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暮らしを小さくしたからわかったこと。お金をかけずに快適を手に入れる

2020.09.16
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毎日をなんとなく過ごすうち、いつの間にか生活のあれこれが固定されてくる。もちろん、困ることがなければそれでよし。でも時間が経つにつれ、自分や家族は年を取り、住居にもさまざまな変化が起きてくる。年を重ねれば重ねるほど腰は重くなるが、変化は待ってくれない。そんな時、何からどうやって考え始めればよいのか。ヒントを求めるとしたら、いったいどこにあるのだろう。

料理研究家として知られる著者は、2年前に『生き方がラクになる 60歳からは「小さくする」暮らし』を上梓した。そこでは、自らの住まいを持ち家から賃貸へと変えたきっかけや経緯が語られている。それに続く本書においては、「住む場所を変える」という大きな決断が、その後の著者のこころや生活、家族にどんな変化をもたらしたのかが、具体的につづられていく。

大きかったのは、心の変化です。家やものをたくさん手放しても、心ゆたかに暮らすことができました。これまで自分を縛ってきた「こうでなくては」という想いから解放され、とても軽やかになりました。
大切なのは、どう暮らすか。

この言葉どおり著者の筆は、新たな日々をなめらかにつむぎ出す。長年の習慣を変えていくわけだから、むろん、骨の折れる作業でもあっただろう。だが、「何を必要とし、大事にするか」という基準に沿って考え、取捨選択を明確にしていく著者の姿は、常に楽しげでまぶしく見えた。そのおかげか、読んでいる私の心までどこか軽くなっていくようだった。

ちなみに本書のタイトルには「60過ぎたら」とあるが、そうでない方にも役立つ「コンパクトに暮らすための」知識も、ふんだんに掲載されている。たとえば「水切りかご、やめました」では、こんな紹介があった。

洗った食器を置いておく水切りかごは、なくてはならないものだと思っていたのですが、意外と場所を取ります。洗った食器をついそのまま置きっぱなしにしてしまうことも、前から気になっていました。

もう、まさにその通り……。完全に我が家の話である。しかし私は著者と同じ悩みを抱えつつも、なにも変えられないまま今に至っていた。著者の解決法はいかに──!?

そこで、仕事場のキッチンでは水切りかごをやめ、ホームセンターなどで売っているセルローズ素材の吸水マットを使うようにしたら、それで十分でした。



なんと……! そんな便利なものがあるとは初耳だったし、そもそも「マットで代用しよう」という考えが浮かんでこなかった。水分が漏れなければ確かに、なんの問題もない。

ちなみに注意点として「家族が多く、洗い物が多いと、水切りかごがあったほうが便利」とも書かれていたが、少人数な我が家にはむしろピッタリに思える打開策。さっそくホームセンターで買ってきて試してみると、吸水機能はバッチリで、求めていた作業スペースも誕生した。「ああ、こんな風に変えられるんだ!」と、あまりの手軽さに嬉しくなってしまった。視点を変えて、知識とともにやり方を少し変えるだけで、望んでいた快適さが手に入るなんて。コンパクト、すごい!

変えることを恐れず、楽しみながら考える。制約を逆手にとって価値観を変えていく。その姿勢は年齢にかかわらず、日々をよりよく過ごすための必須事項なのかもしれない。きれいな水色にぐるりと彩られたカバーは、背表紙も目立つ。だから、棚にあっても見つけやすい。日常をふりかえってちょっと見直してみたくなった時、きっとあなたの味方になってくれるだろう。

  • 電子あり
『60過ぎたらコンパクトに暮らす モノ・コトすべてを大より小に、重より軽に』書影
著:藤野 嘉子

60代からの人生を楽しくするヒントが凝縮!
暮らしを小さくしたらわかった、私らしい日常の選び方、お金の使い方、楽しい時間の過ごし方。

はじめに――60代目前で持ち家を手放すという選択/年齢とともに変化する「モノ」「コト」の基準 
【1章 気分よくなる「コト」】
コンパクトで快適になった暮らし
今日食べたいものを今日買う
掃除と片づけをシンプルに
頼りになるキッチン道具を見つける
水切りかご、やめました
アートは夫にお任せ  
など
【2章 ゆっくり選んでいく「モノ」】
処分するより再利用を考える
10年使いたい皮財布  
首まわりにひと工夫
アロハシャツは自由の証
少し早い形見分け
「買う」をいつ決断するか  
など
【3章 がんばらない 料理】
料理はがんばらなくていい
軽めの夕食なら居酒屋メニューで
忙しい日の楽しみは駅弁
家族の集合場所は「青空リビング」  
など
【4章 軽くしたい 心とからだ】
夫婦で初めてのプレゼント交換
仲間とのお付き合い
シニア世代の美しさは姿勢と表情から  
夫婦の役割は変わっていく
年齢に抗わない  
など

レビュアー

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田中香織

元書店員。在職中より、マンガ大賞の設立・運営を行ってきた。現在は女性漫画家(クリエイター)のマネジメント会社である、(株)スピカワークスの広報として働いている。

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