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2026.05.19

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環境保全は誰のため? すべて超富裕層が潤うグリーンビジネスだった!

正論を人質にする搾取と強奪の現在

毎年、ゴールデンウィーク前になると、お付き合いのある家族のお誘いでタケノコを掘りに行く。山の中に民家が数軒。斜面に果樹、野菜、茶が栽培された美しい里山である。タケノコはあちこちでカモシカやイノシシに食べられていて、動物と人間の住む世界の境界線が見える。タケノコは、放置すると容赦なく里山を侵食し、竹林になってしまう。そこで私のような人間が、新鮮極まりないタケノコと窯で焼くピザ食べたさに汗をかく。自然に包まれて流す汗は心地いい。うっかり「自然に包まれて」などと言ったが、私は兼業農家の次男坊だから、これだけの里山を維持することが、いかに大変か分かる。里山は自然ではない。長い年月をかけ、人が自然に働きかけて作り上げた人工的な風景、それが里山なのだ。この美しい里山も5年も放置されれば、自然に飲み込まれ、見る影もなくなる。

さて、あなたの抱くエコロジカルな風景とは、どんな風景だろう? サステナブルな生活とは、どんな生活だろう?

本書を紹介するのに困った。「ここ重要!」と貼った付箋が多すぎる。
それから、頭から読み始めると、ムカムカが収まらない。歯に衣着せない著者の文体もあるけれど、次々と登場する「エコ」とか「サステナブル」というワードでぼろ儲けしているヤツらが“いけ好かない”。
ヴィーガン、オーガニック、デトックス……、何百キロ離れた産地から二酸化炭素を撒き散らしながら運んだ素材を、富裕層相手に売りさばく商売人たち(いわゆるベンチャー・ビジネスの人たち)。
服を購入(もしくはわずかな寄付)で、貧困国に1本の木を植える活動をする慈善団体。その木が土地の植生を破壊し、世界中で「幻影の森林」が発生している事実。さらには、こうした実在しない森林が「カーボンクレジット」に認定され、炭素輩出の相殺として企業に売られ、企業は「環境にやさしい」とアピールする。
再生可能エネルギーのビジネスは、石油やガスの巨大企業の資本投下により支えられている……。

サステナビリティとは「未来の世代のニーズを満たす能力を弱めることなく、現在の世代のニーズを満たすこと」だ。この考え方は正しいし、尊重されなくてはいけない。「戦争反対」「愛こそすべて」、そうした誰もが共有する倫理的な正しさに「サステナビリティ」も並ぶ。しかし、その倫理的正しさが巧妙に金を生むシステムにすり替えられ、臆面もなくアピールされ、新たな問題を生み出しているとしたら。“映え”のために、低所得者層が住む地を追い立てられ、効率や革新性という名のもとに労働者は低賃金に喘ぎ、コストカットの名の下、容赦なく職を追われる。本書の帯に「すべて超富裕層が潤うグリーンビジネスだった!」とあるが、その巧妙さには唖然とするばかりだ。

キラキラに騙されない

そして本書が、なにより強く功罪を問うのが「サステナビリティ・クラス」に位置する人たちだ。
サステナビリティ・クラス
高学歴で可処分所得と意識が高い「いい人」たち。
エコや倫理的正しさをSNSでアピールし、
「環境」を意識した高額商品を買う余裕がある中産階級。
それはつまり、地球にやさしいとされる“少しお高い”無農薬野菜を選び、それで「今日はバランスのとれた朝食で一日をスタート(ハートマーク)」とサラダの写真をインスタにアップする人たちのことだ。本書は、そんな私たちを「その行動、いけ好かないヤツらの術中にハマっていますよ。ついでに、そいつらの片棒を担いでます」と告発する。

正直なことをいえば、本書が激しく問題を追及すればするほど、ちょっと“引く自分”がいた。あまりに夢がないから。巨大な資本を動かす人たちの言うことはキラキラしている。脱炭素、スマートシティ、EV、未来を描くキーワードが、本書を読むとどんどん色褪せていく。
彼らは「グリーン成長」やら「再生革命」やら「スマートシティ」やら、すべてを約束していながら、自らのために富を蓄えるだけで、その結果、私腹を肥やしながら罪の意識を消そうとしている。たとえグリーンでスマートな新しい都市であっても、所得の低い人や人種差別を受けている人、恵まれない人、能力が低い人が住民になれない都市がエコロジカルなわけがない。
自分は、あなたは、サステナビリティ・クラスだろうか? このご時世、そんなに可処分所得が高くなくても「環境にいい」と言われれば、そっちのほうがいいと思うし、それなりの行動もする。そうしたごく普通の層が、マーケット(市場)としてみなされ、ビジネスの食い物にされている。いいことをしているという意識は、実際にいいことのはずだが、その意識をもう一段アップグレードする必要がある。

そんな状況に対して、私たちは何ができるのか? 本書の第8章「未来を取り戻す」で、様々な事例を引いて、以下に行動すべきか紹介されている。きっとあなたは「本当にそれで巨大な資本家からサステナビリティを取り返すことができるのか?」と思うだろう。私もそう思った。そんな不安を著者は、こんな言葉で後押しする。
「私たちは資本主義の中に生きている。その力は逃れがたいものに思える。だが、王権神授説もかつてはそうだった。人間が作った力は、人間によって抗され、変えられるものなのだ」
これは『ゲド戦記』の作者アーシュラ・K・ル=グウィンの言葉だ。

著者は「想像力と可能性の組み合わせは、エコロジカルな行動にとって最も重要な要素のひとつだ」と説く。
エコロジカルな想像力とは、今あるシステムを理解したうえで、そこに介入し、——むしろ「手を加えてみる」といった感覚で——ビジョンを構築することだ。ひとつ手を加えると、さらに可能性が増える。そして可能性が増えるほど、同じ未来を思い描く仲間たちが加わるチャンスも増えていく。(中略)皆の可能性を開く介入を重ねていけば、きっとその旅には、多くの仲間が——人間も、人間以外の存在も含めて——合流してくれるだろう。
あの美しい山里は、多くの人々が(おそらく数代にわたって)失敗を重ねながら自然に介入し、作り上げたものだ。それと同じように、私たちは今の資本主義という強欲なシステムを理解し、そこに手を加える手間を厭わず可能性を広げていくこと。そうでなければ、真にサステナビリティな世界は訪れない。キラキラしたキーワードに踊らされることなく、人は地道な判断を積み上げることができるだろうか? その第一歩は、企業や政府ではなく、まず「あなたから始まる」と、本書は鼓舞している。

欲と偽善のサステナビリティ 「倫理的正しさ」がつくる新たな階級社会

著 : ヴィジェイ・コリンジヴァディ
著 : アーロン・ヴァンシントジャン
訳 : 保科 京子

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レビュアー

嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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