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『通りすがりのあなた』には、著者のはあちゅうさんが実際に訪れた場所や住んでいた場所、現地で出会った人や物がたくさん登場しています。7話それぞれのあらすじと一緒に、はあちゅうさんご自身による写真とキャプションで、小説のモデルになった場所をご紹介!
第1話「世界が終わる前に」→香港
香港島から見た夜景
大学3年生から大学4年生の約1年、香港大学社会学部に通いました。父親の仕事の都合で、小学校4年生から5年生の約1年間住んでいた香港生活がとても楽しく、印象に残っていたので、また住みたい、と思ったのが香港を留学先に選んだ理由です。
香港はその後も仕事やプライベートなどで来る機会が多く、私の人生の中で第二の母国と言いたいほど、特別な場所になっています。
香港大学留学中の私
在学中は大学付属の女子寮で、ルームシェアをしていました。
私の滞在していた女子寮の一室
女子寮にはフロアごとの行事とルールがあったのですが毎月1回、フロア全員で集まって真夜中にデザートを食べる「フロアデザート」という行事が心に残っています。
フロアデザートのために豆を煮る私のルームメイト。香港人ではなく、中国本土からの留学生です。
フロアだけでなく寮全体の行事もいろいろあったのですが、その中でも特殊だったのが「スーパーパスディナー」。
試験前に、豚の丸焼きをみんなで食べるという行事です。
食べる前に、一人ずつ子豚に包丁をえいっとふりおろして見事にスパンと包丁が通れば試験もパスできるというジンクスがあり、みんな必死に包丁をふりおろしていました。
スーパーパスディナーで出た豚の丸焼き
「世界が終わる前に」
大学3年の1年間、モラトリアムに逃げこむように香港大学に留学したサホは、マイケルというABC(アメリカン・ボーン・チャイニーズ)と出会う。冴えない自分と、人気者の彼。付き合っているようで、本当のところはわからない。やがてマイケルは、奇妙な「秘密」を漏らすようになって……。
第2話「妖精がいた夜」→インド、恵比寿
朝のガンジス河
友人が住んでいた部屋を頭に思い浮かべながら書きました。
恵比寿にある会社につとめていた時代、自分の家に帰るのが面倒になると最寄り駅にあるその人の家でよく寝かせてもらっていたんです。
隣で人が寝ているとそれだけで安心して、悩みがとけていくような気がして、たまに添い寝をしてくれるだけの人がいればいいのに、とあの頃、よく思っていました。
インドの街角
朝起きて、私がシャワーを浴びている間に相手がバナナジュースを用意してくれたことが一度、ありました。
その時、家族以外の誰かが、一緒に寝て、ご飯を用意してくれることが泣きたくなるほど嬉しく感じて、会社に行ってからも、「今日は夢の中から直接会社に来たみたい……」と不思議な余韻に浸っていました。
インド人のおうちでご馳走になったチャイとサモサ
その後、その人は引っ越してしまい、部屋に行かなくなってから、なんとなく連絡も取らなくなってしまい、数年が経ちます。
でも別に、お互いに元気だからいいんです。生きていれば、必要な時に会えるから。
ニューデリーの市場
一方で、いつかの未来で会いたかったとある人が大学時代に、交通事故で若くして命を奪われてしまいました。その人とも、もう何年も会っていなかったにも関わらず、その人のことを考えて眠れない夜がありました。
その二つの記憶が結びついて今回のこのエピソードが出来ました。
市場で売っていた神様のシール
※恵比寿という設定ですが、小説内では触れていません。
※インドが出てくるシーンについては、書籍にてご確認ください。
「妖精がいた夜」
遠距離恋愛中の彼氏にフラれた真美は、毎日死ぬことを考えていた。それなのに、週明け会社に行ったら死んでいたのは鈴木先輩だった。彼氏も先輩も、遠くへ行ってしまった。夜、眠れなくなった真美を心配した友人が、妖精の派遣サービスを紹介してくれたのだが……。
- 電子あり
切ない人間模様を描く、はあちゅう初の小説集!
香港に留学したサホはアメリカン・ボーン・チャイニーズのマイケルと出会う。彼は奇妙な秘密を漏らすように──(「世界が終わる前に」)/合コンで出会った森さんから出張中だけ家の留守番を頼まれた美幸。海を越えて彼から届くPCメールは不思議な感覚をもたらし……(「六本木のネバーランド」)/言葉や距離を超えて築かれる、友達とも恋人とも名づけられない“あなた”との関係。
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