心理学って何？　こどもから大人まで、正解のない時代に役立つ心理学の知識

昭和、平成、令和と時代の移り変わりとともに変化した一つに、一人ひとりの「こころ」が尊重されるようになってきたと感じています。ただその「こころ」について学ぶ機会がないまま、私たちの多くは自分や相手の「こころ」に振り回されているようにも思います。

「こころ」とは何なのか、それを研究している心理学という学問を「日常生活を送る私たち」にもわかりやすく紐解いてくれる『イラスト学問図鑑　こども心理学』が2024年3月6日に発売されました。

なお、イラスト学問図鑑シリーズは心理学の他に『こども経済学』、『こども哲学』も同時発売されています。

本書の構成はいたってシンプル。見開き1ページで1つのキーワードが解説されています。



まず右ページには取り扱うキーワードに対する問いとその解答が簡潔にまとまっています。そして左ページでより詳しい説明を読むことができます。左端には、該当ページで取り扱ったキーワードの専門用語とその用語に関連する学者の名前が記載されています。

図鑑ですから、気になる専門用語を見つけてそのページから読んでみるというのもいいと思います。また、左ページの説明が長いなと感じて本書を閉じてしまいそうならば、右ページだけをどんどんと読み進めるのもアリです。読みながら、「へぇ！　そうなんだ！」とか「え？　なんで？」と感じてから左ページの説明を読むことでより一層興味が沸くことでしょう。

さて、本書は心理学を紐解くきっかけとして五つの章立てが用意されています。
1. 人付き合いがうまくなる心理学
2. 自分と相手のことがわかる心理学
3. 勉強のやる気が出てくる心理学
4. 人間の怖いクセがわかる心理学
5. 幸せになるための心理学

心理学を学ぶと、人付き合いがうまくなって、勉強もできるようになって、幸せにもなれる!?　なんとも興味深いと思いませんか？

本書の監修をされた小塩真司さんは冒頭でこう述べています。

人間の活動であれば、どのようなことであっても研究の対象となるのが、心理学という学問です。（中略）心理学について知ることは、私たち自身について理解を深めることも意味しています。

単に「こころ」を知るだけではなく、私たちの活動すべてを心理学という学問から紐解くことができるというから驚きです！　実際に本書を読んでみると、第3章の勉強のやる気が出てくる心理学という項目はとても興味深いものがありました。

例えば「マジカルナンバー7±2」という言葉。これは人間の短期記憶は一度に7±2（5~9）個しか覚えられないという理論だそうです。でもこれには抜け道（？）があり、単に数字の羅列なら5~9個までが限界ですが、数字を組み合わせた「語呂」を作れば5~9個の語呂を一度に覚えることができるという理屈になります。



思い返すと学生時代、暗記が得意な生徒がクラスに一人や二人必ずいませんでしたか？　彼らは覚えたい単語を何かに紐付けながら記憶していくのが得意だったように思います。私はというと、愚直に青いペンで覚えたい単語をノートに書き殴る派でした。でも暗記は苦手で、歴史や英単語のテストには苦い思い出が残っています。
そういった「努力が実らない経験」が続いてしまい、勉強に対してやる気を無くした時期もありました。実はこれも「学習性無力感」という理論が当てはまるそうです。




「勉強ができない」と安易に言ってしまいがちですが、心理学という観点から勉強という行動を見ることで「できない理由」に気づくことができます。そして理由を知ることは行動を変えるきっかけに繋がるでしょう。

「心理学」と聞くと「こころ」の学問であり、どこかフワッとした抽象的な印象がありました。しかし本書で知る心理学はどれも自分に置き換えて考えられる身近なテーマばかりです。

“こころ”がわかれば生き方もコミュニケーションもうまくなる！

帯に書いてあるこの言葉に半信半疑でしたが、本書を読み終えて納得！　身に覚えがあることばかりだからこそ、読み終わった後の私はちょっとレベルアップした気分になりました。

私たち人間の特性を学問として客観的に捉えることは、自分の心を守ることにも繋がると感じています。多様性の考えが浸透し、「こころ」を大切にすることが尊重される時代になった今こそ全ての大人たちにも読んでほしい一冊です。