わかる喜び、解ける楽しさ
宿題のような義務感もなく、テスト前のように時間に追われる詰め込み学習でもない。「私にもできるか、挑戦したい」そんな気持ちで取り組む数学は、学生の頃と違ってなんだかワクワクする存在だ。
もう少し、この楽しさを味わいたい。そんな気持ちで手に取ったのが『中学数学で解く大学入試問題 数学的思考力が驚くほど身につく画期的学習法』だ。題材となる入試問題は東大や京大といった難関大学のもの。中学数学の知識で解けるのだろうか?と疑いたくなるが、そもそもこの本はドリルや参考書のような、たくさんの問題とそのスマートな解法、テクニックを並べた本ではない。
「中学数学で解くことができる大学入試問題」には、初見の問題を解くための「数学的思考力」と、それを身につけるための「数学の学習法」のヒントが詰まっています。
本書で取り上げる入試問題は思考力を問う、「考える楽しさ」を味わえる問題だ。そして問題を通じて「数学の神髄」に近づくことができる「良問」をセレクトしているという。
数学の代表的な4分野である「代数学」「解析学」「幾何学」「確率・統計」を縦横無尽に使って思考できるようになることを目指して書かれたという本書。紙とペンを手に、一緒に問題を解きながら読むのはもちろん、丁寧に言語化された解法を読むだけでも、点が線となり面になる知識の広がりを、また霧が晴れるように「わかった!」と目の前が開ける感覚を味わえるはずだ。
「良問」に触れてみよう
本書ではこのように「nにひとまずいくつかの数を代入して見通しを立てる」ことを「実験」とし、その結果を踏まえて頭を切り替え、解に近づく方法を教えてくれる。
整数問題において手詰まりになった場合は、「整数問題の技法(1)積の形をつくる」で手がかりが得られないかを考えてみましょう。
「とりあえず、nに数字を代入してみるか」「整数×整数=整数の形に直してみるか」という、何気ない思考やテクニックに「実験」「積の形をつくる」と名前があるのもいい。おかげで自分の思考にフォーカスしやすくなり、解法の仮説を立てるのにも役立つ。
本書で数学力を向上させる最短ルートだと語られる「アナロジー(推論)の力を身につける」ことと合わせて、「初見の問題を解く力」の向上を図る工夫があちこちに見られるのが嬉しい。
大学入試問題は1問あたり20~30分が標準ですから、頭を抱えて考え込むのではなく、どんどん手を動かして「実験」し、「特殊→一般」へと進んでいきましょう。
「百聞は一見に如かず」ならぬ、「百聞は一験に如かず」なのです。