「おつかれさまです」。わが社を行き交うメール1行目はほぼこれが定型ですが、欧米人にこう書いたら激怒されかねません。そのくらい「疲労」することは欧米では恥であり、医学の研究対象にもならないそうです。だから疲労の科学は日本が世界一進んでいて、その日本のトップランナーが、かつてない新説を披露したのが本書です。
まず驚くのは、疲労とウイルスには密接な関係があることです。疲れると唾液中にヘルペスウイルスが放出されるので、疲労度の測定も可能だそうです。うつ病も、じつは病的な疲労が亢進して、脳内に炎症を起こした状態であり、その原因はウイルスにある、つまり「心の弱さ」はうつ病の原因ではなかったのです! 近藤氏によるうつ病の原因遺伝子「SITH-1」(シスワン)の発見は、ノーベル賞級ともいわれています(なおSITHは『スター・ウォーズ』の暗黒卿にちなんだ命名です笑)。
お疲れの方はぜひ読んでください!
──学芸第二出版部 山岸浩史
レビュアー
学芸第二出版部