テンションの上がる113レシピ
疲れて帰ってきた日は、「美味しいものが食べたい」と強く思います。デパ地下のお惣菜も悪くないけど、ホッとする味付けで、彩りもよくて、見た目もきれいな「おうちごはん」だと、気分が上がり、疲れも癒されます。
しかし「こんな素敵なごはんだったら」と思うものの、作るのは結局自分。晩ごはん作りに力を入れると自分の時間がなくなることも。それなら、さっと作れるメニューが一番! ……となりがちです。
ですが、こんなに華やかで特別感のあるこの晩ごはんも、よく見ると「包丁を使うプロセスが少ないかも」「特別な材料がなくても、家にあるもので作れそう」といったことに気づきませんか?
『盛り上がる ごちそう見えごはん』は、インスタグラマー“hitomi”さんの初の著書です。
かつては料理があまり得意ではなかったというhitomiさんは、インスタグラムの料理写真をきっかけに器にハマり、お気に入りの器に合わせた家庭料理を投稿するように。美しい彩りや盛付けが目を楽しませてくれるごはんが人気を集めています。
この本ではhitomiさんが長年作りためてきた料理たちを肉、魚、野菜、主食などのジャンルで分け、さらに日々の献立に彩りや栄養バランス、飽きないおいしさをプラスする小鉢や汁物、フルーツなどを交えて紹介します。その数なんと113レシピ!
食卓がパッと盛り上がる特別感があるのに、調理時間は25分以下のものがほとんど。
調理のコツも、わかりづらい箇所は手順写真つきだから安心です。
豪華な見た目のメニューも、「調理のポイント」をよく見ると、思いのほか手早く簡単に作れそう。hitomiさんのおうちごはんの特徴は、
いずれも特別な食材は使わずおうちにある食材で簡単に作れるものばかり。どうせ作るなら見た目でも楽しめるよう、見せ方にこだわり、盛り付けを工夫。パッと見、手間暇かけたように見えるけど、実は手間を省いて実践可能なシンプルテクニックばかりです。
短時間でおいしく作れるレシピにこうしたテクニックが加わると、目で見ても楽しい「ごちそう感」が生まれます。
あれもこれも頑張らなくていいし、疲れていても大丈夫。
つくる人も食べる人も「おっ!」とテンションが上がる、おうちごはんが待ち遠しくなる一冊です。
「30分でごちそう見え」の秘密
この本のレシピには、おいしくてごちそう見えする料理を短時間で仕上げるためのコツが詰まっています。
美しく盛り付けられた「すきやき丼」ですが、調理時間はたったの20分!
調理プロセスはシンプルで、調理の流れをざっと頭に入れておけば、途中で本を見直さなくてもよさそうです。煮込み時間も短い。パッと目を惹く飾り切りのにんじんや椎茸も、手がかかりそうにみえて、型抜きしたり、数本切込みをいれるだけ。
なのに、それだけで料理の仕上がりは断然華やかに。hitomiさんのいう「見せ方にこだわる」は、決して難しいことではないんです。
レシピのタイトル横にある調理のコツが、「おいしく、美しい」の大きなカギに。食欲をそそる焼き色をつけたい具材と、柔らかく仕上げたい牛肉は、鍋に加えるタイミングをずらしましょう。
この「コツ」部分は、レシピごとの押さえたいポイントが書かれており、例えば肉巻きのレシピには「(肉の)巻き終わりを下にして触らない」とあります。「触らずじっくり焼く間にほかの副菜を作ろう」など、帰宅後30分で晩ごはんを完成させるプランを練ることもできます。
こちらは、宝石のようなトマトのマリネ。
湯むきは面倒くさい……と思いきや、皮に切れ目を入れれば簡単に。さらにマリネ液に入るのは「市販のすし酢」なのも時短ポイント。調味料を計って混ぜるのも結構時間がかかるもの。市販のすし酢を活用すれば、その手間なしにバランスの良い味に仕上がります。
一冊を通じて手間を掛けるところと省くところのバランスがよく、どの主菜と副菜を組み合わせても、短時間で「気分の上がるごはん」が仕上がります。
総合力で「ごちそう見え」
圧巻の「器コレクション」も、この本の見所のひとつ。
「ブルーやグレーの器は食材が映える」「小さめのオーバル皿を1つ入れると、全体的におしゃれに見える」などと考えながら写真を見るのも楽しいです。
写真はすべてhitomiさん自身によるものだそう。木製のトレーにたくさんの料理がぎゅっと並んでいるのに、なぜかスッキリ見えるバランス感覚も真似したくなります。
「美味しい」って「味がいい」だけじゃないんですね。思わず「わぁ……」と声が出るような、自分を、家族を笑顔にする食卓作りのコツがぎゅっとまとまった一冊だと感じました。
レビュアー
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
X(旧twitter):@752019