「脊髄損傷早期手術」に挑む熱き医師たちと患者に取材を重ねた医療ノンフィクション。
2016年、当時自民党幹事長だった谷垣禎一氏が趣味のサイクリング中に転倒し、頸髄を損傷する大ケガを負っています。また、2012年には元琴風の尾車親方が巡業中の体育館で足を滑らせて転倒し、頸髄を損傷して手足に麻痺が残りました。
転倒や、ラグビーやトランポリン、水泳などのスポーツ競技中に脊髄に損傷を負う事故は毎年5000件程度発生し、累計の患者数は国内で10万人とも推計されています。
いったん受傷してしまうと症状を改善することがきわめて難しく、下半身などに麻痺が残った場合、患者本人だけでなく支える家族にも重い負担を強いることになります。
その脊髄損傷に挑み続ける医師が、埼玉医大総合医療センター高度救命救急センターの井口浩一副院長(診療部長)です。
井口医師は東京大学医学部を卒業後、多くの病院で救急医療に取り組んで経験と実績を積み、60歳を超えたいまも「いつ寝ているのか」と言われるほどの熱意で病院に詰め、患者と向き合っています。
群馬大学病院の医療事故をめぐる報道で新聞協会賞を受賞、『大学病院の奈落』(講談社文庫)『命のクルーズ』(講談社)など評価の高い医療ノンフィクションを発表している高梨ゆき子氏が、井口医師とそのチーム、さらに患者、そして家族に丁寧な取材を重ね、「不治のけが」と思われた脊髄損傷からの回復に心血を注ぐ医師たちの奮闘を描き出す、感動のルポです。
──企画部 T.A.