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脂肪を落としたければ、「何を」食べるかより「いつ」食べるかが重要!

2022.11.18
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ダイエットも健康も「時間割」がある

「昔と同じことをやってもやせない」「何をやってもやせない」……。太りやすい人がいたり、年々やせにくくなるというのは体質によるものだと思っていた。しかし、そこに「時間」という視点が加わると、少々話は変わってくる。「時間栄養学」を研究する、柴田重信さんは、著書『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』でこう述べる。

ダイエットのため、「何を」「どう」食べるか(食べないか)という情報はたくさんあっても、「いつ」食べたらいいのかということはあまり意識されていません。一日の中で「いつ食べると太りにくく」「いつ運動するとやせやすいか」という時間の視点があれば、もっと方法も効果も違ってくるのです。

「時間の視点」とは、人体に備わっている「体内時計」の働きを踏まえて、食や睡眠を管理することだ。体内時計を意識したことがなくても、本書のチェックリストを見れば、自分の体内時計の状態を知ることができる。私もここでいくつか「はい」にチェックが入ったが、読み進めていくうちに「あの不調は体内時計のせいなのか」と答え合わせができた。


睡眠と覚醒、食といった身体活動も、体内時計がコントロールしており、体内時計と生活リズムのズレをなくしていくことは、肥満をはじめ生活習慣病の予防として注目されているという。ダイエットと健康にも「時間割」があるというのだ。本書には「プチ断食」のための知識はもちろん、「納豆は朝と夜で効果が変わる」「ワクチン接種は午前中が効果大!?」など、ダイエットと健康、時間にまつわる知識と実践法が満載だ。思わぬ発見ばかりで、楽しい読書経験だった。

「プチ断食」でやせる人、やせない人

「時間の管理によるダイエット」といえば、「プチ断食」だろう。「14時間断食」「16時間断食」などとも呼ばれている。

食べる時間帯を制限するプチ断食では、朝食の時間が決まれば、一日の最後の食事を何時までに食べ終わるかが決まります。
14時間断食ならば、午前8時に朝食をとった場合、夕食の時間は午後6時までとなり、それ以降は絶食となります。

このダイエット法は、食べる時間帯以外の制約が少なく、取り組みやすい。ネットでも「ガマンせずやせた」「すぐやせた」という声を聞く。しかし、あまり効果を実感できない人も少なくない。私も、次のようなルールでプチ断食をしたことがあるが、体重はそれほど減らなかった。

・食事をとるのは、昼の12時から20時までとし、毎日16時間は絶食する。朝食は食べない。
・食べる時間だけを守り、糖質や脂質は特に制限しない。しかし間食は控える。
・1日の総カロリーは、一応チェックする。

減った体重は1ヵ月で約1キロ。ゆるいダイエットとしては十分だが、朝食もおやつも食べない空腹感のわりに、誤差のような減り方に思える。1キロなら、1週間程度で落としている人もいるのに、この差は何なのだろう?

第1章「体内時計に合った断食で、もっと楽してやせられる」は、この疑問をしっかり解消してくれた。やせたいなら、やみくもに食べる時間を制限するだけではあまり意味はない。この章ではプチ断食でやせる人、やせない人の生活の差に加え、時間栄養学的「プチ断食のポイント」がまとめられている。といっても、それはガマンとはほぼ無縁だ。何日かそのポイント通りに過ごしてみたが、以前のプチ断食より格段に楽なのに、じわじわと体重が減ってきている。「プチ断食なんて効果がない」と思っている人は、ぜひ読んでみてほしい。

糖質や間食は敵なのか

私の経験上、糖質制限ダイエットはすぐやせる。辛(つら)いことと言えば、お菓子が食べられないことくらい。米などの主食のほか、糖分を多く含む甘辛い味付けも控えれば、揚げ物を食べてもやせる。でも、「太りたくないから、大好きなお米を食べない」。一生それでいいんだろうか……?
この答えは、第3章「『いつ』『何を』食べれば心も体も健康か」にある。

時間栄養学の立場からすると、朝食では適量とり、夕食では控えめにするなど、体が糖質を必要とするタイミングに糖質をとり、糖質をとると肥満になりやすいタイミングにはとらないようにする、そんなメリハリが必要だと言えます。

プチ断食をするにしても、「糖質をとってもいいタイミングがあり、その時間ならむしろとることを推奨する」ということを、理由も交えてキッチリ説明してくれる。「食べてもいい」ではなく「食べるべき、ただしこのタイミングで」と分かれば、食べることに罪悪感を持たなくてもよくなる。当たり前かもしれないが、悪者扱いされがちな糖質も体に必要な栄養素であり、美と健康の敵ではない。

また、食事をしたはずなのに甘いものを欲してしまう「別腹」や間食には罪悪感を抱きがちだが、そのタイミングで「食べていいもの」がある。深夜の食欲や、間食が全否定されず、「そういう時に食べるといいもの」を知ることで減るストレスが確かにある。「時間の視点」があれば、やみくもなガマンや厳しい制限はダイエットに必要ないことを知れたことは、思った以上に心を軽くしてくれた。

時間を味方につけて、制限だらけのダイエットから脱却しよう

本書ではこういった「ダイエットと、食べるタイミング」だけでなく、睡眠の質の改善や、効果的な運動についてなど、健康全般において「時間を意識する」ことのメリットを知ることができる。

タイトルに「やせたければ」ではなく「脂肪を落としたければ」とあるが、そのとおり「体重が減るのではなく」、「健康」という美しさを手に入れるための方法が書かれていると感じた。生活の上での厳しい制限はほぼなく、「できる」「続けられる」ことばかりだ。本書にあるとおりにカフェインや糖質をとるタイミングを変えるだけでも、すぐに変化を実感することができるのがうれしい。時間を味方につけることは、制限だらけのダイエットから脱却する方法でもあるのだ。

  • 電子あり
『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』書影
著:柴田 重信

「昔と同じことをやってもやせない」「何をやってもやせない」は、体内時計と食の関係を知らずダイエットしていたから!
「昼間より、夜遅くに食べるカップラーメンはなんて美味しいんだ!」と感じるのも、体内時計に影響されているとご存じでしたか?
2017年、体内時計のメカニズムに対する研究がノーベル医学・生理学賞を受賞しました。すべての細胞に時間遺伝子があり、その影響がどんどん解明されています。
私たち生き物は細胞レベルから、地球の24時間の自転に合わせ生きています。脂肪のたまりやすい時間、筋肉のつきやすい時間、体温や血圧の変化や元気になる時間も24時間で変化していくのです。
食事も、いつ、何を食べると体にいいのか、当然時間によって効果が変わります。時間栄養学の知識を身につけることで、より効果的に肥満を防ぎ、生活習慣病にならない生き方ができるのです。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019

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