『線は、僕を描く』のメフィスト賞作家・砥上裕將(とがみひろまさ)氏が描くのは、視能訓練士の青年・野宮恭一(のみやきょういち)が街の小さな眼科で奮闘する物語です。視能訓練士とは、小児の弱視や斜視の矯正、視機能検査などを行う国家資格を持つ専門技術職のこと。冒頭の一行は、タイトルにも込められた「目」という器官の神秘を端的に表現しています。
本書は’21年発表の『7.5グラムの奇跡』の続編です。動脈閉塞(へいそく)をはじめとする従来の眼病から、糖分の過剰摂取やスマホの酷使による現代特有の眼障害も多数紹介。さまざまな目の悩みを抱えた患者と心を通わせながら少しずつ成長していく主人公の姿を、優しい眼差しで追います。
読み終わった後には、全く異なる景色が見えるはずです。目に宿る奇跡に向き合う野宮君の活躍と光あふれる物語に、ご注「目」ください。
──文芸第三出版部 市川裕太郎