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【すばらしい生命体!】育児書よりも、赤ちゃんがわかる絵本

あかちゃんがやってくると、とても暮らしが変わります。家の中がきちんとかたづかなくなったり、火曜日のあとが何曜日かわからなくなったり……。 その「大事件」を、リンドグレーン記念文学賞受賞作家のイソールが、ゆかいに、おおらかに表現した絵本が、この『ちっちゃいさん』です。
新しい「あかちゃん取扱説明書」とでも呼ぶべきこの絵本は、子ども自身が自分の存在を確認するだけでなく、あかちゃんを迎えたばかりの両親、これからあかちゃんを迎える人たちにも、たくさんの喜びを与えてくれます。
今回、日本での発売を記念して、訳者の宇野和美さんからメッセージを寄せていただきました。

2016.04.20
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訳者・宇野和美さんからのメッセージ

かつて「ちっちゃいさん」だったすべての人への贈り物

この絵本を初めて手にとったとき、「こう来たか!」と思いました。ユニークな視点で赤ちゃんを描き、思いもかけないところに連れていってくれる作品だったからです。

著者のイソールさんは、4歳になる男の子と5ヵ月になる女の子のお母さんです。フェイスブックの投稿から子ども好きの素顔がうかがえますが、この作品では、「わたしの赤ちゃん」ではなく、別の場所からやってきた「ちっちゃいさん」としての赤ちゃんをクローズアップしています。「ほんとうのことから生まれたおはなし」とあるように、自らの子育ての体験がベースになっていますが、自伝的なエピソードではなく、驚きに満ちた、すばらしい生命体として、赤ちゃんを客観的にユーモアをこめて描いたところに、この本のおもしろさがあります。赤ちゃんの夜泣きのこと、目のこと、耳のことを、どう表しているか、どうぞ読んでみてください。

翻訳はとても楽しい作業でした。イソールさんの言葉が伝わるようにと、何度も読み返して文章をねりあげましたが、そうしながら、わたしも催眠術にかかったかのようでした。20年以上前に自分が3人の「ちっちゃいさん」を迎えた頃のこと、普段は忘れている記憶――肩のところでよくゲボッとしていたこと、足の指を口に入れていたこと等々──がよみがえってきたのです。

子育ての嵐を通りすぎたわたしがこの本を読めば、懐かしくあったかい気持ちになりますが、子育て真っ最中の方が読んだなら、いかっていた肩の力をフッと少し抜けるかもしれません。また小学生なら、赤ちゃんってすごいなあ、自分はこんなふうに大きくなったのかとうれしくなりそうです。ある図書館の児童室で先日、2歳くらいのお孫さんに絵本を楽しげに読んでいるおじいちゃんがいたのですが、その方が読んだならなんと言うかしらと思いました。だって、その方はこの本に出てくるおじいちゃんとそっくりだったのです!

そんなふうに思えるのは、この本が人間の根源的なすばらしさを描きだしているからでしょう。かつて「ちっちゃいさん」だったすべての人を幸せにしてくれる本です。多くの方に手にとっていただけたらうれしいです。

担当編集者からのコメント

イソールは、この絵本を、母となったその年に描きはじめました。 あかちゃんがこの星に適応していく(同時に、わたしたちがあかちゃんに適応していく)過程は、どんな道のりなのでしょう。
読めば、あかちゃんのことが、さらには、となりの人のことさえも、 愛おしくなります。
あかちゃんを迎えたばかりの方はもちろん、これからあかちゃんを迎える方、子育てを終えた方、どんな方にも、たくさんの喜びをあたえてくれる、人間賛歌のような絵本です。
そもそも、わたしたちはみんな、「ちっちゃいさん」だったのですから!

プロフィール

この星にやってきたばかりのころの作者

作/イソール

1972年、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。 国立ロへリア・イルルティア美術学校、ブエノスアイレス大学で美術を学び、大学在学中より新聞、雑誌のイラストや、本の挿絵などを手がける。 メキシコの出版社主催の絵本コンクールへの応募がきっかけで、1997年に絵本作家としてデビュー。2003年にブラティスラヴァ世界絵本原画展金のりんご賞、2013年にリンドグレーン記念文学賞を受賞。 子どもの目線をとりいれた、自由でユーモアあふれる絵本作家・イラストレーターとして世界各国で注目され、バンドの女性ボーカルとしても活動している。 日本語に翻訳された作品に、『かぞくのヒミツ』、『うるわしのグリセルダひめ』(ともに宇野和美・訳 エイアールディー)がある。

この星にやってきたばかりのころの訳者

訳/宇野和美(うの かずみ)

1960年、大阪府生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。出版社勤務の後、2002年、バルセロナ自治大学教育学部言語国語教育学科大学院修士課程修了。 訳書に『フォスターさんの郵便配達』、『ふたりは世界一!』(偕成社)、『むこう岸には』(ほるぷ出版)、『ピトゥスの動物園』(あすなろ書房)、『パパとわたし』(光村教育図書)、『ベラスケスの十字の謎』(徳間書店)、『日ざかり村に戦争がくる』(福音館書店)など多数。イソール作品『かぞくのヒミツ』、『うるわしのグリセルダひめ』(エイアールディー)の翻訳も手がける。 スペイン語翻訳家として活動するとともに、スペイン語、カタルーニャ語の文学および児童文学を精力的に紹介している。スペイン語の子どもの本専門ネット書店「ミランフ洋書店」主宰。

『ちっちゃいさん』書影
著:イソール 訳:宇野和美
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