デジタル時代の今、SNS上は美しく加工された顔写真であふれています。人が顔を認識する仕組みなどを研究する著者の中野珠実さん(大阪大学大学院教授)は、こうした現状を「技術革新が生み出した現代病なのかもしれない」と言い表します。では、なぜ人間は“理想の顔”に取り憑かれるのでしょうか?
本書はそのカギとなる「脳のはたらき」に最新科学で迫る一冊です。自分の顔を美しく見せようとすることと関わりのある脳の「報酬系」の仕組みや、顔の価値を“あるもの”と同じようにとらえる脳の部位など、顔と脳の密接で精巧な関係が次々と登場します。さらに、AIやアバターなどが発展する未来で顔の持つ役割はどう変化していくのか、中野さんは考察を深めていきます。
本書を通して浮かび上がってくるのは、他者と自分をつなぐ上での顔の重要性と、それを支える脳の多様で複雑な機能の存在です。
鏡に映る「自分の顔」が持つ新たな意味に、あなたは驚くかもしれません。
──学芸第二出版部 出口拓実
レビュアー
学芸第二出版部