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水族館でとっておきの夏ショーを味わう! ファミリーで思い出を(全国の水族館 ②)

2019.07.21
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水族館は魚を見に行くところ、と思っている人が多いと思うが、その認識は正確ではないと思う。魚を見るだけなら、魚屋のイケスでもアリだと思うが、水族館の展示はひと味もふた味も違う。多くの水族館が目指しているのは「命」の展示であり、魚(生き物)の生き様を見せることであるからだ。

『中村元の全国水族館ガイド125』をめくると、各水族館が力を入れる、数々の命の展示を発見することができる。展示の狙いや効果までに解説が及んでいるのは、水族館プロデューサーの著者だからこそ出来ることだろう。前回のレビューで紹介した「ただただ、ボ~っ」と楽しむ水族館もいいが、本書をきっかけに知的好奇心を刺激する水族館の楽しみ方にもトライしてみてもらいたい。

知的好奇心や命の展示と書くと、とたんに敬遠したくなる人も出てきそうだが、難しいことはまったくない。たとえば、水族館の人気展示、パフォーマンスショーからも実感できるはず。たとえばイルカショー。著者によれば「観覧者に感動を与えるポイントは、トレーナーとイルカあるいはイルカ同士のコミュニケーション能力であり、それによって実現する息の合った行動だ」と解説するとおり、イルカたちの素晴らしい演技のなかに、私達は無意識に、すごい能力を感じ取って楽しんでいるというわけなのだ。

では、そんな生き物たちのすごさを実感できるショーを楽しめる水族館を本書の中からいくつか挙げておきたい(P74 コラム「海獣パフォーマンスがすごい」水族館より)。


1)アドベンチャーワールド 


規模、スピード、ストーリー性、どれを取っても飛び抜けており、最高!

2)名古屋港水族館 


日本最大のプールでイルカの飛距離は本物の海並み。シャチも登場する

3)鴨川シーワールド 


シャチのショーは大迫力で感動。シロイルカの水中ショーはここが日本初

4)伊勢シーパラダイス 


元祖かつ究極の柵無しふれあいショーは泣く子が続出するド迫力だ

5)マクセル アクアパーク品川
 

円形スタジアムのプールにシャワーや光が交錯しイルカが演技


このなかで異色なのは、伊勢シーパラダイス。柵無しのふれあいショーで、著者によれば「観覧者のいるギャラリーに、セイウチやトド、アザラシが出てきて吠える! 触れられる! 挙げ句にはセイウチにお尻をバンッと叩かれる! 毎回チビッコが何人か泣き出すほどの迫力だ」という。また「実はヒレアシの仲間たちは、他種の生物と争うことがなく、野生の群れに人が訪れても逃げたり襲ってきたりしない。そのヒレアシ類とフィールドで出会う感動を展示したのがこの柵無しショーだ」ということだ。これは、行かない手はない! 

本書には「ショー」や「海獣度」を示す評価表が掲載されている。ファミリーでのお出かけに、大いに参考になることだろう。きっと大人も子どもも楽しみながら、発見と感動を味わえるに違いない。夏の思い出に、また子どもの自由研究のテーマに活用するのも面白いと思う。


写真:中村 元
  • 電子あり
『全館訪問取材 中村元の全国水族館ガイド 125』書影
著・写真:中村 元

■令和最初の「平成の水族館」集大成
水族館プロデューサーの著者が、作り手と観覧者の両方の視点で、全国125箇所の水族館を総チェック! 北は稚内から南は沖縄まで、水族館の隅から隅までを全部著者が取材。ため息が出るほどの美しい水塊写真と、マニアも唸る深い解説で、水族館の魅力をお届けする。

■プロデューサーと観覧者、両者の視点で解説
サンシャイン水族館の「天空のペンギン」水槽をはじめ、大胆かつ個性的な展示で、次々と人気水族館を誕生させてきた水族館プロデューサー(c)の中村元氏。水族館について知り尽くす著者が、プロデューサーと観覧者の両方の視点で、各水族館の見どころや魅力、楽しみ方を紹介する。
水槽展示の奥深さはもちろんのこと、パフォーマンスショーの裏側、地域ならではの特性や生き物、弱点を武器にした展示など、目からウロコの独自解説が楽しい。
展示のプロの著者だからこそできる水槽の種明かしは、まるで生ガイドを受けているかのよう。著者とともに、自分にとっての「特別な」水族館に見つけに行きませんか。

【おもな掲載水族館】
■関東
サンシャイン水族館/葛西臨海水族園/すみだ水族館/上野動物園 両生爬虫類館/足立区生物園/板橋区立熱帯環境館/新江ノ島水族館/横浜・八景島シーパラダイス/ズーラシア/京急油壺マリンパーク/箱根園水族館/鴨川シーワールド/水紀行館 水産学習館/アクアワールド/栃木県なかがわ水遊園など

■北海道
北の大地の水族館/おたる水族館/豊平川さけ科学館/サンピアザ水族館/円山動物園/旭山動物園など

■東北
アクアマリンふくしま/男鹿水族館GAO/加茂水族館/仙台うみの杜水族館/もぐらんぴあ水族館など

■北信越(+山梨県)
マリンピア日本海/上越市立水族博物館/イヨボヤ会館/尖閣湾揚島遊園・水族館/寺泊水族博物館/アルプスあづみの公園/蓼科アミューズメント水族館など

■東海
名古屋港水族館/南知多ビーチランド/竹島水族館/豊橋総合動植物園/碧南海浜水族館/沼津港深海水族館/世界淡水魚園水族館 アクア・トトぎふなど

■近畿
琵琶湖博物館/丹後魚っ知館/京都水族館/海遊館/ニフレル/城崎マリンワールド/姫路市立水族館/和歌山県立自然博物館/エビとカニの水族館など

■中国・四国
海響館/マリホ水族館/なぎさ水族館/カブトガニ博物館/しまね海洋館 アクアス/宍道湖自然館ゴビウス/かにっこ館/桂浜水族館/むろと廃校水族館/足摺海洋館など

■九州・沖縄
沖縄美ら海水族館/マリンワールド海の中道/長崎ペンギン水族館/九十九島水族館 海きらら/むつごろう水族館など

レビュアー

大木大地

陸・海・空すべての乗り物とフィールドを愛するフリーライター。目指すは全天候型の物書きだが、猛暑と寒さに弱く、道のりは遠く険しい。

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