は決して少なくないはずです。二人が交わした「再会」の約束。それは単なる別れの言葉ではなく、過酷な世界を生き抜くための、お互いの心に灯された消えない希望の火でした。

そして今、その約束が遂に、「NO.6 再会」シリーズで果たされました。

担当編集である私が、本作『NO.6 再会#4』の原稿を編集部でめくりながら、「ああ、彼らは本当に生きつづけてくれたんだ」と、胸の奥から熱い塊が込み上げてきました。
『NO.6 再会#4』に至るまで、二人は決して平坦な道を歩んできたわけではありません。 紫苑は、崩壊したNO.6の跡地で、人々が手を取り合い生きていくための新しい世界を築こうと、泥に塗れながらもがき続けてきました。分断や対立が絶えない現代社会を生きる私たちと同じように、理想と現実のギャップに苦しみながらも、かつての純粋無垢な少年は、痛みと責任を知る逞しい青年へと成長を遂げています。
一方のネズミは、壁の外の荒野を彷徨い、数々の過酷な運命と対峙してきました。相変わらずの皮肉屋であり、鋭い刃のような危うさを纏いながらも、その瞳の奥には、かつて紫苑が与えてくれた「温もり」が確かに宿り続けているのです。
そして、この#4でもっとも心を揺さぶられるのが、紫苑自身の変化です。
かつての紫苑は、まっすぐで、優しく、どこまでも人を信じようとする少年でした。でも、人々の命や未来を背負い、「NO.6を再建する」という責任を引き受けた彼は、以前とは同じではありません。大きな力を持つこと、誰かのために決断すること、その決断によって誰かを傷つけてしまうこと。そうした経験のなかで、紫苑は自分の中にある「冷酷な闇」に気づき、苦悩します。

ここが、私は『NO.6 再会#4』のとても重要なところだと思っています。
「いい人でありたい」と思うだけでは、世界を変えることはできない。けれど、世界を変えるために力を持ったとき、その力が自分自身を変えてしまうかもしれない。
かつてのNO.6が、「安全」「平和」「豊かさ」という一見すばらしい理想社会を目指していても、人間を管理し、自由を奪っていたように、どんなに正しい願いから始まった仕組みでも、いつか誰かを苦しめるものになってしまう可能性があります。
だからこそ、紫苑にはネズミの存在が必要なのだと思います。
二人は、考え方も、生きてきた場所も、ものの見方もまったく違います。衝突もするし、簡単には分かり合えません。それでも、相手の言葉を聞き、自分自身を問い直しながら、一緒に「これから」を選ぼうとする。

「NO.6 再会」シリーズは、壊れてしまった世界のあとで、それでも人はどんな世界をつくることができるのかを問い続ける物語なのです。
それぞれに傷を負い、それでも己の信念を曲げずに生きてきた二人の軌跡が再び交差するとき、そこにはかつて以上の激しい火花が散ります。背負うものが大きくなり、環境も立場も変わってしまった今、二人はあの頃のように無防備に触れ合うことができるのか? それとも、残酷な現実が二人の間に新たな溝を生んでしまうのか?
あさの先生の筆致は、一切の妥協を許しません。二人の内面に渦巻く葛藤、ためらい、そして言葉にしきれないほどの強烈な「渇望」を、ヒリヒリするほどの解像度で描き出しています。不確実で生きづらい今の時代だからこそ、彼らが全身全霊で「他者と繋がること」を求める姿は、私たち読者の心に深く、鋭く突き刺さります。
とくに後半、ある出来事をきっかけに二人の距離が急激に縮まるシーンの緊迫感は圧巻の一言です。ページをめくる指が止まらなくなること、そして読み終えた後に深い溜息とともに余韻から抜け出せなくなります。

あの日、二人の別れを見届けたすべての人へ。 そして、まだ見ぬ魂の絆の物語を求めている新しい読者へ。 「再会」という名の、新たな戦いと救済の幕開けがここにあります。
彼らが再びめぐり逢うその瞬間、世界はどんな色に染まるのか。 ぜひ、あなたのその目で確かめてください。
『NO.6 再会#4』は、あの頃の痛みを抱えながら今を生きる私たち全員に贈る、最高に胸を打つ一冊です。全国の書店で、彼らがあなたとの「再会」を待っています。

【特設サイトはこちら】

──児童図書編集チーム M.F.

【著者プロフィール】

あさのあつこ
岡山県生まれ、在住。大学在学中より児童文学を書き始め、小学校講師ののち、1991 年『ほたる館物語』で作家デビュー。’97 年『バッテリー』で第35 回野間児童文芸賞、2005 年『バッテリー I~Ⅵ 』で第54回小学館児童出版文化賞を受賞。『NO.6』シリーズは、コミカライズ、アニメ化された。『NO.6』完結から14年ぶりに「NO.6」の2年後を描いた『NO.6 再会』シリーズをスタートさせた。児童文学から時代小説まで様々なジャンルの作品を執筆し、幅広い世代に親しまれている。

200万回再生で話題! 公式Xをご覧ください

『No.6』公式「X」
【スペシャルPV】
ナレーション:梶裕 貴(アニメ「No.6」紫苑役)

【こちらもおすすめ】

おすすめの記事

レビュー

2069年、超巨大企業が支配する日本。奇妙なネズミがもたらすのは再生か、破壊か!?『ラットコレクティブ』

  • 奥津圭介
  • SF
  • サスペンス

レビュー

「幸福」が数値化された近未来日本──幸福の裏に潜む事件を追う『PAX 国民幸福管理局』

  • 奥津圭介
  • SF
  • サスペンス

編集者のおすすめ

累計発行部数150万部超の名作、あさのあつこ『NO.6』14年ぶりの新刊登場!

  • 小説
  • 青春
  • 友情

最新情報を受け取る

講談社製品の情報をSNSでも発信中

コミックの最新情報をGET

書籍の最新情報をGET