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2014.08.25

レビュー

宇宙からの贈り物、突然やってくる、それは時に地球システムを狂わせるものでもある……。

2013年2月15日、ロシアのチェリャビンスクに隕石が落下しました。松井孝典さんがいうように「チェリャビンスク隕石の衝突改めて我々が、宇宙からの脅威に絶えずさらされていることを認識させてくれた」のです。

その宇宙からの脅威によって絶滅したのが地球を制覇していた恐竜でした。その絶滅はどのように起こったのでしょうか……。
「衝突が起こった当時、ユカタン半島は浅い海におおわれていた。(略)衝突地点に厚く堆積していた硫酸塩岩は硫黄を大気中に放出する(略)大気中に放出された硫黄は、酸素と反応して硫酸となり、地球に降り注ぐ。現在の酸性雨とは比較にならない酸性の雨である。酸性雨は陸上の動植物に深刻な影響を及ぼすだけでなく、海洋に住む生物に大きなダメージを与える。その量によるが、海面から水深100mくらいが酸性化する可能性がある」
こうして白亜期末の6500万年前地球を襲った巨大隕石の影響で恐竜など生物の約6割が絶滅したのです。

地球生命史の考え方では、かつては「斉一観的斬新説」が主流でしたがここ50年でこの「激変説」に流れが大きく変わりました。そしてこの「激変」は私たちの文明の未来にも当然起きてくる脅威なのです。しかもそれは、太古の恐竜を滅ぼしたほどの巨大なものである必要はありません。なぜなら
「ずっと小さくても、文明には影響する。その理由の1つは、人類が生物として、衝突による地球環境の変化の影響を受けやすいことがあげられる。そしてもう1つは、文明が沿岸域や大きな川沿いに生まれ、衝突の直接の影響を受けやすいからである」
からです。地球システムという考え方からでは
「システムは、その構成要素が変わると、新しい状態に移行する。システムの状態は、構成要素間の相互作用により決まるからである。地球システムの状態とは、我々にとって具体的に言えば、地表の環境である。このことは長期間の安定した、変化の少ない状態が、それに比べればずっと短い期間で、新しい状態に移行することを意味する。地球史を、システムとして考えれば、長い退屈な時間と劇的に変化する短い期間の繰り返しと、ということになる」

この「激変説」に立つ文明史はこれからの松井さんの(もちろん私たち人類すべての)探求のテーマになっているのです。

壮大なテーマを含んだこの本は興味深い文で締めくくられています。
「彗星の出現、あるいはその地球との遭遇に伴う現象から、龍という仮想敵動物が誕生した、という仮説は魅力的である。それについて、もう少し文献を調べてみたいと思ったが、今回は間に合わなかった。固定堆積物の分析が終わったら、龍の伝承を含めて、あらためてまとめてみたい。文明の過去が、宇宙からの天変地異に彩られているとしたら、その未来もまたそうなのかもしれない。龍の創造はこの意味で、文明と宇宙との関わりにとって、深い意味をもつといえよう」
松井さんの〈龍論〉を早く読んでみたくなります。

レビュアー

野中幸宏

編集者とデザイナーによる覆面書籍レビュー・ユニット。日々喫茶店で珈琲啜りながら、読んだ本の話をしています。

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