2023年、18年ぶりのリーグ制覇に加え、38年ぶりの日本一に輝いた阪神タイガース。
頼れる先発陣に盤石のリリーフ陣。決して多くない好機を確実にものにし、しっかり守り勝つ。名将・岡田彰布監督のタクトも冴えわたり、私を含めた全国の虎党を歓喜させた。シンクタンクのアジア太平洋研究所によると、その経済効果は1607億円にものぼると試算されている。
そのリーグ優勝・日本一を記念して、2024年5月に出版された異色の阪神関連書籍。それが2015年より阪神タイガース栄養アドバイザーを務める吉谷佳代氏が監修した『阪神タイガース認定レシピ集 トラめし』だ。虎戦士たちの力の源になっている食事の情報や体づくり、コンディショニングの秘訣などが凝縮された一冊になっている。
冒頭のインタビュー集「トラめしmvp」では、大山悠輔選手、近本光司選手、村上頌樹選手ら阪神の主力6選手が、自身の「体づくりと食」に対するこだわりをたっぷり語っている。
「あぁ、やっぱり近本は意識が高いなぁ」「森下、実はこんなに考えているのか(失礼)」など、他では触れられない選手たちの素顔に触れられて、阪神ファンならここを読むだけで、思わずニヤニヤしてしまう。
肝心のレシピ部分は「体をつくる」「リカバリーする」「体をしぼる」など、目的に応じたバリエーション豊かな献立を40種類以上掲載。それぞれの目的を達成するために必要な、栄養学の基礎知識が学べるコラムも充実している。
レシピの「作り方」はどれもシンプルなので、それほど料理慣れしていない自分でも簡単に手を出せそうなものばかり。各ページの欄外に乗っている、食事に関する選手たちのひとこと裏話「トラめしmemo」も、トリビア的な楽しさがある。
ほかにも、もともと「食事が美味い」と評判の「虎風荘」(若手選手が生活する選手寮)の食事情や、阪神甲子園球場のクラブハウスのメニューについてなど、興味深いコラムも多数。原口文仁選手と横田慎太郎選手(享年28)が「食事の後、朝昼晩欠かさずテーブルの上まできれいに拭いて片付けていた」という虎風荘の料理長のコメントを読むと、阪神ファンならば横田さんのあまりに早い訃報に改めて思いを馳せ、胸が詰まってしまうことだろう。
コロナ禍を経てそこそこ自炊をするようになった、私のような独身中年虎党にもピッタリの一冊。とりあえず今夜は桐敷拓馬投手お気に入りの「焼き牛丼」でも作ってみようかな。
レビュアー
編集者/ライター。1975年生まれ。一橋大学法学部卒。某損害保険会社勤務を経て、フリーランス・ライターとして独立。ビジネス書、実用書から野球関連の単行本、マンガ・映画の公式ガイドなどを中心に編集・執筆。著書に『中間管理録トネガワの悪魔的人生相談』、『マンガでわかるビジネス統計超入門』(講談社刊)。