私も暴飲をした日はウコンでなんとか翌日の仕事に備えるなどの悪あがきをサプリメントに頼ったり、暴食した際にはそのツケを健康食品に頼ったりと日々それらの効能に期待して過ごしておりますが、きっと皆様もそんな経験は記憶にあるのではないでしょうか。
本書は、健康食品を摂取している人、これから摂取しようと考えている人、そして健康に関心のあるすべての人にとって必読と言えるでしょう。
2024年3月に発覚した小林製薬の紅麹(べにこうじ)問題は、「サプリを飲んでいただけなのに死に至ることがありえたのだ」ということに衝撃を受けつつ私は報道を眺めていました。
その結果実際にその深刻さから海外でも注意喚起が行われていますし、かつて新聞誌面やニュース番組を騒がせたさまざまな薬害問題を思い出した方も多いのではないのでしょうか。
本書でもこの問題は取り上げられていますが、一つの企業だけの問題ではなく、国も、メディアも、サプリや健康食品を享受する生活者にも関連する問題であるということを紅麹問題をケーススタディとして扱っています。
本書にて例を挙げられている健康食品やサプリメントは、お酒の席に頼るウコンや、バストアップを期待して摂ったプエラリア・ミリフィカによる被害など色々耳にしたことがあるケースを取り上げています。そのため身近な問題として自覚できる内容です。そしてかつては健康食品界のエースのような感じで取り上げられていたβカロテンなど、そのもの自体には問題ないのだけれど、摂りすぎや体質、病歴によって毒になるというような後年に評価が変わっているものなどもあります。
一見効果的に思える製品にも、知られざる問題点が存在するという課題や、栄養素であっても、適切な摂取量を超えると健康被害を引き起こす可能性があること、特定の健康食品と医薬品の併用が、予期せぬ副作用をもたらすリスクなど、思い返すとヒヤリとする方もいらっしゃると思います。
かつてはテレビや大企業のCMなどで大々的に取り上げられたものですから、知識がアップデートされていなければずっと大量に摂り続けるということも起こり得る問題があるという事実を再確認するいい機会にもなります。
しかしながら、本書では単なる「買ってはいけない」というような無闇に恐怖を煽るような内容ではありません。
「どんな物質も毒であり、その物質が毒になるかならぬかは、単にその量に依存する」という16世紀のパラケルススの言葉を引いて、容量や用法を守り、適切な使用を守って活用しましょうというスタンスで具体的な方法を提示してくれています。
6章では、「悩み」別の健康食品活用法と題し、「健康食品で病気は治せないが予防にはなる」という前提での解説や、トクホや機能性表示食品の違い、中性脂肪や肥満、お肌、お腹の調子の改善などのケースに対してこうしたらある程度は期待できるのではないか、と読者に寄り添ってくれています
だからこそ本書では「健康食品は医薬品ではない」という考え方をしっかり持つことが非常に重要だと繰り返し述べられています。これはハッとしました。自分を振り返ってみると、サプリをとっていたはずなのに、気持ちとしては薬を飲んでチャラにする気持ちに意識が変わっていなかったか?と。
きっと、本書を手にした多くの人が持つ感覚なのではないでしょうか。
健康食品は、使い方を誤ると命に関わる危険性も孕(はら)んでいます。本書を読むことで、健康食品に対する正しい知識を身につけ、健康被害から身を守ることができるでしょう。
筆者は一般社団法人日本食品安全協会代表理事であり、薬剤師・薬学博士の長村洋一氏で、医療に携わる著者の警鐘と共に本人の忸怩(じくじ)たる想いも痛切に感じられる魂の叫びにも感じられました。
氏のような以前より警鐘を鳴らしている人がいたとしても、実際に問題が起きない限り社会は動かないし変わらないということはどの分野にもあるありふれた課題ではあります。
だからこそ生活者として正しい知識を持ち、自分がその当事者や被害者にならないように自衛していくことの重要性を再認識させられる1冊でした。