これまで農家も農協もよくがんばったが、それでも米価は下落し続けて農家は苦しくなった。「安すぎる米価」で農家を追い詰めてきたのは、小売・流通業界と消費者にも、さらに、それを放置してきた国にこそ責任がある。
第1次トランプ政権の時代に、トランプ大統領は「日本からの輸入自動車に最大25パーセントの追加関税をかける」と迫った。そんな関税をかけられた日には、トヨタ自動車をはじめとする日本の自動車産業は干上がってしまう。
(中略)
自動車産業を守るために、農産物の輸入枠拡大のカードをアメリカに次々と譲っていったら何が起きるだろう。最後に残った譲れないカードはコメと乳製品だった。これを切ってしまったら、日本のコメ作りと酪農の崩壊が加速する。
自動車の関税を軽減してもらうために、いったい日本はどれだけのものを差し出さなければならないのだろう。コメは日本人の主食だ。「最低限コメだけは国内の自給率を高く維持しよう」とみんなでがんばってきたにもかかわらず、そこに踏みこんで日本はコメ市場をアメリカに譲歩してしまった。
しかも結果的に、自動車産業を最大限守りきれもしなかった。アメリカに脅かされれば、日本はすべてを失うつもりなのだろうか。
「何でもするから許してください」という低姿勢で交渉に臨んだら「もっと出せ」「もっと出せ」と迫られてしまう。出せるものをだいたい出し尽くしてお手上げになったら、ようやくそこそこの妥結点で決着してもらう。トランプ大統領は、日本の弱気な外交にすっかり味を占めているのだ。
著者は「農業は国防」であると訴え、その意味で現在の日本がいかに脆弱であるかを明らかにする。本書に掲載されたFAO(国連食糧農業機関)作成の「HUNGER MAP(飢餓地図)」が示すのは、日本に対する残酷な判定だ。これは総人口に対する栄養不足の人の割合を国別に示したマップである。
驚くべきことに、2019~2021年版の『HUNGER MAP』で日本列島にピンク色(人口比で2.5~4.9パーセントが飢餓状態)がつけられた。北米やヨーロッパ、ロシア、中国などと違い、日本は世界で栄養不足人口が多い国の仲間入りを果たしてしまったのだ。
「日本は世界に冠たる先進国だ」と威張っているのは、もはや日本人ぐらいなのかもしれない。「日本はこれから食料危機に見舞われて飢餓に陥る」のではなく、日本人の一部はすでに飢餓状態に陥っている。それくらいの危機感をもって、現況に目を向けなければならない
日本とは対照的に、中国はどのような政策をとっているのか。彼らは、14億人の人口が1年半食べられるだけの食料備蓄に乗り出している。世界情勢が悪化と不安定化をたどる中、日本には国民が1ヵ月半しのげる程度のコメ備蓄しかない。そんな状態で不測の事態が発生したとき、子どもたちの命を守れるわけがないだろう。
今こそ総力を挙げてコメを増産し、備蓄米を増やすのが不可欠なはずだ。そんなタイミングで「備蓄米を減らせ」という話が、なぜ財務省から出てくるのか。
つまり、農業そのものの否定だ。フードテック推進の極端な論理である。ややもすると私たちは、彼らが「環境に優しい農業が大事だね」と言っているのかと勘違いしそうになるが、そうではない。農業そのものを否定し、潰し、そしてコオロギ食などの昆虫食や人工的な食べ物で儲けようとするのが彼らの目的だということが明らかになってきた。
こうした議論は「工業化した農漁業や畜産を見直し、環境に優しい農漁業や畜産に立ち返るべきだ」と主張しているのではなく、「農漁業、畜産の営み自体を否定しようとしている」意図が強いことに気づく必要がある。
国が本気になって農家を支えないのならば、市町村が主体的に動き始めればいい。
(中略)
近未来に起こりうる「コメが食べられなくなる」というリスクを、地域の取り組みによって希望へと変えていける。
私のような高齢世代は、次世代を守る盾になれるか、巨悪との「最後の闘い」の時が来たように思う。







