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あのジェフ・ベソス(Amazon CEO)も8時間睡眠だった! 成功する人ほどよく寝ている
(著:前野 博之)
最近いろんな場面で「睡眠」の気配を感じる。
スマートウォッチとスマートフォンが登場してから「睡眠アプリ」や「睡眠計」がグッと身近な存在となった。おかげで自分の睡眠の質と量を客観視できる。ゆっくりお風呂につかった夜はシャワーだけの夜と比べて「よく眠れた」とアプリが褒めてくれるのだ。
そして、ジム。トレーナーによく言われるセリフのナンバー2が「よく寝てくださいね!」だ。(ちなみにナンバー1は「プロテイン」)。確かによく寝ている時期の方が痩せやすい。エンジニアが多いIT系企業では「パワーナップ」と呼ばれるお昼寝タイムが浸透してきている。
つまり「質の良い睡眠をたくさんとったほうが良い」のは確かなのだろう。どのくらい良いことなのか? それは何時間で、どんな睡眠なのか? そして、どうすればベストな睡眠をとれるのか? これらが『成功する人ほどよく寝ている 最強の睡眠に変える食習慣』に詳しく書かれている。わかりやすい睡眠ガイドだ。読むと、強い気持ちで「7~8時間ちゃんと眠ろう!」となる。
題名に注目してほしい。本書は「食習慣」から睡眠にアプローチしているのだ。
睡眠を改善するには栄養素がポイントになる。
摂取した栄養素を生かすには睡眠の質を高めることが必須。
作者は睡眠栄養カウンセラー協会代表理事の前野博之さん。栄養の知識と睡眠の知識を合わせた「睡眠改善メソッド」を構築した人だ。このメソッドを実践すると、よく眠れるようになり、さらには仕事の効率も上がり、健康にもつながるのだという。
なにがなんでも7時間以上寝たくなる
本書の前半では睡眠不足のデメリットと、それを改善することによるメリットがたっぷり語られている。もう、なんとしてでも寝なきゃ! という気持ちになる衝撃的な話ばかりだ。一部を紹介したい。
米国ペンシルベニア大学とオーストラリアの研究機関の報告によると、6時間睡眠を10日続けると、なんとウイスキーをショットグラスに4杯飲んだのと同じ程度に集中力が低下することがわかってきた(体重60kgで計算)。
しまった、私は週5で酒気帯びと同程度の頭で生きているのか。
睡眠不足の状態だと、怒りの感情を生み出す脳の扁桃体の反応が60%も増幅され、イライラしたり、ついカッとなって言いすぎたりしてしまうことがわかった。
集中力が低い上に怒りっぽい……たちの悪い酔っ払いじゃないか! しかも免疫力にも影響があるのだという。健康な男性25人を、睡眠時間が長いグループと短いグループに分け、それぞれがインフルエンザの予防接種を受けると、彼らになにが起きたか?
7時間半~8時間半の睡眠グループは力強い抗体反応を示したが、4時間睡眠のグループは50%の抗体反応しか示さなかった。
もはや良いことが全然ない。今すぐ寝たい。ただ寝るだけじゃない、ちゃんと寝たい。ここでポジティブに考えると、ちゃんと寝ると、これらのトラブルが防げるかもしれないのだ。
睡眠は合法かつ究極のパフォーマンス向上薬と言ってよいだろう。
良い。パフォーマンス上げたい!
