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2026.01.09

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世の中を生き抜く力をそだてる! 教科書では学べない「お金と経済」の知識が身につく図鑑

図鑑と「お金と経済」というテーマの相性について

講談社の動く図鑑 MOVEシリーズの新刊は『お金と経済』。学習指導要領の改訂でカリキュラムに加えられたのを契機に、子ども向け「お金と経済」関連の本はたくさん出版され、今もどんどん出ている。その流れにおいて「なぜ、図鑑という形なのか?」という点に興味があった。

本書は「お金をはらう」「お金をかせぐ」「お金でそなえる」「お金を知る」の4章で構成されている。小学校から高校で学ぶ内容がきれいにカバーされていて、どの項目も入り口の敷居は低いけれど、読み進めると大人も知らない知識が得られるようになっている。非常に手堅い作りだ。
たとえば、「おこづかいはどこへ行く?」というページ。
100円のノートを買った場合、10円の消費税がかかる。その10円のうち国税として7.8円、地方税として2.2円が収められると説明があり、「税金とは?」「消費税とは?」「直接税・間接税について」「国税・地方税について」といった解説が並ぶ。この解説が文字だけなので「ちょい敷居が高いな」と思ったら、「みんなが払う税金」というページで、税金がどう使われているのか? どんな種類の税金があるのかきっちり説明されている。
そして「日本の税金の種類」というページでは、もうかなりのレベルの内容にたどり着く。狩猟に関する免許を持つ人にかかる「狩猟税」なるものがあるなんて、大人でも知らないよ!
こんな感じで、支出、収入、保険、貯蓄、投資、景気から行動経済学まできっちり押さえられている。

しかし、これを子どもが喜んで読んでくれるのか?
そこ、問題じゃない?
表紙はティラノサウルスやハシビロコウ、新幹線、サメ、サソリじゃなくて渋沢栄一だよ!
渋いよ、渋いよ、渋沢栄一じゃ渋すぎだよ!

本書は、子どもに図鑑を与える親側に、あるメッセージを発していると思うのだ。
それは「子どもと話そう」ということだ。
図鑑を与えておけば、子どもがしばらく大人しくなるのでありがたい(MOVEは動画付きなので、大人しい時間がさらに長くなるというのが、親の実感である)。少々、お値段はするが(だからこそ祖父・祖母からの贈り物として喜ばれる)、お勉強になる。
でも『お金と経済』は、親と子どもが一緒にページをめくり、親が子ども目線に降りて、語りかけて、初めて子どもは「楽しい」と思ってくれるテーマだ。だって難しいもん。とは言っても帯文の「世の中を生き抜く力をそだてる!」という言葉と「お金と経済」というテーマは、切実すぎるくらい密接だ。ゲーム課金やギャンブルといった、喫緊に子どもに知っておいてほしいと思うこともたくさんある。そういうことは、やっぱり親子の会話なしでは実を結ばない。

それを前提としてこの図鑑を見てみる。図鑑の特質として、大判で、フルカラーで、ページがめくりやすく、指差ししながら話せるという利点がある。そして内容は、親が語りやすく、子どもが理解しやすいという視点で作られている。たとえば、普通なら巻末に来る用語集が、本の冒頭にあるのだ。
「歳入・歳出」「中央銀行」とか、こんな(七面倒な)用語を、わずか数行で、子どもに分かるように説明するなんて大変ですよ。めっちゃ親切。

お勉強だけじゃなく、驚きを!

講談社の動く図鑑 MOVEの、今のキャッチコピーをご存知だろうか?
「この図鑑、ズッカーン!」
なのだ。
そう! 図鑑ってズッカーン!じゃないとダメ!
図鑑は驚きが詰まってこそ図鑑!
子どもをズッカーンとさせるために、見たことのない写真を探し集め、迫力満点のイラストを発注し、子どもが自慢したくなるような知識を集めなくてはいけない。その点「お金と経済」というテーマは、正直ズッカーン!というネタに乏しい(特に写真はね……)。しかし、MOVEはあの手この手でズッカーン!を突っ込んでくる。

まずはイラスト。「じごく小学校」シリーズの安楽雅志や、シュールな絵で人気の五月女ケイ子などコッテリめの挿し絵と、写実的な挿し絵、説明に適したグラフィカルなイラストなど、項目ごとにバラエティに富んだ絵で誌面が展開する。甘いものとしょっぱいものを交互に食べれば、延々と食べられてしまうように、飽きさせない。これまでの子ども向け「お金と経済」関係の本って、それが均質なんですよ。こういうことができるのは、とても豪華なこと。

あと、容赦なく明かされる年収! 国家公務員の平均年収(約689万円)、タレントの平均年収(235万円)、YouTuberの平均年収(1チャンネルあたり約41万円/有名事務所所属の場合)……。年収の数字なんて「一概に言えない」ってことで、あまり明確に書いてある本を見たことない。「日本銀行ってなんだろう?」のページでは、日本銀行総裁の植田さんの年収(3607万円)まで明らかに。「そんなことを“豆知識”として子どもにインプットしてどうする!」と、思わないでもないが……、面白い。子どもに身近なところでは、教室の黒板は約13万円(高いな!)、教科書1冊が約100~1000円(安いな!)ってところから、教育費として使われる税金の額、1授業時間あたり約1011円とか、「へぇ?!」と思う知識でいっぱいだ。

ほかにも「ニセ札事件簿」とか「ぜったいにダメ! 闇バイト」とか、お金コラムもそそるが、タブレットやスマホでも見られる51分の動画(DVD付き)の出来がすっごくいい。制作は、おなじみNHKエンタープライズ。硬貨の製造工程や、一見ゴミ山の都市鉱山から金の延べ棒を作るところなど、映像ならではのズッカーン!が詰まっている。それもそのはず、本の奥付を見てみたら映像の出典に『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』がクレジットされていた。

子どもの世の中を生き抜く力をそだてたい親御さんたち、本書を手にとってお話を始めてみませんか?

レビュアー

嶋津善之

関西出身、映画・漫画・小説から投資・不動産・テック系まで、なんでも対応するライター兼、編集者。座右の銘は「終わらない仕事はない」。

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