本書は2002年に出版された、同タイトルの書籍の新装版である。旧版は刊行当時から現在に至るまで、ロングセラーとして20年以上にわたり読み継がれてきた。新装版を出すにあたり、普遍的な内容に変わりはないものの、著者自身が旧版を読み返した際に気になった部分や、今の時代にそぐわない表現を改め、より読みやすくブラッシュアップしたという。
ちなみに、著者が手がけた「分かりやすい」シリーズの1作目である『「分かりやすい表現」の技術 新装版』は、2025年2月、本書に先んじて発売された。本書はその2作目に当たり、3作目の『「分かりやすい文章」の技術 新装版』も2025年4月に発売された。3ヵ月の連続刊行だ。ただ著者によれば、
もちろんシリーズとはいっても前作を先に読んでいただく必要はまったくありません。本シリーズの三部作はお互いに依存しておりませんので、どの順番でお読みいただいても結構です。
さて本書は全4章で構成されている。そのうち第1章では、そもそも「『分かる』とはどういうことか」が語られる。著者は自身の体験や例を挙げながら、「分かりやすい説明」と「分かりにくい説明」の違い、「説明」という言葉の本質、そして「知る」と「分かる」の差異を論じ、私たちの脳の構造が生み出す現象とその対策を、独自の言葉で解説していく。
「分かる」という言葉には、いろいろな意味があると思います。しかし本書では「話し手の意図を正しく理解すること」と定義しましょう。
では「分かりやすい」とは、すなわち「話し手の意図を正しく理解しやすい」とは、どういう説明なのでしょうか。
結論から先に書いてしまえば、「分かりやすい説明」とは「脳内関所を通過しやすい説明」のことです。「脳内関所」とは、脳の短期記憶領域を意味する私の造語です。

何か役立つ事柄を本で読んで、その時には感心、納得しても、読み終わったら、いつの間にか忘れてしまうものです。楽しみとして読む小説なら、それでも構わないでしょう。しかし、本書を手にしたみなさんは、説明上手になりたいと思って読まれたはずです。それなのに読んだ内容を忘れてしまっては、なにも読まなかったのと同じです。(中略)
つまり説明上手になるには、本書で述べた一五のルールを、確実に記憶に定着させることだけで十分に効果があります。