今日のおすすめ
「戦争」の足音に慣れてはならない。 ウクライナ「命の絵本」
(作・絵:オレクサンドル・シャトヒン)
この絵本には「言葉」がありません。泣き叫ぶ声も、嘆きや怒りの言葉も。けれど、だからこそ伝わってくるのです。言葉を超えた叫び、嘆き、怒り、絶望、そしてその果ての希望まで。
戦争によって、家族とともに故郷を追われた絵本作家のオレクサンドル・シャトヒンは、このあまりに理不尽で、胸を押しつぶすような現実を、ウクライナの国旗の色である青と黄色、さらには絶望と恐怖を表す黒、そして「命」の象徴である蝶によって描きだしました。
この絵本は、ウクライナで起きていることに無力感を覚え、しだいに慣れてしまってきているわたしたちに、もう一度、自分の身にも起こりうるものとして感じさせる力をもっています。「戦争」の足音に慣れてしまわないように、この絵本の「言葉」を紡ぐのはわたしたち自身なのです。何度もページをめくって、絵を“読んで”みていただけると嬉しいです。
──新事業チーム 吉田幸司
少女の目を通して戦争を描いた言葉のない絵本。青い空を背景にした黄色い蝶を象徴として、そこに希望を見いだしていきます。彼らの国旗の色を使って、オレクサンドル・シャトヒンは、ウクライナで起きている戦争への感情を深くゆすぶります。そして戦争の悲惨な現実から、平和と未来の希望の場所へと旅する際に考えるべき、強力な視覚的メタファーに満ちた物語をわたしたちに託してくれました。
*本書の売り上げの2%は、ウクライナの子どもたちに本を贈る“Universal Reading Foundation”に寄付されます。
レビュアー
新事業チーム
関連記事
-
2022.09.15 レビュー
ウクライナ救援のため、世界的作家・ロダーリの絵本を緊急出版!
『キーウの月』作:ジャンニ・ロダーリ 絵:ベアトリーチェ・アレマーニャ 訳:内田 洋子
-
2022.07.21 レビュー
「写真の少女」のその後の人生──ベトナム戦争から50年
『「ナパーム弾の少女」五〇年の物語』著:藤 えりか
-
2023.08.09 レビュー
『窓ぎわのトットちゃん』では描かれなかった、トットちゃんのもうひとつのお話が絵本になりました。
『トットちゃんの15つぶのだいず』原案:黒柳 徹子 文:柏葉 幸子 絵:松本 春野
-
2022.06.03 レビュー
プーチンとは何者なのか? この戦争が意味するものは? 世界の賢人12人の論考
『世界の賢人12人が見た ウクライナの未来 プーチンの運命』編:クーリエ・ジャポン
-
2023.01.11 レビュー
南果歩さんが被災地で朗読してきた詩が、 一冊の絵本に。
『一生ぶんの だっこ』文:南 果歩 絵:ダンクウェル
人気記事
-
2024.04.02 レビュー
ホスト、立ちんぼ、トー横……慶応女子大生が歌舞伎町で暮らし取材してきた生の声
『ホスト!立ちんぼ!トー横! オーバードーズな人たち ~慶應女子大生が歌舞伎町で暮らした700日間~』著:佐々木 チワワ
-
2024.04.01 レビュー
人間力がすごすぎる、栗山英樹さんの熱い人生哲学
『信じ切る力 生き方で運をコントロールする50の心がけ』著:栗山 英樹
-
2024.03.28 レビュー
理系に強い子どもに育てるヒント満載! 数学センスを磨く新しい勉強法
『中学数学で磨く数学センス 数と図形に強くなる新しい勉強法』著:花木 良
-
2024.03.26 レビュー
どこにでもいる!? 人間関係の悩みを生み出す人の生態
『職場を腐らせる人たち』著:片田 珠美
-
2024.03.27 レビュー
SNSでことばの事故を起こさない方法とは!? 日本語ラップは言語芸術!?『日本語の秘密』
『日本語の秘密』著:川原 繁人