ああ……それにしても科学的に考える力が欲しいっ……!!
日常生活を送るうえでも仕事の面でも、科学的思考の力が発揮できれば、大きなメリットがもたらされるのはまちがいない。質の高い情報と疑わしい情報との違いが見きわめられるようになることで、有害な情報から自分の身を守りやすくなる。それに、自分から情報を発信するときにも、いわばその「品質保証」ができるようになる。
つづく第2章では「科学的思考の核心をなすテーマ」として、第1章でも登場した「因果関係」が取り上げられている。ちなみに、日常の中で「因果」という単語を知っていたとしても、あらためて「それが何なのか説明せよ」と言われると、考え込んでしまうかもしれない。だが心配はご無用。本書において、著者はそのつどやさしい言い回しで、用語の意味を解きほぐしてくれる。
一般に、AとBというふたつのできごとの間に、「Aが原因となってBという結果が生じる」という関係があるとき、AとBには「因果関係」が成り立っているという。原因の「因」と結果の「果」を合わせたのが「因果」だ。因果関係を考えたり説明したりすることは、科学という営みの──ということは科学的思考の──核心に位置している
こういった形での解説や補足は、全編を通じて登場する。たとえば第3章に出てくる「認知バイアス」や第6章で出てくる「演繹的推論」「枚挙的帰納法」「アナロジー」といった言葉や考え方についても同様で、私はそのつど自分の知識のあやふやさを痛感しながら、上書きされていく安心感に満たされた。また、テーマごとに提示される問題と解答もわかりやすく、豆知識的なコラムや、理解を助ける推薦図書の提示も嬉しい。できることならもっと早く、学生や社会人になりたての頃に、この本と出会っていたかった……!
1978年生まれの著者は、科学哲学や分析哲学、脳神経倫理学の専門家で、これまでにも多くの著書を執筆してきた。今年4月から東京大学大学院情報学環・学際情報学府の准教授を務めている。なお本書の最後を飾る第7章では、「科学が独力ではなく集団で行われる活動であること」を示すため、著者が好きだというマンガ作品の一コマが引用されている。また巻末のあいさつでは、冒頭の叫びが、実はあるマンガ作品からの「もじり」だということも明かされており、専門的な内容にちりばめられた遊び心が楽しかった。
326ページという厚みと、本自体のずっしりとした重さ、そして専門的な内容にひるむ方もいらっしゃるかもしれない。しかし本書を通じて、新たな視野と考え方が手に入るのは間違いなく、「科学という人間の営み」の面白さにも触れることができる。春という新しい季節にぴったりの本書は、今後ますます難しくなっていきそうな現代社会と向き合う、ひとつの手立てとなるだろう。