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女優、漫画家、宇宙飛行士……さまざまな分野で活躍する女性たちが語る27歳だったころ

2022.05.19
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輝く25人からのエール

年下の友人たちから悩みを相談されることが増えた。自分にも悩みはあるが、それは彼女たちの「先の見えないつらさ」とは違い、「やることは見えていて、そこに向けて進む」途中の苦しさという感じだ。でも、20代後半は本当によく悩んだ。友達と会えば「もうアラサーだよ」と、年を取ったことを嘆くこともあった。今思えば、それでも無限の選択肢が目の前にあったし、本当に自由でなんでもできた。あの頃の悩みは、選択肢が多すぎたゆえの迷いだったのかもしれない。

『わたしたちが27歳だったころ  悩んで、迷って、「わたし」になった25人からのエール』は、雑誌「with」の連載「わたしが27歳だったころ。」をまとめた1冊だ。「with」読者層の平均年齢である27歳に向け、いろいろな分野で活躍する女性たちに当時の話を聞いている。迷いの多い読者の背中を押してあげられるかもしれない。編集部のそんな思いと、「25人からのエール」というフレーズに惹(ひ)かれて本を開く。



目次の時点でもうグッときてしまう。
俳優からクリエイターまで、25人の女性たちが歩んできた人生と、そこから得た学びがリアルに語られている。この本は最初から通して読んでもいいし、心惹かれた見出しや、あこがれの人の記事から読み始めてもよい。どこを開いても、およそ1500字ほどの文章にそれぞれの「27歳だったころ」が凝縮され、心に刺さるエピソードたちがきらめいていた。

ビジョンや夢がなくたって

「私には『夢』なんてないかも」と思っている人に読んでほしいのは、『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』『MIU404』などの大ヒットドラマを手掛けている脚本家の野木亜紀子さんのページだ。

フィクションを作りたかったのに、成り行きで受かったドキュメンタリー制作会社でノンフィクションを作ることになった野木さん。あまり興味が持てない仕事をこなすうち、仕事がしんどくなり、初心に戻って脚本家を目指すことに。そのためにテレビの仕事をすべてやめたのは「28歳か29歳の頃だったと思います」。それから、「フジテレビのヤングシナリオ大賞で入賞する」という目標を達成するまで、6年かかったという。

その6年間は応募原稿を書きながら、いろいろなところで働きました。アルバイトで日銭を稼ぐ生活で、肉体労働もしましたし、派遣でオフィスワークも経験しましたよ。(中略)
いろんな職場で働いた経験は、今、脚本を書く仕事に活きていると思います。日本のドラマって、女同士のギスギスした関係を描きたがるけど、職場で女同士協力して、裏表なく良い関係を築いている人たちをたくさん見ました。

「やりたいことがあったのに、成り行きでほかの方向に進む」ことは、年齢の面でも焦(あせ)りを感じ始める27歳の目には「それでいいの?」と映るかもしれない。30歳を目前にキャリアを捨て、非正規で働きながら夢を追うのも不安を感じるだろう。しかし、野木さんのドラマには「こんな人いないでしょ」というキャラクターが出てこない。どんな奇抜なキャラクターも、ドラマが終わった後も、本当にどこかで生きていそうなリアルさを感じる。あのリアリティがこんな経験から生まれてくるのなら、何事も「遠回り」ではないのかもしれない。野木さんは言う。

今、目指したいビジョンや夢が何にもなくたって、まだまだこれからじゃん!

そして、「当時のわたし」として、野木さんがカラオケで熱唱する写真が掲載されている。20代後半は極貧生活だったという野木さん。「銀行口座に残っている400円が欲しくて、手元の600円を入れて1000円にして引き出すとか、みみっちいことをして生き延びていました(笑)」なんてエピソードも披露してくれている。

本書は連載陣がとても豪華なのにもかかわらず、誰もカッコつけたうわべだけの話をしておらず、こういった「素」の語り口を見せてくれるのがいい。このほかにも「ストレスの発散方法を知らず、飲んでばかり」「自分が売れるにつれて金銭感覚が合わなくなってきた彼氏と、仕事の前に泣きながら別れ話。そのまま仕事に行かなくてはいけなかった」など、27歳前後の女性ならどこか覚えのあるような辛いエピソードを語る人も多い。今、順調に見えてキラキラ輝いている大人の女性たちも、何の障害にもぶち当たらなかった、なんてことはないのだと思うと、勇気をもらえる気がする。

・27歳ってなんでしんどいの?

