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2025.04.28

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最初の1行はどうする? 誰も教えてくれなかった“レポート・論文術”超基本のはなし

「書きたい気持ち」がわいてくる

『ゼロから始める 無敵のレポート・論文術』は、苦手意識を持たれがちな「レポート・論文作成のノウハウ」を教えてくれる1冊です。
著者の尾崎俊介さんは、アメリカ文学・文化を講じる傍ら、30年以上にわたって学生の卒論指導に携わってきました。本書はその「指導のキモ」をまとめたものです。
「論文って、何をテーマに書けばいい?」「何枚くらい書けばいいの?」「はじめの1行を書き出せない」「どんな資料を、どのくらい集めればいいの?」……といった、論文を書くうえで直面する悩みごとへの、具体的でシンプルな解決方法を教えてくれます。

たとえば、論文やレポートを書くにあたり、多くの人が頭を悩ませる「最初の1行」。尾崎さんの「とっておきの対処法」はこうです。
「自分が書こうとしていることを、人に話してみなさい」とアドバイスするんです。ここで重要なのは書くのではなく、人に話すというところ。
そうすると、どこから話し始めるべきかは、たちどころにわかります。自分が調べていることを人に伝えるとしたらまずはここから話すべきだな、という勘所(かんどころ)は誰にでもすぐに分かる。
それです。その「ここから話すべき一節」こそが、卒論の最初の一行です。
このように、論文・レポートの執筆にあたり「やるべきこと」が端的にまとまった再現性の高いノウハウが本書の特徴です。実践してみると、あんなに悩んだ「最初の一行」がスッと浮かぶことに驚きます。

そして本書にはもう一つのテーマが隠れています。それは「実際に学生たちが書いた卒論を通じて、アメリカ文学やアメリカという国の面白さを伝える」こと。
「お墓」「社会におけるバービー人形の役割」「ゲーテッド・コミュニティ」「肥満」……。学生たちは尾崎さんの言葉を借りれば「ヘンテコリン」なことを徹底的に調べ上げ、アメリカという国の核心を捉えるような興味深い論文を書き上げています。たくさんの実例は本書のノウハウを自分の論文に投影する際のヒントにもなります。「自分にも書けるかも」「書いてみたい!」そんな気持ちがわいてくるはずです。

「書くこと」へのプレッシャーをなくしてくれる

本書の構成は、「テーマ選び」「資料集め」「ネタの整理」といった具合に、論文作成の手順通りに進んでいきます。特にテーマ選びは文系の論文作成における最重要課題。1章、2章を丸ごと使って丁寧に解説しています。

ここでもっとも重要なことは
自分にとって興味のあることについて書く
ことだそう。「論文は評価されるもの」「自由度は少ない」と思っていた私は少し意外に感じました。
しかし、これこそが論文を書く作業を楽しくし、良い仕上がりに近づける秘訣であり、ひいては
自分にとって一番興味のあることは何かを考えることは、自分が何者であるかを考えることに他ならない
というのだから、自分本位でいいのです。
ここは論文が「義務」から「取り組んでみたいこと」に、一歩近づいたパートでした。

目からウロコだと感じたのが、第5章「笑いを取って、つっこむ」です。
論文のような“真面目なもの”の中で取る“笑い”とは?という疑問への答えは、そのまま「優れた学術論文」の定義となっています。

論文を書くうえですぐに知りたいところ、気になるところから読むのもいいでしょう。たとえば、第7章「卒論の構成」には、多くの学生が最初に抱く疑問への答えがあります。
Q:論文って、どのくらいの枚数を書けばいいの?
A:(中略)こと卒論に限定しますと、文系の卒論であればA4の用紙に打ち出して、全体で40枚程度の分量があれば十分なのではないかと個人的には思っています。
さらにこの章では、バランスの取れた論文を作成するための「黄金分割比率」も明かされています。書くべき枚数に対する文章量の内訳がわかるだけでも「A4用紙40枚にわたる長い文章を書く」道のりが、「途方もないもの」から「できそうなこと」に変わるはず。

「言語化」のための優れたノウハウ

「コーヒーブレイク8 これが添削だ!」では、学生が実際に書いた卒論の初稿が、添削で見違えるように読みやすく、洗練されていく過程を見ることができます。
論文なんてせいぜい「根拠のあるゴシップ」だと思えばいい。
さあ、このゴシップを分析してみよう。まず「ねえねえ、聞いて! すごい話聞いちゃったのよ!」という部分で、これから自分がおもしろい話をすることを予告し、聞き手の注意を促したわけだ。
要するに論文もこの調子でいけ、ということなのだ。簡単だろ?
指摘の多さにもかかわらず、「この通りにすれば、私にもできそう!」と思わせてくれる力強さがあります。「書きたいこと」を言語化するノウハウの引き出しの多さに、30年間の論文指導の歴史を感じます。卒論やレポートのみならず、自分なりの文章で「伝えたいこと」を形にするコツをつかませてくれる、頼れる1冊です。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。

X(旧twitter):@752019

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