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若冲、応挙……家光まで! 江戸時代に学ぶ、自由で楽しいお絵かき指南書
(著・編:府中市美術館)
絵のうまいヘタは、持って生まれた才能によるところが大きいとずっと思っていましたが、「まえがき」にこんなことが書いてありました。
絵が苦手な人は本物を思い出して忠実に描こうとするのに対し、得意な人は既にイラスト化されたものを思い浮かべて真似るのだと。
府中市美術館公式図録である『江戸絵画お絵かき教室』は、江戸時代の画家がどのようにして絵を描いたり学んだりしたのかを紐解きつつ、私たちも挑戦できる応用編もあり、どこを読んでも面白い!!
【葛飾北斎も利用した『鳥獣略画式』】
江戸時代後期の浮世絵師・葛飾北斎の『北斎漫画』(全15編)を初めて見たとき、まるでイラスト集だ!!と思ったのと同時に、絵師もこうした絵手本を参考にしたことを知り驚きました。
その北斎も利用したというのが、津山藩(岡山県)の御用絵師・鍬形蕙斎(くわがたけいさい)の『鳥獣略画式』。
「大まかな形の中に頭や体や足を押し込めていて、その無茶ぶりが面白い」という解説に思わず笑ってしまいました。
この本に限らず府中市美術館の図録は、時代背景を含めた丁寧な情報が柔らかい表現で、時にはお茶目に書いてあるので、すごく楽しいのが特徴です。
【江戸時代の画家は何から絵を学んだのか?】
実は、国宝『鳥獣戯画』を模した作品がいくつもあると金子信久先生の著書『鳥獣戯画の国』で知ったとき、人の作品をパクるなんて!!と感じたのですが、それも勉強のためだとわかり、なるほど!と思ったことがあります。
今のように写真がない時代に、先人たちはどうやって絵の勉強をしたのか?
ここでも真似るということが鍵となっており、第3章の「江戸時代の画家はどうやって学んだのか?」では、1.中国に学ぶ、2.雪舟に学ぶ、3.粉本(ふんぽん)に学ぶ・粉本を作る、4.オランダ本に学ぶ、と続いて5番目に出てくるのが、5.応挙に学ぶ。
江戸時代中期から明治にかけて、最も真似をされた絵師、円山応挙(まるやまおうきょ)。
中でも『鯉図』は、ここまで似せていいの?と心配してしまうほどそっくり。
こうして並べられると、やっぱり応挙って凄い!!と思うし、みんながお手本にしたという話もうなずけます。
【応挙の子犬を手本にお絵かき教室】
その応挙が描く美人画も、透明感のある美しさに溢れていますが、応挙といえばやはり子犬。
なんと「お絵かき教室」のページでは、応挙の子犬の描き方を学ぶこともできます。
「お絵かき教室」は12日目まであり、劇画風の派手な絵が印象的な歌川国芳(うたがわくによし)の絵を題材にしたり、裏彩色や水中画があったりと、さまざまな技法を学べます。
でも今回、私が特に興味を持ったのは、江戸時代の絵具でした。
【江戸時代の油絵具はどうやって作るのか?】
実際に粉末状の絵具を見たとき、あまりの美しさに見入ったことがあるのですが、実はそれらを使って色を出すこと自体、大変な作業であるということを今回初めて知りました。
なぜなら、鉱物から取り出したり、化学反応を利用したりする日本古来の絵具は、粒子の大きさや比重が異なり、混ぜても分離してしまうからです。
もっと大変なのは、江戸時代の油絵具。鎖国下であったため、見よう見まねで作ったという油絵具の再現は、まるで料理の下準備(笑)。
こうした絵具だけでなく、紙や絹、墨の種類や金箔、掛け軸の表具にまでスポットライトを当てているので、作品を作り上げるまでの試行錯誤や努力に思いを馳せることができ、絵を見る楽しさも広がりました。
この図録を一言で言うなら、とにかく“盛り沢山!! ”
私が今までに感じたことや疑問点が、この1冊ですべて解決しました。
それぐらい中身が濃くて面白い図録であるとお伝えしておきます!!
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp
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