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2024.11.19

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東大・京大ほかの入試問題を中学数学で解く着眼点と解法をお教えします!

わかる喜び、解ける楽しさ

毎年、大学入試共通テストの問題と回答が新聞に掲載されると、つい解いてみたくなる。頭の片隅から掘り起こした数学の記憶で問題を解く筋道ができ、スッキリ解けた瞬間は爽快だし、わからなかった問題の解説を読んで「そういうことか!」と膝を打つのも楽しい。

宿題のような義務感もなく、テスト前のように時間に追われる詰め込み学習でもない。「私にもできるか、挑戦したい」そんな気持ちで取り組む数学は、学生の頃と違ってなんだかワクワクする存在だ。
もう少し、この楽しさを味わいたい。そんな気持ちで手に取ったのが『中学数学で解く大学入試問題 数学的思考力が驚くほど身につく画期的学習法』だ。題材となる入試問題は東大や京大といった難関大学のもの。中学数学の知識で解けるのだろうか?と疑いたくなるが、そもそもこの本はドリルや参考書のような、たくさんの問題とそのスマートな解法、テクニックを並べた本ではない。
「中学数学で解くことができる大学入試問題」には、初見の問題を解くための「数学的思考力」と、それを身につけるための「数学の学習法」のヒントが詰まっています。
著者の杉山博宣さんが、この本の読者の家庭教師になったつもりで「問題文を読んで何を考えたか」「どのように思考、試行錯誤して解答にたどり着いたか」を可能な限り言語化した、と語る第1章ですっかり心を掴(つか)まれてしまった。

本書で取り上げる入試問題は思考力を問う、「考える楽しさ」を味わえる問題だ。そして問題を通じて「数学の神髄」に近づくことができる「良問」をセレクトしているという。

数学の代表的な4分野である「代数学」「解析学」「幾何学」「確率・統計」を縦横無尽に使って思考できるようになることを目指して書かれたという本書。紙とペンを手に、一緒に問題を解きながら読むのはもちろん、丁寧に言語化された解法を読むだけでも、点が線となり面になる知識の広がりを、また霧が晴れるように「わかった!」と目の前が開ける感覚を味わえるはずだ。

「良問」に触れてみよう

「良問」に触れると、どのような思考が生まれるのだろうか? まずは実際に本書に収録された問題を見てみよう。
東大の入試問題と聞いてイメージするより、シンプルな問題に見える。しかし「f(n)が素数となるような整数nを“すべて”」と言われると、ちょっと先が見えなくなる。いくつかの値を代入してみればこの式を成り立たせる整数に行き着くとは思うが、その“いくつか”が“すべて”である保証はない。

本書ではこのように「nにひとまずいくつかの数を代入して見通しを立てる」ことを「実験」とし、その結果を踏まえて頭を切り替え、解に近づく方法を教えてくれる。
整数問題において手詰まりになった場合は、「整数問題の技法(1)積の形をつくる」で手がかりが得られないかを考えてみましょう。
この問題は、問題文にもある「素数の定義」に、先の「実験」「積の形をつくる」を組み合わせることで解くことができる。具体的な式をここに引用することは控えるが、ひとつひとつを問題に適用するたびに、進むべき方向がクリアになってくるのがわかる。
「とりあえず、nに数字を代入してみるか」「整数×整数=整数の形に直してみるか」という、何気ない思考やテクニックに「実験」「積の形をつくる」と名前があるのもいい。おかげで自分の思考にフォーカスしやすくなり、解法の仮説を立てるのにも役立つ。
本書で数学力を向上させる最短ルートだと語られる「アナロジー(推論)の力を身につける」ことと合わせて、「初見の問題を解く力」の向上を図る工夫があちこちに見られるのが嬉しい。
大学入試問題は1問あたり20~30分が標準ですから、頭を抱えて考え込むのではなく、どんどん手を動かして「実験」し、「特殊→一般」へと進んでいきましょう。
「百聞は一見に如かず」ならぬ、「百聞は一験に如かず」なのです。
難関大学の受験問題は、「とにかく難解」な受験生をふるい落とすためのものだと思っていた。しかし、本書の問題をひとつひとつ、思考プロセスをたどりながら読んでいくと、「出題者の求めていること」が行間から浮き上がってくるのが楽しい。単なる数学の解法だけでなく、さまざまな方法で思考の閾値をひろげてくれる本書。受験生はもちろん、数学から一度距離を置いた大人にこそ手にとってもらいたい。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。

X(旧twitter):@752019

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