毎日使える黒酢
そういえば黒酢酢豚も美味しいもんね。体にいいとも聞くし、私も黒酢を買ってみようかな。ここまで考えてふと我に返ります。餃子も酢豚も年に何回、家で食べる? 黒酢を買っても使いきれないのでは……?
そんな私に、黒酢の万能ぶりを教えてくれたのが本書『ウー・ウェンの毎日黒酢』です。
ウー・ウェンさんは中国・北京生まれの料理家。医食同源の理念に基づき、北京の家庭料理を日本の素材で作りやすい形にアレンジ。シンプルで健康的なレシピとして伝えてくれます。
しかし「毎日黒酢」といっても、酸っぱい味付けの料理ばかりでは飽きてしまうかも? そんな疑問にウー・ウェンさんはこう答えます。
中国で酢といえば、「黒酢」のこと。その使い方は、ほとんどが料理の隠し味なんです。酢の物のように、酢の味を全面に出す使い方はあまりしません。
どれもたっぷり黒酢を使い、他の調味料や調理法は驚くほどシンプル。中には砂糖も醤油も使わないレシピもあるほど。なのに、思わず口をつくのは「酸っぱい」ではなく「おいしい!」のひとこと。毎日食べたくなる黒酢の魅力が詰まった1冊です。
まずは10種のタレから
黄金比さえ
覚えておけば、
あとは混ぜるだけ。
黒酢の味はメーカーによって異なりますが、本書で使用しているのはどのスーパーでも手に入りやすいと思われる1種のみ。同じものを使うとより忠実に本書のレシピを再現できるでしょう。
特別なことをしなくても、この10種のタレを肉や野菜はもちろん、納豆や豆腐、はたまたとんかつや焼売のような馴染みのあるおかずに添えるだけで、いつもの味が見違えます。
絶対に食べてみたい!と思ったのが、この生姜焼き。
タレに砂糖は使いません。しかしほんのり甘みも感じる黒酢と、甘めの味付けが合うとされている豚肉の相性の良さが感じられます。
つるりと飲むようになすを食べられるのがこちら。
タレがあると素材を「焼くだけ」「蒸すだけ」で美味しい料理になります。10種のタレは料理へのハードルをぐっと下げてくれます。
シンプルレシピが美味しい理由
ですがこの本の見どころは、このシンプルなレシピが「なぜ、そうなるのか」「ここに気をつけると美味しくなる」という、ウー・ウェンさんの料理のロジック解説にあります。
こちらは、表紙にもなっている南蛮漬け。
南蛮漬けに欠かせないあの甘みはどうやって出すのか? 小魚を骨ごと美味しく食べるためにはどんな処理が必要なのか? 本文の解説を読むと、そんな疑問が解けていきます。
麺を冷蔵庫から出すタイミングにネギの切り方、調味料を加えるタイミング……美味しく作るため、すべての工程に理由があることがわかります。
この「なぜ」を理解すると、他のレシピも「ああ、これは絶対美味しい」とわかるうえ、自分の好みに合わせたアレンジもできるように。本書は、黒酢に親しませてくれるだけではなく、シンプルな料理を豊かに美味しく食べるための秘訣も教えてくれる1冊です。