俳優にとどまらず、多彩な活躍を続けるディーン・フジオカさん。自身初の翻訳絵本として話題を集めている『ありさんシェフの しょうたいじょう』が、2025年10月16日に発売されました。
1匹のありさんシェフが、史上最大の晩餐会を開くために招待客の席順を考えるところから物語は始まります。
ありさんシェフが招待するのは、犬や猫はもちろん、ゾウやコウモリ、カメにミミズまで――実にさまざまな動物たちです。
ねずみさまは、ねこさまと いっしょの テーブルで しずかに しょくじなんて できっこない!
というように、みんなが楽しく落ち着いて食事をするために、ありさんシェフは頭を悩ませます。
結婚披露宴を開催したことがある方なら、ありさんシェフの苦労に思わず共感してしまうかもしれません。ビジネスの会食もそうですが、「人の配置」というのはとても気を遣うものですよね。けれど、すべては「楽しい時間を過ごしてもらいたい」という気持ちから。ありさんシェフも悩みに悩んで、ついに“完璧な席順”を見つけ出します。
本書の原作はイタリアで発表された『La più grande cena mai vista(英題:The Biggest Dinner Ever)』。イラストを手がけたロレンツォ・サンジョさんは、イタリア・ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアで次世代の児童書イラストレーターにおける「イタリアの優れた才能」に選出された注目のアーティストです。
ロレンツォさんが描く動物たちは、デフォルメされすぎず、それでいて愛らしく表情豊か。表紙を見た瞬間、もうすぐ3歳になる娘も「あ、ワンワンだ! ゾウさんもいるね!」と目を輝かせました。
一緒に読み始めてみると、1ページごとの文章量もほどよく、2〜3歳からの読み聞かせにもぴったり。娘もしっかり最後まで集中して聞いていました。
ありさんシェフが悩んでいる場面ではケラケラと笑い、迎えたラストでは親子で思わず「え⁉」と顔を見合わせる瞬間も。そして、オチの意味がわかると「ふふふ!」と笑い合いました。読み終わるやいなや、「もう1回読んで〜!」のリクエストが止まりません。
後日、娘の保育園でも先生にお願いして読んでもらうと、3歳児クラスの子どもたちもイラストに釘付けだったそうです。「招待状」「晩餐会」「席順」といった新しい言葉との出会いもあり、子どもたちの興味を強く引いたようでした。あらためて、絵本との出会いがもたらす体験の大切さを感じます。
また、タイトルにもディーンさんの翻訳センスが光ります。
原題『La più grande cena mai vista(英題:The Biggest Dinner Ever)』をあえて直訳せず、『ありさんシェフの しょうたいじょう』としたことで、作品にやさしさと温度が加わりました。
「史上最大の晩餐会」と訳すよりも、「しょうたいじょう」という言葉には相手を想う温かさが宿っています。それは、ディーンさんが本書に込めた“人と人とをつなぐ想い”そのものを体現しているように感じます。
いつ、どこにいても、家族のように、お互いに支えあえる仲間。
そんな僕の想いと、この物語はどこかでつながっています。
と、あとがきで語るように、本作には“つながり”へのまなざしが貫かれています。その想いは、絵本のページを越えて広がっているようです。実際にSNSでは、「ブックサンタ」を通して本作を子どもたちに贈る動きも見られました。
性別を問わず、どんな年齢の人にも楽しめる絵本。
そして何より、読む人をやさしさで包み込む――贈り物にもふさわしい1冊です。
絵本の特典として、原作イラストレーターが、ディーンさんのシェフ姿を描いたしおりが付いてきます。
※特典のしおりは、なくなり次第終了いたします。
レビュアー
Micha
ライター。フリーランスで働く一児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!
X(旧Twitter):@Micha_manga
Instagram:@manga_sommelier