「こすらない美容」のすべて
美容に力を入れようと考えたとき、意識はつい、あれこれ手をかける方向に向かいがち。「◯◯をすれば美肌」はよく聞くけれど、その逆はあまり聞かないと思いませんか?
写真/中村和孝
美容において、なにかを「やめること」が劇的に良い結果を生むことがあります。
美容家の石井美保さんが提唱するのは「こすらない美容」。
現在48歳の石井さんは、カサつきやニキビはもちろん、シワやくすみ、赤みもたるみも見当たらない、赤ちゃんのような美肌の持ち主です。
『スキンケアで肌を毎日いためていませんか? こすらなければ、美肌』は、そんな石井さんが編み出した「こすらない」美肌メソッドを教えてくれる一冊です。
タイトルのとおり、肌悩みを解消する秘訣はとにかく肌を「こすらない」こと。本当にそれだけでいいの? 石井さんの肌がもともとキレイだからなのでは? と思いきや、以前は石井さんも、肌悩みや合わないスキンケアによるトラブルを抱えていたといいます。
イラスト/本田佳世
転機は、20代でまつ毛エクステのサロンを開いたこと。せっかくのまつエクが取れてしまわないよう、クレンジングを優しく行うようにしたところ、あんなに悩んだ肌トラブルが短期間で改善されていきました。
理由を追求した結果、たどり着いたのは「こすらない」ことでした。
しっかりファンデを落とすため、オイルクレンジングで肌をクルクルマッサージしたり、肌をタオルでゴシゴシ拭いたり、美しい発色を求めてまぶたが動くほど強くアイシャドーチップを押し付けたり……。
良かれと思ってやっていた「こするケア」をやめれば、悩みは解消し、肌は見違えると教えてくれるのがこの本。
10年後、20年後の肌に大きな差をもたらす「こすらないケア」の全てを教えてくれる一冊です。
「こすらず」「汚れを落とす」には
私にも一応は「肌はこすらない方がいい」という知識はあり、自分なりに気を付けていました。しかし、特に肌が良くなる実感はなく、「現状維持できればいいか」とも思っていました。
それもそのはず、私の「こすらないつもり」のケアと、この本の「こすらないケア」は、まるで違うものだったのです。
たとえば、「こすらないクレンジング」はこんなふうに行います。
写真/岩谷優一(vale.)
「肌をこすっている」とはどういう状態か、手はどのように使えばいいのか、気になる部分はどのように触れればいいのか、すべてが具体的。「1エリア×3回を目安にゆっくりなでる」だけでも、汚れが落ちるなんて。クレンジングを指先で素早くクルクルしたり、肌をぎゅっと押さえる必要はないんです。
「こすらないケア」には、大切なコツがあります。
大前提として守っていただきたいのが、肌に触れるときは必ず鏡を見ること。鏡を見ないと、身に染みついた今までの手つきで無意識にケアしがちで、肌が動いていても気づけません。
肌を動かさないよう、鏡を見ながらクレンジングをしてみると、かなり意識して手の力を抜く必要があるとわかります。
また、同じ力をかけているつもりでも、指先を使うのと、手のひら全体を使うのでは肌にかかる力が大きく変わるのも実感できます。手のひら全体を使うと肌を優しくなでるだけでもメイク汚れの浮き上がりが早く、きちんと汚れを落とした感覚があります。
手加減、コスメの使用量、手の動かし方……
意外に難しい「こすらない」ケアのコツが、目で見てわかるのがうれしい。
そして「こすらない」ケアはただただ「触らない」ケアではありません。
肌に負担をかけずにくすみや毛穴汚れ、角栓を取り除く洗顔方法や、こすらずに美しくメイクを完成させる方法、肌に適度な刺激を与えてハリを取り戻す「肌アイロン」の取り入れ方もわかります。
写真/中村和孝
雑誌で見てはいたものの、力加減や手順といったコツを知りたいと思っていた「肌アイロン」のフルプロセスが、コマ送りで見られるのがとてもうれしい。さらなる引き上げ効果をもたらすとっておきのマッサージも、即効性が高く、テンションを上げてくれます。
肌への向き合い方を教えてくれる
こすらないケアは自分の肌に集中するケア方法だと感じます。この本と鏡を見ながら肌に優しく触れるようにして数日。拡大鏡で確認すると、なんとなくシワっぽかった目元にハリが出てきた気がしています。こんなに早く結果が見えると、こすらないケアがさらに楽しくなります。この本は、自分の肌に向き合い、丁寧に愛でてあげるメソッドを教えてくれると感じました。
レビュアー
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
X(旧twitter):@752019