「声はどこから生まれるの?」に答える絵本
言葉を話すとき、歌うとき……。私たちの体の中ではどんなことが起きているか知っていますか?
『絵本 うたうからだのふしぎ』は、体にとりこまれた空気が声や歌になるまでを、わかりやすく解説した絵本です。教えてくれるのは、気鋭の音声学者・川原繁人先生と、『永遠に』『ひとり』などのヒット曲を持つ「ゴスペラーズ」のメンバー・北山陽一さん。可愛いまんがは『絵本 はたらく細胞』シリーズの作画などを手がける牧村久実さんによるものです。
私たちが何気なく出している「声」。それはどこから生まれるのでしょう。声が人に「歌」となって届いたり、会話でコミュニケーションできるのはなぜでしょう。私たちの「声」にふと感じる「ふしぎ」をやさしく解き明かしてくれる一冊です。
「声」が生まれるまでの旅
この本は、人のからだから声や歌が生まれる過程を、子どもから大人まで楽しめるまんが形式で読ませてくれます。
主人公は、“空気”。ステージ上にいる男の子は、これから大勢の人の前で歌おうとしています。とても緊張していますね。
ぼくも声に
なれるかな?
空気は、男の子のからだに入ってみることにしました。
ここは
どこだろう?
空気が到着したのは「肺」。ここから、空気が体内のさまざまな器官を通り、「声」になる旅が始まります。まず空気が出会ったのは、肺を動かす筋肉たちです。
筋肉たちは、自分では動けない肺を縮めたり広げたりして、空気を上に押し上げます。
いろいろな筋肉が協力し合って、空気は「声帯」に向かうことができるのです。
私たちは口やのどだけでなく、楽器のようにからだ全体を使って声を出しているとこの本は教えてくれます。
高い声や低い声、その音階を制御するからだのしくみ、「あ」と「い」の発音を分けるしくみなど、「声が生まれる」過程には、からだのさまざまなパーツが関わっているのです。
この本のタイトルにある「うたうからだ」の通り、全身を使って声を生み出す高性能な楽器のような、私たちのからだの一面を知ることができます。
一緒にやってみたくなる!
空気が声になる旅の途中にあるのは、川原繁人先生による「さらにくわしく説明するよ」のコーナーです。川原先生は慶應義塾大学言語文化研究所教授で、言語学、音声学を専門としている「声」のプロ。ここでは、まんがパートで紹介された知識の、さらなる深掘りができます。
音と空気の関係を説明するときは
まず、みなさん「ぱぱぱ」とくり返し発音してみましょう。両唇が閉じるのを感じられると思います。つぎに、「たたた」と発音してみましょう。舌先が上がったり下がったりしませんか?
また空気の流れで音を作る仕組みを説明するときは
2枚のうすい紙かティッシュを平行になるように手で持ちます。2枚の間に息を吹き込んでみましょう。
といった具合に、試してほしい発音や動きが出てきます。これは、読むだけでなく、ぜひ一緒にやってみてほしいのです!
まんがの中の空気や筋肉たちが何をしているのか、より分かりやすくなります。これは大人の私にとっても新鮮で「確かにそう!」「ほんとだ!」と楽しい驚きがあることばかりでした。こんな複雑な動きを意識することなくできて、声や歌を生み出す私たちのからだには、実はすごい奇跡が宿っているのですね。
紙の本には、QRコードが記されていて、北山陽一さん作詞作曲の『うたうからだのふしぎ』を聴くことができます。美しい声とメロディを楽しみながら、私たちの歌声や話し声は、からだ全体から生まれる素敵な個性であることに、想いをはせてみてはいかがでしょうか。
レビュアー
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
X(旧twitter):@752019