腸に振り回されて数十年
お腹の調子がよくないと1日が台なしになる。病気とは呼べない、でもなんだかスッキリしない。そういうのが一番困るのだ。あきらかに「ちょっと調子悪い」が私の目の前にあるのに、歩けないわけじゃないし熱も咳もない。奥ゆかしいのにモノ言いたげな腸に振り回されっぱなし。そのぶん、調子がいいときはラッキー! こんな花丸な日が続いてくれたらな。
……と、毎朝ブツブツ考えている。腸は私をことあるごとに悩ませる臓器ナンバーワンだ。なので『免疫力を上げる健美腸ルール』は「読ませてください!」と手に取った。
作者は小林メディカルクリニック東京院長の小林暁子先生。こちらの病院には「便秘外来」があり、つまり腸のトラブルと長年向き合って来た先生が綴った本だ。
「はじめに ~腸を守れば、体を守れる」からクラクラくる。
体内の免疫細胞の70%は、腸に集まっています。つまり、体内に入ってきた有害なウイルスや病原菌を撃退して、体内に吸収させないような防御システムを持つのが「腸」という臓器なのです。
こんな要塞のような臓器だったとは。そして小林先生は頼もしくこう断言する。
腸内環境を整えるとまず体の中が変わり、性格も変わります。そして、表情や肌などの見た目も劇的に変わるのです。年齢は関係ありません。
整えたい。絶好調な日を1日でも増やしたい。
読後「やっぱり腸ってただ者じゃなかった!」と思ったのはもちろんだが「そんな仕事もしてたんですか」とますます大切にしたくなった。そして大切にする方法も教えてもらえた。
風邪予防も仕事のパフォーマンスも腸次第
「第1章 腸内環境が免疫力を決める」と「第2章 腸で人生は変わる」を読むと「なんとしてでも腸を大事にしないと」という気持ちになる。
まず、最近よく聞く「腸内フローラ」という言葉。お花畑にいろんな腸内細菌がいるイメージだ。お花畑だし、お世話しなきゃねという気がしてくるが、実際どんなお花畑なのか?
人の腸壁にびっしりと棲(す) みついた腸内細菌の数は100兆個以上。その種類は300種類以上とも、2万種類あるともいわれていますが、すべてが解明されたわけではありません。
300~2万……数字の振れ幅から謎の深さが伝わってくる。が、腸内フローラについては、はっきりわかっていることがある。
腸内細菌たちは、腸内で常に縄張り争いをしています。(略)ストレスや食生活の乱れなどで、善玉菌が減ると、日和見菌が悪玉菌に加勢するため悪玉菌が増殖してしまいます。
日々の生活がそのまま腸の運営に関わってくるのだ。そして、腸ケアをすると良いことがいっぱいある。
まず、腸内環境が整うと、栄養吸収が良くなり体重管理が楽になります。
(略)腸内環境を整え免疫システムを強化することで、風邪をひきにくくなり、体調不良や病気のリスクを低くすることができます。
さらに、精神を安定させる神経伝達物質「セロトニン」の95%は、脳ではなく腸で作られています。(中略)そして、「やる気」にスイッチを入れる、ドーパミンのもとになるビタミンを生み出すのも腸。
腸、仕事しすぎ! もう絶対に腸内環境を整えたい。こちらの章には腸ケアのメリットや詳しい解説がわかりやすく丁寧に書かれている。ああ、しかし、腸ってばこんなに働き者だったとは。「奥ゆかしいのにモノ言いたげ」なんて言ってごめんよ。言って当然だ。
「良かれと思ってやってたこと」が腸には逆効果?
第3章以降は腸ケアの方法と実践に入る。「第3章 今日からできる健美腸ルール」では、腸のために「していいこと」と「してはいけないこと」を教えてもらえる。ドキッとする項目がたくさんあるのだ。たとえば「便秘の定義」。
じつは、「◯日間、便が出ないと便秘である」という医学的定義はありません。(略)
大事なのは、「気持ちのいいお通じ」があるかどうか。
例え毎日便が出ていても、硬いコロコロとした便しか出ない、残便感がある、力まないと出ないといった状態なら、それは便秘です。いつもゆるゆるの便ばかりという下痢タイプの人も、腸内環境がよいとはいえません。
まったく知らなかった……。目から鱗が落ちるような話がバンバン登場するので読んでほしい。そしてダイエットについても多く語られる。そう、腸は、食べること、栄養を取ることと関係している。だからダイエットを健康に成功させるには腸からアプローチするのがいいのだ。
ダイエットを始めたら、自分の腸や便の状態をよく観察してください。便秘や下痢がたびたび起こるようなら、そのダイエットは間違いです。腸の状態から判断すればいいのですから、簡単です。
わかりやすいし、頼もしい。「してはいけないこと」として「糖質オフダイエット」が挙げられているが、確かにお米を一切食べなくなるとたちまち便秘になる。(そして肌もハリがなくなる……)
腸タイプをセルフチェック
「第4章 実例・腸診療の最前線」に腸タイプのセルフチェックがあったのでやってみた。正直に赤裸々に回答した結果、私は「ねじれ腸タイプ」「ストレス性腸タイプ」「弛緩性腸タイプ」にばかり印がついた。
反対にまったく当てはまらないタイプもわかるので面白い。
そして、それぞれの腸タイプにあったケア方法が紹介されている。私の場合「ねじれ腸タイプ」でオススメされた「白湯を飲む」がてきめんに効いた。そして健美腸ストレッチもとても良い。
普段やらない動きなのでグイグイ伸びる。
もちろん食事も大切だ。食べたほうが良い食材と食べ方のコツを丁寧に教えてくれる。ヨーグルトやぬか漬けが腸に良さそうなのはわかるが、個人的に一番ネックなのは「毎日食べられるか?」だった。そりゃ、毎日続けたほうがいいけれど、単品だと2週間後くらいに飽きてしまう。なので……、
こうやって料理に取り入れて美味しく食べてしまえばいいのだ。
ここに書かれていることは全て生活習慣に根ざした話だ。お花畑の手入れをするのと同じように、焦らず途切れることなく腸をケアしていけばいいのだな、とわかる。
多くの患者さんは、食生活を変え、生活リズムを取り戻し、便秘と決別し、腸の知識もたくさん覚えて、キラキラの笑顔で便秘外来を卒業していきます。腸と仲良くなると、体の声がわかるようになり、便秘になったとしても自分で体調管理をできるようになります。
下剤やセンナ茶に頼るのをやめたいなと思っている人は多いはず(私はあまりに体に合わなくて飲めないが、それでも試そうかなあと思う時がある)。そういう人にもぜひ知ってもらいたい本だ。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。