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2026.04.11

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【中受沼】元SAPIXママが語る、中受終了まで3年間のリアル伴走ストーリー

「中受」――。埼玉の田舎で育った昭和生まれの私にとって、小学生当時、一度も聞いたことがなかった言葉です。学年にひとり、私立中学を受験する子がいるかどうか、というそんな時代を経て、今や首都圏では5人にひとり、一部地域ではふたりにひとりが中受するという現代。

知人がこの春に無事、母子で中受を乗り切り、親戚の子も4月から小学4年生で私塾に通うという私にとって身近なテーマでもあります。

本書は、そんな中受について、実際に息子と共に小4から小6まで1095日間を駆け抜けた“元SAPIXママ”りえ太郎が、焦りや後悔、あるいは喜びなど様々な感情が入り乱れた濃厚な体験をポップに描いたコミックエッセイです。4年生、5年生、そして6年生においては春・夏・秋・冬・受験本番の各パートに分けて描かれており、その特徴は大きくわけて3つあります。

中受初心者の心強い味方! ノウハウや専門用語の解説も

1つ目は、これから中受を迎える、または今その入口に立っている保護者と子供に向けた、中受ガイドであるという点です。有名私塾それぞれの特色を漫画でわかりやすく紹介し、「中受家庭必携の三種の神器」「受験生親が身につける必須アイテム」など中受において必要な知識をコラムで解説。右も左もわからない超初心者な私でも中受にまつわる様々な情報を得ることができます。

王国を模した有名私塾紹介パートでは、カラーページも交えながら各塾の特徴を提示。楽しみながら、それぞれの塾がもつ個性を知ることができます。
用語解説も充実。門外漢には暗号、はたまた外国語かと思うような専門用語をしっかり説明してくれるので、これから中受に挑もうという方にピッタリの案内書と言えるでしょう。

「中受あるある」は共感ネタの宝庫

2つ目の特徴は、経験者なら思わずうなずいてしまうであろう、「中受あるある」が随所にちりばめられている点。我が子の頑張りや失敗、塾でのあれこれ。さらには大量にコピーした過去問プリントに振り回される姿など、家庭、塾、学校といった様々な場面で生まれる中受エピソードは、未経験な私でもつい笑ってしまう、イメージしやすい「あるある」がたくさん。
たとえば「ミラコン」と呼ばれる予約システムを取り上げた箇所では、ライブ好きな私にとってプレイガイドの一般チケット発売と重なる部分もあり、共感度100%です。
また、塾に関しては、その「あるある」を実感する体験をしました。先日、娘の中受伴走経験がある友人に本書を紹介したときのこと。有名私塾の中にはハチマキを巻く熱血指導系の塾もある、という話をすると「早稲アカみたいだね笑」という言葉が返ってきました。まさに私は本書における早稲アカ、すなわち早稲田アカデミーに関する描写について語っていたのです。中受経験者にとっての“共通言語”が詰まった本なんだということを、しみじみ感じました。

悲喜こもごも! 中受伴走は親子のドラマ

本書における3つ目の特徴、それは親子の中受ストーリーです。中受における必須ノウハウや「あるある」とともに描かれるのは、母が子と一緒になって駆け抜けた3年間の受験ドラマ。

体調を崩してもなお、息子に指示を出す母。
不甲斐ないテスト結果にいら立つ息子。
よそのデキる子との違いに愕然とする母子。
中受を始める前のイメージと現実とのギャップに震えたり、良かれと思って子供にアドバイスしたことが逆効果になってしまい後悔したり、芳しくないテスト結果を踏まえて志望校変更の家族会議を開いたり。そんな苦労の連続ではありつつ、子供の無邪気な行動にクスっと笑い、子への愛情を再確認する瞬間にほっこりするエピソードも。受験本番の際には、胸が締め付けられるようなシーンも登場します。当事者としてはめちゃくちゃしんどいこともあったであろう中受伴走体験を、ポップな語り口と勢いあるタッチで描いた本書は、まさしく笑いあり、涙ありの激動中受物語。

中受ガイド、あるあるネタ、親子ドラマという3つの特徴を紹介しましたが、読者それぞれの立場で楽しみ方が変わるのも、本書の特徴です。中受経験者であれば、あるあるネタや親子ドラマに共感し、自身の経験と照らし合わせながら、あるいは過去のあれこれを思い出しながら楽しむことができる。そしてこれから中受を迎える人にとっては、各種解説はもちろんのこと、どんなことで苦労するのか、親子の感情の揺れ動きや受験に向けた心構えなど、あるあるネタや親子ドラマの中にある中受のいろはを学べる指南書として、受験の大きな味方になってくれるでしょう。中受の真っ只中という人は、経験者と初心者のどちらの視点も堪能できるはず。

本書を読んでいて、一浪した私が再び大学受験に挑んだときのことを思い出しました。二浪はしたくないというプレッシャーから、志望レベルを大きく下回るランクの大学も受験したいと伝えた際に、快く了承してくれた母。親のコミットという点で中受とはまったく異なりますが、それでも受験生とその親という立場は同じ。今でもあのときのことは感謝しています。

これから中受に挑まれる方、今まさに挑んでいる方は、本書を手に取って、軽やかに、そしてたくましく、受験を乗り越えてほしい。中受する全国の親子に幸多かれと願わずにはいられません。

レビュアー

ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。

X(旧twitter):@hoshino2009

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