ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエル・ガザ紛争、台湾海峡緊張、抑圧される人権とそれに抗する人々──。
世界で今なにが起きているのかを読み解く、講談社の書籍をご紹介します。
すべてを他人事にしないために
好きなことを言い、好きな服を着ているだけで、政治犯として逮捕されてしまうイラン。日本で暮らしていると、「遠いイスラム世界の話」にも思えます。しかし本書に込められているのは、家父長制のもとで見えない重圧に縛られている、すべての女性へのメッセージ。「自由を決してあきらめてはいけない」と。
独房の中で祈り、入ってきたハエに話しかけて孤独から逃れ、囚人同士で連帯しようとする熱いシスターフッド。絶望的な現実を描きながら、人間の根源にある希望が描き出されるノンフィクションを、ぜひご一読ください。
─── ノンフィクション編集チーム 青木由美子
命をかけた「6秒の反戦行動」
テレビ局の生放送中のスタジオで戦争反対の紙を掲げた女性。世界中に衝撃を与えた「事件」後、彼女の身に何が起こったのか。 ─当局による度重なる尋問と監視、職場解雇、メディア・SNSでの中傷、さらにプーチン支持の母親からは絶縁され、元夫には愛娘を奪われ会えなくなる。
刑務所に入れられる寸前、奪還した娘を連れて軟禁された自宅から決死の国外脱出を果たすまでの7ヵ月を綴った彼女の手記は、いまのロシアで普通の人々がプーチンに「NO」と言うことの恐怖、それでも立ち向かう個人の強さを描いています。ロシアで起きている「現実」をご高覧ください。
─── ノンフィクション編集チーム 田中浩史
プーチンが語る「戦争の論理」
ウクライナ戦争はなぜ起こったのか? それをプーチン自身の論理で紐解くため、大統領就任からウクライナ戦争までのターニングポイントが分かる20のプーチン論説を編訳したのが本書です。プーチンがいかなるロジックとレトリックを駆使して人心を掌握し、現在の地位に登り詰め、権力を行使してきたのかが、彼自身のスピーチと論文を通してニュース以上に深く理解できます。
ピケティ『21世紀の資本』訳者による充実した解説とともに、ウクライナ戦争の、プーチンの是非を自分の目で確かめられる貴重な一次資料です。
─── 星海社 片倉直弥