ピンポイントで「27歳」にエールを送るこの本。「27歳」って、どうしてしんどいことばかりなんだろう。西洋占星術には、「28歳成人説」があるという。

“28歳が成人”と言われるのは、土星が、約28年かけて太陽の周りを一周するからだとか。占星術における土星の役割は、要所要所でその人の人生を豊かにするための"課題"を与えること。27歳という年齢が、ほとんどの人にとって生きづらい時期なのは、成人一歩手前の、最終課題をクリアするタイミングだからなのかもしれません。

「現代人は実年齢×0.7くらいの精神年齢。昔の人に比べて幼い」という話を聞いたことがある。占星術は統計学なので、「27歳は成人一歩手前」というのも、なんとなく納得だ。でも、当時は「もうすぐ30歳なのに」という焦りがあったし、年齢よりずっと子供っぽい自分のことも嫌だった。あの頃の自分に「あんまり心配するなよ」と、この本を手渡してあげられたらな、と思うのだ。

大ヒットマンガ『ハッピーマニア』などを手掛ける安野モヨコさんは、27歳に向けてこんなエールを贈る。

まだまだ体力があってダメージを負っても回復できる年齢。次々に試練がやってきた時はどんどん乗り越えながら、「どうしよう! こんなに乗り越えてたら絶対幸せになってしまう!!」と考えるようにしてました。この考え方、おすすめです!

  • 電子あり
『わたしたちが27歳だったころ  悩んで、迷って、「わたし」になった25人からのエール』書影
編:with編集部

仕事、結婚、出産…………人生は選択の連続。
さまざまな分野で活躍する先輩たちは、27歳だった頃、何に悩み、今何を思うのか──。
俳優、映画作家、脚本家、宇宙飛行士、映画字幕翻訳者、ドラマプロデューサー、など活躍する女性たちが語る「わたし」ヒストリー。


【悩んで、迷って、「わたし」になった25人からのエール】

1菅野美穂(俳優)「“焦ってよかった”と思えるまで走り続けて」
2永作博美(俳優)「20代は、選択する力を養う修行の時間なんだと思う」
3河瀬直美(映画作家)「自分が自分らしく居られる場所を掘り下げて」
4野木亜紀子(脚本家)「夢やビジョンがなくたって、人生はまだまだこれから」
5紅ゆずる(俳優)「立ち向かわずに凌ぐだけでも、大丈夫」
6吉瀬美智子(俳優)「取り柄がないと思うなら、明確な目標を立てること」
7優香(タレント・俳優)「“ここしかない”、“これしかない”って、思い込みかも」
8佐々木恭子(フジテレビアナウンサー)「カッコ悪くても、愚直に行けば想いは届く」
9吉田羊(俳優)「20代の自信に、根拠なんかなくていい!」
10大竹しのぶ(俳優)「自分が大事にしたいものを、信じてさえいれば」
11北川悦吏子(脚本家・映画監督)「休むことだって、誠実に生きるということ」
12向井千秋(宇宙飛行士)「人間の命は有限。“後悔先に立たず!”で挑戦を」
13海野つなみ(漫画家)「ボール球も変わればストライクになる」
14山口智子(俳優)「試練に立ち向かった日々は、新たなチャレンジの力になる」
15安野モヨコ(漫画家)「乗り越えた分だけ、できることが増えていく」
16夏木マリ「本気で動けば、可能性はグンと広がる」
17風吹ジュン(俳優)「経験が少ないときほど自分の感覚も大切に」
18大和和紀(漫画家)「ピークはこれから。20代は、地道に努力してみて」
19村木厚子(元厚生労働事務次官)「仕事と育児の両立が辛いなら、借りを作る時期があってもいい」
20長谷川京子(俳優)「1日1日を乗り越え続けると、自由な世界が広がっていく」
21倖田來未(アーティスト)「全力を出し切ったら、自分を労うことを忘れずに」
22新井順子(ドラマプロデューサー)「仕事も人間関係も、まずは面白がることから」
23戸田奈津子(映画字幕翻訳者)「目標の近くにいれば、夢は叶う」
24本谷有希子(劇作家・小説家)「今抱えているコンプレックスは、無理に解消しないで」
25野田聖子(衆議院議員)「真面目に頑張り過ぎずに、“ふつう”の願望を叶えよう」

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019

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