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【全仕事共通】生産性が上がり、賢く速くなる“8つのアイディア”とは?
(著:チャールズ・デュヒッグ 訳:鈴木 晶)
■あなたは「自分の生産性は高い」と言えますか?
胸張って「高い!」とは言えないのがこの生産性問題。かく言う私もかつて新人だったころ、高いつもりで低いのが生産性、低いつもりで高いのがコスト…… なんて、居酒屋のトイレの標語みたいなことを当時の職場の上司に言われた経験がある。
それはさておき、そもそも「生産性を現在よりも高くする」ということは「最小の努力で最大の報いが得られる方法を見つけ、体力と知力と時間を最も効率よく用いる方法を発見すること」だ。
生産性の向上は、旧来の日本型の労働者や管理職が陥りがちな「今よりもっと働き、もっと汗を流す」ような気合いと根性で乗り切るような過重労働のドグマに陥ることではない。
生産性の向上の本質は「大事な他のものをすべて犠牲にすることなく何かを達成すること」であり、よりよい人生を送るためにそれは欠かせないのだ。
しかし生産性を上げるには、押さえなければならないポイントがたくさんある。モチベーションアップをはじめチームワークの改善、タスクマネジメントなどさまざまなスキルを、バランスを取るように局所最適と全体最適を行ってはじめて向上するものだからだ。
本書はそんな「押さえなければいけないポイント」を8つの章に分けて解説しているため、具体的に自分が取り組むべき課題をイメージしやすくなっている。以下が本書の目次で、即ち生産性を上げるシンプルで力強い8つのアイディアだ。
【第1章】やる気を引き出す
【第2章】チームワークを築く
【第3章】集中力を上げる
【第4章】目標を設定する
【第5章】人を動かす
【第6章】決断力を磨く
【第7章】イノベーションを加速させる
【第8章】データを使えるようにする
なかでも『アナと雪の女王』においての制作秘話が事例として挙げられている第7章。世界中でヒットしたあの名作は、制作当初、かなり微妙な出来だったという。そこから、どのようにアイディア(=イノベーション)で課題を解決し、名作となっていったのか?という事例は読み物としてもエキサイティングで示唆に満ちているので、『アナ雪』ファンならずとも一読をオススメしたい。
■やる気を引き出す
翻っていざ生産性という観点で自身を顧みてみると、あなたにもあまり気が乗らないタスクの場合に著しく生産性が低下しているような経験は無いだろうか。私にはある。特に交通費の精算が非常に苦手だ。仕事なのに甘ったれたことを言うんじゃないという意見はこの際横に置いといてほしい。
しかし、どうにもこうにもやる気が出ずになかなか着手できなかったタスクが影響して他の仕事の時間を圧迫したり、貴重な自分の時間を侵蝕したりしてしまった経験は誰しもあるのでは無かろうか。
そんな「やる気」「モチベーション」をマネジメントすることは、生産性の向上を図るうえで避けては通れないのであろう、本書ではトップバッター(第1章)で解説されている。
やる気がないんなら帰れ! と一昔前の体育会系の組織では言われてしまうくらい、「やる気」はモノゴトを実行するためには欠かせないファクターだ。しかし、モチベーションマネジメントの本質はごくごくシンプルだ。
どのような問題や選択であろうと、「自分が自分をコントロールしているのだ」という実感がやる気を産み出す原動力になるという。
モチベーションマネジメントのセクションでは、このシンプルな本質を「海兵隊での新兵訓練の事例」と、「老人ホームでの事例」、「脳の外傷によって無気力になってしまった患者に対しての実験」から得られたケーススタディをもとに解説している。
海兵隊の事例からは、無意味に命令に従うだけではなく、自分の頭で考えて自律的に動くことの重要性と、「自分の選択によって自分の運命を変えられる」というマインドセットを持つことが訓練によって誰しもできるようになるということを。
老人ホームの事例では、施設が押しつけるルールに逆らい、自分はまだ人生をコントロールできていることを証明しようとする、ある種厄介な利用者のほうが元気で長生きするということから、人生における選択と決断の重要性を。
