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藤子不二雄A、古今亭志ん朝……各界の365人による365の名言【日めくり一日一語】

2023.01.24
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ほとんどの名言集や日めくりカレンダーは、一人の人物の言葉で綴れることが多いのですが、この本は『週刊現代』に掲載されたインタビューや記事の中から選び抜かれた365人による名言。

だから、作家、政治家、実業家、スポーツ選手、俳優、タレント、歌手、芸人、映画監督、学者、さらには警察官僚、福島第一原発所長など、とにかく多彩な人々が登場します。

 【人気漫画家・藤子不二雄Aの名言】

一日一語なので、まずはパラパラとめくっていたら、ハッとする名言がありました。

それは、『笑ゥせぇるすまん』『プロゴルファー猿』『忍者ハットリくん』など多数のヒット作を生み出した人気漫画家、藤子不二雄A氏の言葉。

これは、藤子不二雄A氏のアシスタントだった、えびはら武司氏が漫画家として独立する際に贈られた言葉ですが、これと全く同じ言葉を私も言われたことがあります。 

どんな仕事も断っちゃダメだよ

 ここでは、「出会い」や「人づきあい」を大切にしなさいという教えですが、私の場合は、フリーランスはたとえ抱えきれなくても絶対にオファーを断るな、断ったら最後、二度とそこから依頼は来ないぞという戒めでした(笑)。

 ページの日付の下の「星マーク」はその人の命日を、「ろうそくマーク」は誕生日を示します。

名前の下の「1934年〜2022年」は、生まれた年と亡くなった年で、改めて藤子不二雄A氏が昨年亡くなったことを思い出しました。

 【時代を超えて蘇る名言】

この本には、現役バリバリで活躍している有名人だけでなく、すでに亡くなっている方も載っています。

中でも、広島カープの津田恒美(つだつねみ)投手が32歳という若さで、脳腫瘍で亡くなった時のこと、脚本家で直木賞作家の向田邦子(むこうだくにこ)さんが取材旅行中の飛行機事故で亡くなったことなど、当時の記憶が一瞬で蘇りました。

そして、今日まで生きてきた自分をちょっぴりねぎらいたくなりました。

その一方で、20年以上前に63歳の若さで亡くなったあの人も載っているかなと、1月1日から12月31日までの一覧で探してみると……、

 

ありました!! 私の好きな落語家・古今亭志ん朝(ここんていしんちょう)の名言が!!

芸は消えるからいいんだ。いいな、と思っても、
それは二度と聴かれない。そこがいいんです 

志ん朝の落語を聴いた時、これが名人というやつか!!と衝撃を受けたのが3年前。寄席で聴くことはおろか、動画もあまり残っていないことを残念に思っていたのですが、こんなことを言われちゃぁ仕方がない。芸が消えることは、ある意味、志ん朝の美学だったのかもしれません。

このように、すでに亡くなっている人の考えや言葉を知ることができるのも、この本の良さですが、さらにいいのは友人、家族、後輩、弟子などが本人から聞いた話が載っていることです。

有名人のインタビューは通常1時間ぐらいですが、よく喋(しゃべ)るわりに核心に迫るキーワードが出てこない方もいて、名言を引き出すのは実は簡単なことではありません。

しかし、ここに出てくるのは、長い時間を共に過ごした人だからこそ知り得た選りすぐりの言葉であり、その人の人生を変えた名言なのです。

冒頭の「はじめに」に、こんな文章が載っていました。

どんな言葉もそれ自体ではたいした意味を持ちません。それを口にした人間の経験と生き様があって初めて輝くのです。

365人による365の名言は、やはり重さが違うなと感じた1冊でした。

  • 電子あり
『日めくり一日一語 あのひとの声が聞こえる 人生が変わる365日の名言』書影
編:週刊現代編集部

作家、芸能人、政治家、経済人、スポーツ選手。一線で活躍する著名人たちには、人生に裏打ちされた「ことば」がある。
田中角栄、白洲次郎、ちばてつや、美空ひばり、市川團十郎、ジャイアント馬場、高倉健、笠智衆、いかりや長介、金丸信、井上ひさし、三波春夫、三國連太郎、五島慶太、堤康次郎、北杜夫、寺山修司、西城秀樹、小渕恵三、相田みつを、、田辺聖子、梶山静六、鶴田浩二ほか、総勢365人の言葉とエピソードを一日一人一ページずつ楽しめる。
自分で楽しむのはもちろん、大切なあの人へのプレゼントとしても最適な1冊です。

本書序文より

本書は、『週刊現代』に掲載された多くの方々のインタビューや特集記事から、印象的な言葉を選りすぐった、日めくりの名言集です。
名言といっても、古典的な格言集に出てくるような大仰な言葉ばかりではありません。なかには「ボケ、ヘタクソ」「黙って食え」など、いったいどこが名言なんだと戸惑われるような言葉もふくまれています。
しかし、そんな言葉も、必ず発せられた背景があります。芸能、スポーツ、政治や経済の世界の第一線で活躍した人たちが、思いをもって口にしたものです。
それらの言葉の向こう側には、人生があります。そして、努力や成功、喜びや悲しみ、悔しさ、愛情、無常観といった人生を構成する大切なものが渦巻いている。どんな言葉も、それ自体ではたいした意味は持ちません。言葉を発した人の経験と生き様があって初めて輝くのです。
この本のページをめくれば、たくさんの方たちの人生経験のエッセンスを「つまみ食い」することができます。一日にひとり、ひとこと――365日、つまみ食いを続けたあかつきには、きっとあなたの人生が美しく素敵な色合いに変わっていることでしょう。

週刊現代編集部

レビュアー

黒田順子

「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。

公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp

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