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西尾維新との濃密本音対談──荒川弘、羽海野チカ、辻村深月ほか!

西尾維新対談集 本題
(著:西尾維新)
2016.11.26
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タイトルのとおり、西尾維新(にしお・いしん)さんの対談集です。

西尾さんといえば〈戯言〉シリーズの1作目『クビキリサイクル』で第23回メフィスト賞を受賞。以降、旺盛な執筆ペースでヒット作をつるべ打ちしてきた人気作家です。近年は、アニメ化されて大ヒットした〈物語〉シリーズで著者のファンになった方も多いのではないでしょうか。

『西尾維新対談集 本題』は、そんな西尾さんの人物像や創作に対する姿勢などを5つの対談を通じて垣間見ることができる貴重な1冊です。
 
対談相手は、
小林賢太郎さん(こばやし・けんたろう。劇作家。パフォーミング・アーティスト。ラーメンズ)
荒川弘さん(あらかわ・ひろむ。漫画家)
羽海野チカさん(うみの・ちか。漫画家)
辻村深月さん(つじむら・みづき。小説家)
堀江敏幸さん(ほりえ・としゆき。作家。フランス文学者)
といった豪華な面々。そして、その全員が「作家」です。

お互いの創作論、どの登場人物が好きかというファン目線の話から入っておいて、そこからは作家らしく創作者の思考で掘り下げていく。これはこの対談集の読みどころのひとつでしょう。
 
辻村さんとの対談では、おふたりとも人前で「作家」と名乗ることにやや遠慮がある、ということがわかって意外でした。

──仕事としては「小説を書いている」と言います。「小説家です」と言うのも面映ゆい──(辻村さん)

──「文章を書く仕事をしています」とか、そういう曖昧なところに落ち着きがちです──(西尾さん)

おふたりとも超人気作家だけに、なんだか微笑ましくなりますが、こういうところにこそ西尾さんと辻村さんの人となりが表れているのかもしれません。
 
この辻村さんとの対談は、文面から読み取る限り、西尾さんがとくに楽しそうだったのが印象的でした。それは同年代、同じメフィスト出身作家という共通点ゆえでしょうか。「投身自殺」やら「復讐」やら物騒な単語が出てきても、そこから読者が読み取る空気はやはり和気あいあいなのです。親友同士の同窓会めいた雰囲気さえ感じます。

一方、そのひとつ手前の羽海野チカさんとの対談では、「キリンってああ見えて、すごく強いらしいんです。あの脚で蹴飛ばすとライオンだって死んでしまうらしいのですよ」(羽海野さん)といった豆知識が飛び出してきたかと思うと、

──もちろん、楽しいこともたくさんある。でも、楽しいこととつらいことの波がものすごく激しいことこそが、作るということ──(羽海野さん)

作家の生々しい本音が吐露されます。僕はここが一番面白かったというか、磁場に引き寄せられるように気持ちも上半身も前のめりになって読みました。
 
もちろん「好き」や「楽しい」だけで創作することは決して悪いことではありません。その状態でずっとやっていけるなら、きっとそれが一番。でも、とくにプロは、暗く塞ぎ込んだ心境にあったとしても、仕事に打ち込まなければならない。創造しなければならない。

──深いところまで自分で潜っていかなければ、もう、「美しい真珠」は落ちてはいない。でも、その真珠に辿り着くまでの過程は苦しいぞ──(羽海野さん)

僕は、そんな苦しみを乗り越える過程にこそ、プロの姿勢というものが滲み出ている気がします。そういうところがほんの少しであれ語られている。それだけでも、この対談集には一読の価値があると言っていいでしょう。

しかしこんなことを書くと、与えなくてもいい堅苦しさを与えてしまいそうで不安になりますが、本書の大部分は明るく楽しい会話で構成されているのでご安心を。

とにかく西尾さんをはじめ、対談相手全員が高い見識をお持ちの方たちばかりです。創作以外の面でも意外な発見や学びがあるなど、会話の質、強度も最初から最後まできっちりと保たれていました。といって、難解さや取っつきにくさはゼロです。そうした読みやすさに加え、西尾さんだけでなく、対談相手の思考や性格が覗き見できるため、そのファンの方たちも充分楽しめるだろうな、と感じた1冊でした。

⇒特設ページはこちら!

『西尾維新対談集 本題』書影
著:西尾維新

“一線を走る彼らに、前置きは不要だ”。デビュー以来第一線を走り続ける作家・西尾維新が書いた5通の手紙と、それを受け取ったクリエイター達による、「本題」からはじまる濃密な対談集。

レビュアー

赤星秀一 イメージ
赤星秀一

1983年夏生まれ。小説家志望。レビュアー。ブログでもときどき書評など書いています。現在、文筆の活動範囲を広げようかと思案中。テレビ観戦がメインですが、サッカーが好き。愛するクラブはマンチェスター・ユナイテッド。

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