言葉や距離を超えて築かれる、友達とも恋人とも名づけられない“あなた”との関係。
どんな人のことも否定しない、愛情にあふれた小説。──朝比奈あすか(作家)
どの作品も水彩画のよう。──甘糟りり子(作家)
著者メッセージ
不倫のニュースが世間を騒がせる中、その関係が友達だったのか、恋人だったのか白黒つけたがる人を多く見かけます。人は既存の関係性の枠に誰かを当てはめると安心するようです。けれど、実際の人間関係はもっと複雑で、枠からはみ出してしまう人間関係だってあると思うんです。
人と人の数だけ関係性はあってもいいと私は思うし、関係性に名前がなくたって、それは大切な出会いだと思います。
この本は「名前のつけられない人間関係」をテーマにしています。「曖昧なものをもっと受け入れられる社会になりますように」という今の世の中へのメッセージを、私なりにこめました。
はあちゅう
1986年生まれ。幼少期を香港、シンガポールで過ごす。慶應義塾大学法学部在学中に友人と企画した期間限定ブログが書籍化されたことをきっかけに媒体を横断した発信を開始。卒業旅行は企業からスポンサーを募り、タダで世界一周を敢行した。卒業後、電通、トレンダーズを経てフリーに。『疲れた日は頑張って生きた日 うつ姫のつぶやき日記』『半径5メートルの野望』『言葉を使いこなして人生を変える』など著作多数。noteで継続している月額課金制マガジンや有料オンラインサロンも好評。
ツイッター、インスタグラム @ha_chu
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小説『通りすがりのあなた』のモデルになった場所
写真・文/はあちゅう
『通りすがりのあなた』には、著者のはあちゅうさんが実際に訪れた場所や住んでいた場所、現地で出会った人や物がたくさん登場しています。7話それぞれのあらすじと一緒に、はあちゅうさんご自身による写真とキャプションで、小説のモデルになった場所をご紹介!
第1話「世界が終わる前に」→香港
大学3年の1年間、モラトリアムに逃げこむように香港大学に留学したサホは、マイケルというABC(アメリカン・ボーン・チャイニーズ)と出会う。冴えない自分と、人気者の彼。付き合っているようで、本当のところはわからない。やがてマイケルは、奇妙な「秘密」を漏らすようになって……。
香港島から見た夜景
第2話「妖精がいた夜」→インド、恵比寿
遠距離恋愛中の彼氏にフラれた真美は、毎日死ぬことを考えていた。それなのに、週明け会社に行ったら死んでいたのは鈴木先輩だった。彼氏も先輩も、遠くへ行ってしまった。夜、眠れなくなった真美を心配した友人が、妖精の派遣サービスを紹介してくれたのだが……。
ニューデリーの市場
★『通りすがりのあなた』第1話・第2話のモデルになった場所にまつわるエピソードはこちら
第3話「あなたの国のわたし」→カーディフ(イギリス)
大学で出来た親友のマリアは、見た目は日本人だが中身は完全なイギリス人。マリアのユニークな日本語や感性が面白くて、サキは姉のような気持ちでマリアの案内役を買って出た。出会って2年目の夏休み、サキはマリアが生まれ育ったカーディフへの里帰りに同行することになり……。
イギリスの街角に建っていた綺麗なおうち
第4話「六本木のネバーランド」→ニューヨーク、六本木
この「六本木のネバーランド」は無料で試し読みができます!