そのように自己の行動をコントロールする感覚を覚える機会を与え、行動を選択できる機会を与えれば、人は意志の力をどう行使するかを学ぶ。そして自力で選択することが習慣になれば、習慣的にやる気を引き出せるようになるという……。
このように、事例と実践方法と、場合によっては悪い見本の事例を順序立てて例示することで、読者が自分ごととして受け入れやすい構成になっているところが、本書がよくある生産性本から一線を画しているポイントだ。
読んでいる間に、「そりゃそうなんだけどさあ……」というキレイゴトな印象を抱かされないので、好感が持てるのだ。
■グーグルやアナ雪など事例満載
試しに生産性というキーワードを検索サイトで検索してみてほしい。生産性を上げるためにはどうしたらいいのか、というような記事や書籍がたくさん並んだことだろう。つまり生産性を向上する…… 今より少ない労力で、より多くの対価を得たいという願いは、社会生活を行ううえで普遍的な人類の願いなのだろう。
本書『あなたの生産性を上げる8つのアイディア』は、そもそも生産性とは何なのか?から、より賢く、より早く、より良くなるためのシンプルで奥深い秘密を具体的な事例をもとに解説してくれる。ビジネスパーソンのみならず、社会生活を行うすべての人に役立つ虎の巻と言っても過言ではないだろう。
また、本書の特長として、実際にあった具体的な事例や実験などを項目ごとに丁寧に解説して理解を深める構成を取っている。その際も項目毎に1つの事例だけではなく、様々な事例を組み合わせて解説しているので、リアリティを持って受け入れやすいのだ。
本稿にて紹介したやる気マネジメントの1章と、アナ雪の7章に限らず、各章それぞれに生産性を向上させるために欠かせないスキルとトレンドが網羅されている(先に挙げた各章の、サブテーマを並べておく)。
【第1章】新兵の「やる気」を引き出した、ブートキャンプの改革とは?
【第2章】グーグルが見つけた、成功するチームの「規範」とは?
【第3章】墜落した飛行機のコックピットで、操縦士はなぜ「注意力」を失ったのか?
【第4章】GE社員を変えた、「ToDoリスト」の作り方とは?
【第5章】GMの工場を効率アップさせた、「トヨタ生産方式」とは?
【第6章】ポーカーの賞金王は、「確率論的思考」と「決断力」をどう磨いたか?
【第7章】「イノベーション」を加速させた『アナと雪の女王』はなぜ大ヒットしたのか?
【第8章】落ちこぼれ公立校を救った、「データ」の使い方とは?
仕事で一皮剥けたかったり、ちょっと伸び悩んでいたりする若手はもちろん、チームをマネジメントする忙しいビジネスパーソンが課題をセルフチェックするのにも活用できるだろう。
これだけの多岐にわたる分野を豊富な事例で解説しているにもかかわらず、それぞれのセクションはコンパクトにまとまっているのは見事だ。お手軽な自己啓発書を何冊も読むよりも、本書を何度か通読することを強くオススメしたい、そんなマスターピースのような1冊だ。
- 電子あり
本書は、生産性の秘密に関する私の調査の報告であり、どうして群を抜いて生産性の高い人や企業と、生産性の低い人や企業があるのか、両者の違いは何か、という問いに対する答えである。(「はじめに」より)
1.新兵の「やる気」を引き出した、ブートキャンプの改革とは?
2.グーグルが見つけた、成功するチームの「規範」とは?
3.墜落した飛行機のコックピットで、操縦士はなぜ「注意力」を失ったのか?
4.GE社員を変えた、「ToDoリスト」の作り方とは?
5. GMの工場を効率アップさせた、「トヨタ生産方式」とは?
6.ポーカーの賞金王は、「確率論的思考」と「決断力」をどう磨いたか?
7.「イノベーション」を加速させた『アナと雪の女王』はなぜ大ヒットしたのか?
8. 落ちこぼれ公立校を救った、「データ」の使い方とは?
──本書で述べたアイディアを実践すれば、チームが、組織が、そして私たちの誰もがより生産的になれる。
『習慣の力』の著者が解き明かす、生産性を向上させるシンプルで奥深い秘密!
レビュアー
静岡育ち、東京在住のプランナー1980年生まれ。電子書籍関連サービスのプロデュースや、オンラインメディアのプランニングとマネタイズで生計を立てる。マンガ好きが昂じ壁一面の本棚を作るものの、日々増え続けるコミックスによる収納限界の訪れは間近に迫っている。
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