事件、事故、自死。時に個人の判別も難しいほど損壊した顔を専用の綿や粘土を使い復元していく「二課」の納棺師たち。突然の死を受け止める時間もないままの遺族たちが最後にもう一度顔を見てお別れを告げ、いつかその先の未来へ進めるように、彼らは静かに遺体と対峙し手を尽くしていきます。
本作を読んでから、私は人の「顔」をこれまで以上に意識するようになりました。どんなふうに怒り、笑い、泣くのか。生きて動く姿が見られるうちに、大切な人たちの面影を目に焼き付けておきたくなる一冊です。
著者の朝宮さんにとって、本作はなんと人生初の執筆作。才気煥発の新人に、どうぞご注目ください。
──小説現代編集チーム 川原桜