リンク先ページのお好きなオンライン書店ボタンを押してください。無料で電子書籍をお読みいただけます。
「美幸ちゃん、僕の家に住まない?」──合コンで出会った外資銀行に勤める森さんから、彼のニューヨーク滞在中の2ヵ月間だけ家の留守番を頼まれ、秘密基地を手に入れて大喜びの美幸。森さんから海を越えて週に一度届くパソコンメールが、不思議な感覚をもたらして……。
タイムズスクエア。約10年前に訪れた時の写真
★『通りすがりのあなた』第3話・第4話のモデルになった場所にまつわるエピソードはこちら
第5話「友達なんかじゃない」→パナマ
17歳の夏休み、パナマに短期留学をすることになったハルナ。ホームステイ先では日本との習慣の違いに右往左往し、学校ではスペイン語が全く分からず困り果てる毎日。そのうえ、クラスで冴えないジェニファーがあれこれ世話を焼いてくるようになって、正直ちょっと迷惑なのだが……。
パナマで仲良くなった男の子
第6話「サンディエゴの38度線」→サンディエゴ(アメリカ)
留学生のイーサンと恋に落ちた私は、学生最後の夏休みをサンディエゴの彼のアパートで過ごすことに。イーサンの親友で韓国系アメリカ人のアレックスともルームシェアすることになった私だが、彼との距離はなかなか縮まらない。ところが親友だったはずの二人の関係に亀裂が生じ始めて……。
よくドライブに行きました
第7話「世界一周鬼ごっこ」→世界一周、特にインド
念願の世界一周旅行を始めた矢先、ボリビアで高山病になったリサを助けてくれたのは、同じく旅行中のコウさんだった。同じルートの少し先を旅するコウさんとは、会えそうでなかなか会えない。コウさんを追いかけて旅するうちに、リサの中で彼に伝えたい言葉が溢れてきて……。
インドの街角
全国の読者から切なく熱いご感想が寄せられています!
はあちゅうさん初の短編小説集には静かで切ない7つのやさしい抱擁が、ひんやりと封じこめられていました。泣いたわ。(51歳・女性)
センター試験以来、6年ぶりに小説を読みましたが、読んでいて共感する部分があったのであっという間に読み終わりました。(24歳・男性)
ときめいたりムカついたり受け止めきれなかったり、恋しくなったり…。気持ちが忙しかったです。下手なジェットコースターより刺激的!(20代・女性)
読み始めは通りすがっていくって切ないなと思っていましたが、読み終える頃には明確な名前のない関係でも誰かの心の中に存在することって素敵だと思えました。(26歳・女性)
主人公で換算すれば7人の人生を、しかも多数の国や地域をまたがって垣間見られる。寝る前の布団の上で旅をしたかのよう。(32歳・女性)
自分の大事な時期に長くは関わってはいないけれど、深く心に残っている友達を思い出しました。(23歳・男性)
この小説は今まで向き合うことのなかった「名前のない人間関係」に光をあて、もう半分の世界が隠れていたことを教えてくれた。(27歳・男性)
今まで名前のつけられない関係を意識したことが無かったけれど、実はもう経験しているのかもしれない。そんな気持ちになる、まさに自分を通り抜けていくような読後感でした。(32歳・女性)
誰にでもある人間関係がこんな繊細な小説になるんだ、ということにある種の感動がありました。垣間見られるはあちゅうの影が実像なのか虚像なのか…そんなところにもドキドキ。(52歳・男性)
この物語の人間関係に自分の心が触れているとき、すごく心地よかったです。(38歳・男性)
自分の周りにもこんなにもたくさんの物語があるのかと思うと、これから先の自分の人生もとても興味深いと思えます。(36歳・女性)
読み終わったあとの爽快感はなぜだろうと考えてみた。はあちゅうさんのブログのような読みやすさ、かつ繊細な描写。ココロに切り込んでくる言い回し。すべてが新しい。だからだろう。(42歳・男性)
旅という状況も手伝って、名のない関係性から醸造される、人としての豊かな余裕をもらえた、そんな気がする小説です。ゆっくり何度も色んな場所で読んでみたいです。(48歳・女性)
自分にもあったような気がするふわりとした思い出と、地続きのようでどこか夢心地の時間に浸れます。小説ってやっぱりいいですね。(24歳・男性)
この小説の中に出てくるのはどこかの誰かの物語なのに、まるで自分の人生を振り返ったような気分になりました。(22歳・女性)
この作品は、自分の記憶の引き出しを開けてくれました。ささやかな出会いの数々を、思い出すきっかけをくれてありがとう。(31歳・男性)
小説を読みながら半生を振り返った経験は、はじめてかもしれません。(31歳・女性)
ことばで表せないような、ゆるやかに繋がった人たち。もう会えないけれど、大切にしたい人のことを思い出しました。(35歳・女性)
通りすぎた過去を、きれいに残しておける方法を学びました。過去の自分に送りたい本です。(28歳・女性)
忘れかけてた<わたし>がいた。作品のあちこちに。(33歳・女性)