「自分メイク」の新しい可能性
自分なりのメイクの方法を、すでに確立している大人の女性も多いはず。今は、自分の顔がどんなタイプなのか? パーソナルカラーは? といったことも簡単に知ることができます。そして立場的にきちんと感を求められていたり、自分に似合うものをある程度わかっていると、メイクで冒険する必要もあまりありません。「こうすれば私の顔はきれいに見える」というパターンを持っている人も多いと思うのです。
私自身もメイクが好きで、眉の描き方やアイカラーの塗り方など、研究を重ねて手にした自分なりのスタイルがあります。
その結果、細かい計算なしに自分の手クセに頼ったメイクをしても、だいたい満足な仕上がりになり、新色のコスメの使い方に迷うこともありません。その一方で、そんな自分の「常識」の範囲でのメイクは、何をやってもだいたい仕上がりが予想できてしまい、大きな感激もないのですが……。
『長井かおりからのお知らせです そのメイクの常識、ちょっと前に変わってます!』は、そんなメイクの“頭打ち感”を打破してくれる一冊。
たとえば、この写真のメイク。十分美しく見えますが……。
こちらはグッと今っぽく、さらにキレイ!
2枚の写真で変わったのは、ある一ヵ所のメイクだけ。モデルさんも、他のパーツのメイクも、衣装も髪型も同じです。
そのメイクも、どこがどう変わったのか、種明かししてくれないとわからないくらいのさりげない変化なのに、明らかに、こちらのほうがステキに見える!
今のメイクの「なにかひとつ」を変えるだけで、「自分メイク」は見違える。ヘア&メイクアップアーティストの長井かおりさんが、そんなテクニックをたっぷり教えてくれます。
そのままでも差し支えないけれど
もし、今のメイクにしっくりきていないなら、Chapter 1の「1ヵ所変えるなら目元です!!」の言葉通り、眉とアイシャドウの使い方を変えましょう。顔の雰囲気は大きく変わります。
まずは、悩む人の多い「眉」。この本には6タイプの眉が登場します。このままでも、どれも十分キレイに描かれているように見えますが……。
ここでは「毛並み感のない、のっぺりブラウン眉」のアップデートを見てみましょう。
変わったのは、「眉」1点だけ。しかし、「とりあえず眉はブラウン」という常識にそった「Before」からバージョンアップされたものと比べるとその差は歴然。「After」は抜け感がありつつ、きちんと美しく見えるだけでなく、自眉がきれいに生え揃っている「素材の良さ」まで感じさせることができています。
「眉の色は髪と合わせる」「グレーの眉は顔がキツく見える」といった常識や思い込みから、眉アイテムはブラウンをメインにしていた私は、すぐにグレーのペンシルを買いに走りました。
ペンシル単体で仕上げるわけではなく、他のアイテムと組み合わせるのですが、これもまた意外な色味なんです。本書で「こんなに変わるんだ!」と実感できなければ、自分ではまず選ばないアイテムでした。理想のヌケ感の眉が描けるようになり、とても気分が上がりました。
また、アイカラーとは「目のキワを締めるもの」と思っていましたが……。
明るい目のキワは、決してぼんやりした目元になることなく、顔に透明感まで宿してくれます。眉下を暗く、目のキワを明るくするのは、今までのメイクの常識にはない塗り方。しかし決して奇抜な仕上がりにならず、大人にしっくりくるメイクになるのが不思議です。
「Before」のオーソドックスな塗り方でも美人に見えますが、今っぽさ、フレッシュさなら断然「After」ではないでしょうか?
このように、メイクのテクニックの常識や思い込みを上書きしてくれるだけでなく、持って生まれた「自分という素材」にも囚われすぎなくていいと教えてくれる「イエベ/ブルベ、気にしなくていいです」といったコラムもメイクをより楽しくしてくれます。
同じモデルさんに施したイエベ風/ブルベ風メイクの仕上がりを見れば「好きな色を使って、もっと「自由にメイクしていいんだ!」と気分が上がるはず。
変化に寄り添い続ける
これまでのセオリー通りのメイクが悪いわけではありません。それも十分美しい。でも、「常識」「鉄則」と思っていたものを少し更新するだけで「自分メイク、まだまだいけるな」と思えるはず。
たった一つの微差でも、顔全体の印象はこんなに変わる。「変えたほうが素敵なんだ!」と写真で納得させてくれる本書は、これから先も私たちに訪れるさまざまな変化に寄り添い続けられるよう、背中を押してくれると思います。
レビュアー
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
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