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【名作発見】霊験で視力回復する寺が、最先端の流行だった時代(水上勉)
『霊験記』のあらすじから察するに、もともとこの地の観音様が「眼病に霊験あり」といわれてたであろうとは思います。もともとあった信仰が、キャッチーな物語の誕生によって、いわゆる「ブレイク」したのが明治期なのでしょう。今のブレイクと違って、「何百年も前から栄えてた感」があるときスッとあらわれる、そんな感じだったような気がします。(カラスヤ)
生きるとは、私とは、何か。
盲目で死んだ祖母への鎮魂に、作家は壺坂寺に詣でた。山道を辿ると、みかん水を売って祖母を大切にした叔父の悲運、生きている母の姿など、親族の誰彼もの不幸が思い浮かんでくるのであった……。『雁の寺』『越前竹人形』『飢餓海峡』の著者が、作家生活20年にして初めて、書かずにはいられないテーマに突き当たった。水上文学晩年の陰翳に満ちた豊かな文学世界の到来を約束する連作短篇集。
レビュアー

1973年生まれ。漫画家。著作に『カラスヤサトシ』『カラスヤサトシのおしゃれ歌留多』『強風記』『喪男の社会学入門』『毎日カラスヤサトシ』『オレは子を見て育とうと思う』『カラスヤサトシの世界スパイス紀行』『おとろし』など多数。『アフタヌーンはカラスヤサトシのもの』を「アフタヌーン」で連載中。近刊に新書館『カラスヤサトシの孫子まるわかり』、講談社『カラスヤサトシ』9巻、リイド社『カラスヤサトシの戦国散歩』があります。
近況:禁酒最長記録更新中です、2週間ちょい。夜が長いです。
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