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モテたい女性たちと、オタクの男性たちの近親憎悪

モテたい理由 男の受難・女の業
(著:赤坂真理)
2014.06.24
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先日、出演している文化系トークラジオLifeの自主トークイベント「ドラマヒロイン進化論~東京ラブストーリー・赤名リカから失恋ショコラティエ・高橋紗絵子まで」を企画し、出演してきました。

そのときに主題となったのが、なぜ、昔だったらヒロインではなかったはずの、モテに対しての策士の「サエコ」が「失恋ショコラティエ」ではヒロインとなったのか、ということでした。今から23年前、1991年の「東京ラブストーリー」であれば、「サエコ」的なキャラクターの「さとみ」はヒロインの「リカ」のライバルで、決してヒロインにはなれませんでした。これはなぜなのでしょうか。

赤坂真理さんの『モテたい理由』にも、こういった疑問に関連する記述がありました。「古来、ドラマというのは苦労人のほうに感情移入するようにつくられてきた。シンデレラを思えばいい」と。しかし、女性誌の「着回し」のページに出てくるような物語では、「苦労知らず」のほうが「一人勝ち」してしまうのだそうです(もちろん、サエコはけっこう苦労はしているのですが、20年前、女性が共感するような苦労の質とは違いました)。

これって、昨今の少年漫画でも、かつては多かった努力でのし上がる物語よりも、天性の才能がある主人公の物語が多くなっているという話と同じ変化なのかもしれません。この本では、モテたい女性たちと、オタクの男性たちが近親憎悪しているとも書かれています。

また赤坂さんは、雑誌『CanCam』のエビちゃん劇場という着回し企画では、エビちゃんこと蛯原友里さん演じるヒロインのプロフィールが、ぼやかしながらも、上智大学や、幼稚舎から慶応であることがはっきりわかるようになっていると指摘します。これは、ヒロインが「どう育ったか」を物語っているそうです。

赤坂さんは「女には不思議な習性があって、なぜか、本人の努力以外のファクターが強く作用した美質を備えた同性に、より強い羨望を感じる。たとえば生まれつき美人であるとか、富豪のおうちに生まれついた、とか」と綴っています。でも、さっきの少年漫画の話を思い浮かべてみると、いまや男性のほうにも「努力以外のファクターが重要」という時代になっているのかもしれません。

ただ、最近は女性のほうが努力に向かっている気もします。例えばAKB48は、生まれ持った資質で上位メンバーになる子はほとんどおらず、平凡な女の子が一生懸命かわいくなるように努力したり、ファンへの対応を工夫したり、グループをまとめる責任感があったりという子が上位になることがほとんどです。

彼女たちの順位を男性たちが決めているとなると、今まで男性が少年漫画などで消費していた努力の物語は、女の子に投影する時代になったのかもしれないと思うのでした。

レビュアー

西森路代

1972年生まれ。フリーライター。愛媛と東京でのOL生活を経て、アジア系のムックの編集やラジオ「アジアン!プラス」(文化放送)のデイレクター業などに携わる。現在は、日本をはじめ香港、台湾、韓国のエンターテイメント全般や、女性について執筆中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に「女子会2.0」(NHK出版)がある。

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