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2026.05.07

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伝説のサラリーマン投資家・清原達郎、個人資産900億円に至るまでの人生と株式投資

2005年に発表された最後の高額納税者名簿(いわゆる長者番付)で全国1位を飾ったのは、当時サラリーマンだった本書の著者・清原達郎。納税額は36億9千万、推定年収100億円。投資顧問会社でヘッジファンドを運用するサラリーマン・清原は、なぜ長者番付で1位を獲得できたのか――。

本書は2024年に出版された書籍『わが投資術 市場は誰に微笑むか』をもとに、専門的で難しい部分を削り、著者である清原が自ら脚色。エンタメ漫画として再構築したもの。NISAの浸透とともにかなり身近になった印象のある「投資」ですが、とは言えある程度の知識やノウハウを勉強してから取り組まないといけない……そう思ってなかなか一歩が踏み出せない人もいるのではないでしょうか。

タイトルに「わが投資術」とある本書。3ヵ月連続刊行の導入となる1巻では、個人資産900億円という著者がどのようにして投資の世界へと足を踏み入れたのか、その半生を振り返りつつ、証券会社での得難い経験や貴重な出会い、そしてヘッジファンドへと転職するストーリーを描いています。

伝説的な人物の伝記を追いながら、投資そのものへの関心も高まる本書における最初のインパクトは、昭和の証券会社の信じられないような内情でした。

顧客はカモ!? 証券会社、驚愕の内部事情

地方出身で東大に現役合格したものの、周囲のレベルの高さに、まともに王道路線で出世を目指しても勝てないと悟った青年・清原。凡人が成功するには博打をするしかないと考え、株で大勝負して儲けるべく、1981年に野村証券へ入社します。東大現役合格しても「凡人」と自覚するほどに、東大とは恐ろしい場所なのだな……というジャブのような衝撃のあとに訪れたのは、野村に限らない、当時の証券会社のとんでもない実態。
安い株を勧めない理由について、上司が説いた理屈はこうです。当時、証券会社に入社する人間の多くは家が貧しい者ばかり。対して顧客は医者や不動産の金持ちが多い。つまり、貧しかった自分たちが儲けて、富める顧客が損をするという「富の平準化」こそ、自分たちの社会的使命であると言うのです。なんとも身勝手で都合のいい解釈……。清原が呆れるのも無理はありません。

また、やる気に燃える若手社員の気勢をそぐ、こんな慣習も。
投資で儲けるぞ、と意気込んで入社した国内トップクラスの証券会社で目の当たりにした、一流企業の暗黒面。しかし、もし当時の社風が健全であったとしたら、ヘッジファンドへの転職もなく、長者番付1位になることもなく、清原はこの証券会社でそこそこの出世をする人生を歩んでいたのかもしれません。

尊敬する「永遠の上司」との出会いが示す新たな道

「ここではない」と思わせる残念な企業・業界風土に加えて、「こうありたい」という未来への道筋を示す人物との出会いも、清原の人生において大きなインパクトでした。

当時、野村証券の海外投資顧問室にいた、のちのSBIホールディングスCEO・北尾吉孝氏。彼との出会いが、青年・清原が進むべき道を示してくれました。
清原や北尾氏のような、企業だけでなく投資家のことも考えられる人たちの理想、そしてそれを実現すべく起こした行動の先に、株主優待や新NISAといった言葉が市井に溢れる、今のような「一億総投資家」時代がやってきたのかもしれません。上記の場面、この先の未来で長者番付1位となる投資系サラリーマンと日本のネット証券市場を切り開いたパイオニアのやり取りと思って読むと、かなりドラマチックです。

世界を飛び回る、波乱万丈な人生に釘付け!

外国人投資家を相手にする海外投資顧問室や野村証券ニューヨーク支店に配属された清原。彼が相対する外国人投資家との交渉や出張先での様々な体験は、現地で実際に起こったことをもとに描かれているので(一部脚色はあるのかもですが)、リアリティがあります。

ニューヨークでは警官に逮捕され、裁判所に出頭する羽目に。
また、ブラジルでは本来の意味からかけ離れた、不穏すぎる「アミーゴ」に死の匂いを感じ取る場面も。
「24時間戦えますか」のキャチコピーを思い出す、ジャパニーズビジネスマンが世界中でフル回転していた、あのバブル前後の時代。その中心的存在のひとつでもあった証券会社で文字通り世界を飛び回りながら仕事をしていた清原の、少し可笑しくて、めちゃくちゃハードなエピソードが盛りだくさんです。

そして巻末には、著者・清原による、自身の株式投資におけるルーツを明かす書き下ろし原稿も掲載。

ここ数年、投資を始めて日々の株価や配当金の通知に一喜一憂している私ですが、具体的な投資術よりもまず、清原達郎という波乱に満ちた人生を送る人物に俄然興味が湧いてきました。「エンタメの漫画にしよう」という著者の意図に引き寄せられるようにページをめくってしまい、あっという間に1巻読了。

彼の成功、そして慢心からの失敗。さらにはリーマンショックなども描かれる次巻以降の展開も気になります。本書は伝説の投資家サラリーマンの生き様を通じて、円安、関税、石油問題も関連した混沌とする世界経済の真っ只中を生きる、投資ビギナーな私たちに気づきを与えてくれるに違いありません。

レビュアー

ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。

X(旧twitter):@hoshino2009

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