副腎は疲労し、栄養は足りない
睡眠の問題は色々だ。本書はビジネスパーソンにスポットを当てている。
40代を中心とする1521人にアンケートをとった結果、1位は「午後に睡魔に襲われる」536票、2位は「寝起きが辛い」478票、3位は「夜中に目が覚める」315票、4位は「寝つきが悪い」192票となった。
これらの問題の原因を一つ一つ解説し、対策をわかりやすく教えてくれる。例えば、私も悩んでいる「寝起きの辛さ」の原因は「副腎疲労」なのだという。
睡眠不足や慢性的にストレスを受ける状態が続くと、副腎はストレスと闘うために過剰にコルチゾールを分泌し続け、その結果として副腎が疲弊し、必要な時にコルチゾールを分泌できなくなってしまう。
この「副腎疲労症候群」の状態になると、本来ならば朝に上昇するはずのコルチゾールの血中濃度が一向に上がらず、その結果、血圧も血糖値も体温も上がらないために体も覚醒できないので、朝の寝起きが辛くなってしまうのだ。
ああ、クタクタになった私の副腎をねぎらいたい。ここで本書のタイトルを思い出すのだ。内臓をいたわるには栄養が必要。そう、だから「食習慣」は睡眠と結びついている。
副腎の負担になる食材を避け、回復に必要な食材を摂ることを本書はすすめている。例えば、砂糖、グルテン、カゼインは避けたほうがよく、タンパク質、脂肪、そして血糖値を急上昇させない玄米や全粒小麦が推奨される。
読みながら「あっ」と気がつく。ここでおすすめされる食材は、「寝起きの辛さ」に限らず「午後に睡魔に襲われる」問題の解消にも役立ちそうだ。つまり、睡眠の問題を総合的に改善したければ、やっぱり食生活の見直しが大切であることがわかる。そもそもの問題として「栄養が足りていない」と作者は指摘する。
タンパク質、脂質、糖質の3大栄養素を薪と仮定すると、ビタミンがマッチでミネラルはマッチ箱と考えてほしい。(略)マッチはマッチ箱をこすらないと火がつかないように、ビタミンだけでなくミネラルも必須なのだ。それらが不足してしまうと3大栄養素に火がつかずに体の中で燃え残ってしまい、それが睡眠の質を下げてしまったり、肥満や動脈硬化をはじめとするさまざまな病気の原因となる。
わかりやすい。たくさん食べているのに栄養が足りない。なかなかショックだ。
よく寝ることは攻めの姿勢
睡眠不足のよくないところは、本人にその自覚がなくてもパフォーマンスが落ちてしまうところだ。パフォーマンスのよくない人が、仕事で結果を出せるだろうか? ストレスなく楽しく働けるだろうか? 元気に働けるだろうか? そう本書は説く。
「睡眠負債」という恐ろしげな言葉が登場するが、脅かしじゃなく本当に負債だと思う。つまり、栄養と睡眠を改善すれば、リスクをうんと減らせるのだ。めちゃくちゃいい話じゃないか。
「ちゃんと寝ないとね」と口ではみんな言う。同時に「寝不足です」と肩をすくめる。睡眠の問題でがんじがらめになっている人に、問題の正体と解決の糸口を教えてくれる1冊だ。
- 電子あり
成功者はなぜ睡眠にこだわるのか。
サティア・ナデラ(マイクロソフトCEO)、ジェフ・ベゾス(アマゾンCEO)、エリック・シュミット(グーグル元CEO)ほか、8時間睡眠をとっている世界的経営者は少なくない。
今、睡眠が心身に与える影響が次々明らかになっている。
免疫力が上がる、メンタルが整う(やる気の持続)、集中力・記憶力が高まる、技能の習得、認知症リスクを下げる、そして体を修復・再生させる成長ホルモンは睡眠中に出る、などなど、成功者がよい睡眠を求めるのは当然と言える。
ところが、20歳以上の日本人の7割は睡眠不足と判明。睡眠の質以前の問題なのだ。
たった1晩の睡眠不足で、がんと戦う免疫力が70%も低下するという研究報告もある。そのほか、心疾患・2型糖尿病・うつ病・肥満などのリスクが上がる、免疫力・生殖機能が低下するといった、寝不足で肌荒するなどでは済まない悪影響がわかっている。
ではどうすれば睡眠時間を増やし、睡眠の質を高められるのか。
その答えが身近な食べ物にあった。次のチェックリストは一見睡眠とは関係なさそうだが、どれかひとつでも当てはまった人は、睡眠の質に関係する栄養素が不足している可能性がある。
□ おにぎりや麺類だけで食事を済ませてしまうことがある
□ 食後に胃がもたれやすく、胃薬をよく飲む
□ 昼食後や夕方に眠くなる
□ 飲酒量が多い
□ 甘いお菓子やせんべい、スナック菓子をよく食べる
□ カフェイン飲料を飲まないと体が目覚めない
「寝つきが悪い」「寝起きがつらい」「午後の激烈な眠気」は、睡眠負債の大きなシグナルだ。
たとえば、寝つきをよくしたいなら、朝ご飯にたんぱく質を食べるといい。また午後の睡魔は糖質制限で撃退できる。毎日の食事が睡眠を変える最強の方法だったのだ。
本書では、睡眠研究の最先端情報から、読者の睡眠負債タイプや栄養素不足チェックリストに基づいたアドバイス、安心なサプリメントの選び方、体験記など、睡眠に悩む人だけでなく、人生やビジネスで成功したい人に欠かせない1冊である。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。
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