本書では、デザインから文章まで、世の中の至るところにはびこる「分かりにくい表現」をあぶりだし、なぜ分かりにくいのか、そしてどうすれば分かりやすくなるのかを、まさに「分かりやすく」解説しています。1999年に発行され、シリーズ50万部を突破したベストセラーの新装版となります。
世の中には、分かりにくい「表現」が溢れています。それを受け取る際は「なんか分かりづらいな」と思うのに、いざ自分が何かを伝えようとする際には、知らず知らずのうちに分かりづらい表現を使ってしまうこともしばしば。本書では、そんな罠に陥ることのないよう、分かりにくさの原因を突き止め、そうならないためのルールを明記。これらを意識すれば、自然と分かりやすい表現を使いこなせるようになるでしょう。
「分かりにくい」あるある

分かりにくさは、こうしたビジュアルだけでなく文章にも表れます。以下に出した例は、とあるマンションに掲示されていた告知文。

「分かりやすい」とは何かを知る
書留郵便が届いた時のことを考えてみましょう。印鑑が整理されず、ただ家の中にあるだけでは、すぐに持ってきて受領印を押すことはできません。印鑑をすぐに取り出せるのは、印鑑が整理されて、決まった場所にしまってある場合に限られるわけです。
ちなみに本書では、たびたびこうした「たとえ話」が登場しますが、本書内でも、「分かりやすい表現」の手法のひとつとして、「たとえ話」を挙げています。なぜ「たとえ話」が分かりやすいのかというと、「分かる」とは、新しい情報の構造に関して、自分がすでに知っている情報の構造と照らし合わせ、それと一致するものを認識することでもあるからです。
「分かりにくい」を生み出す犯人を捜せ
「親切心の欠如」「受けてのプロフィール未定義」「大前提の説明もれ」「複数解釈ができてしまう」「視覚特性の無視」など、全部で16人の“犯人”を挙げて、その具体例を示しつつ改善案も記載しています。いくつか紹介しましょう。
「『受け手』のプロフィールの未定義」
いわゆる業界用語や社内用語などを部外者に使ってしまい、相手が「?」となるパターンですね。ある商品や分野について、その専門家が説明するのがいちばん分かりやすいと思いがちですが、専門用語をズラリと並べるなど言葉のチョイスを間違うと、逆にチンプンカンプン、というケース。そうならないために、情報の受け手の視点に立つことが重要であると説いています。
「直訳」
外国語の翻訳文を例に、翻訳とは「一つの言葉を別の原義に変換する作業ではない」と説明する著者。翻訳が伝えるのは言語ではなく意味であるとし、
ステップ1 原文の「意味」を理解する。
ステップ2 その「意味」を表す日本語を書く。
中学英語を卒業して数十年経ちますが、あらためてハッとさせられたのが以下の部分。
He was taller than any other boy in his class.という英文を「彼は、クラスの中で、他のどの少年よりも背が高かった」と訳す必要はさらさらありません。原文の意味を正しく理解すれば「ジェームスはクラス一の大男だった」というほうがふさわしいかもしれないのです。
様々な事例と併せて、なぜ分かりにくいのか。どうすれば分かりやすい表現になるのかをひとつひとつ丁寧に掘り下げ、「隗(かい)より始めよ」とばかりに分かりやすく解説する本書。ビジネスメールから資料作成、友人とのSNSでのやり取り、そして各種デザインに至るまで、あらゆる表現において役立つ指南書です!