今日のおすすめ
(作・絵:マラク・マタール 訳:さくま ゆみこ)
14歳の時の実体験をもとに創作
作者マラク・マタールさんは1999年生まれ。パレスチナ・ガザ地区で育ちました。2014年、51日間にわたるイスラエル軍のガザ侵攻で家に閉じこもることを余儀なくされますが、絵を描くことで恐怖をまぎらわし、将来の希望を見出していった自身の実体験を描いたのが絵本『おばあちゃんの白い鳥』です。
マラクさんは注目の若手画家として精力的に作品を発表していますが、今回の絵本のタッチはそれとは違い、まるで子どもが描いたかのようです。「私の中の子どもに、生の感情のまま、自由に描いてもらいました」と彼女は語っています。
子どもの頃のマラクさんはまた、アラビア語に翻訳された「キャプテン翼」「名探偵コナン」といったテレビアニメを兄弟たちと楽しんでいたそうです。
「桜の花や、豊かな建築物……。日本を訪れるのは夢のひとつでした。私の絵本が日本で出版され、日本の読者とつながることは、この上ない喜びです」(マラクさん)
ガザはいま、当時とは比較にならないほどひどい状況です。そこにはかつてのマラクさんのような、ふつうの子どもたちが多く暮らしているということを、あらためて思い起こさせられます。
──児童図書編集チーム 塩見 亮
以前は女性を主題としたカラフルな絵画を描いていたが、昨秋ガザ紛争が生じて以来、写真後ろのような木炭で描いた生々しい絵を制作するようになった。白と黒しか使わないのは「アーティストとしての抗議の形」と、彼女はメディアの取材に対して語っている
1999年生まれ。パレスチナ・ガザ地区出身の画家。13歳で絵を描き始め、SNSを通じて作品を世界に発信する。その才能が認められ、経済的に自立するとともに、世界各国で個展やグループ展を開催。トルコ・イスタンブールのアイディン大学を卒業し、現在イギリス・ロンドン在住。
- 電子あり
マラクは、パレスチナのガザに暮らす、想像力豊かな女の子です。
ある日から、町では大きな爆発が続き、マラクは50日間も家の外に出ることができませんでした。マラクは、いつの間にか、絵を描いていました。家族や友だち、空飛ぶ鳥……。心の中にあるものを描いていると、気持ちが落ち着くのです。そんなとき、1羽の鳥が窓辺に飛んできました──。
※小学1年生から
レビュアー
関連記事
-
2023.10.20 レビュー
ウクライナに平和を。少女の目を通して戦争を描く「言葉」のない絵本
『イエロー バタフライ』作・絵:オレクサンドル シャトヒン
-
2023.09.27 レビュー
「戦争」の足音に慣れてはならない。 ウクライナ「命の絵本」
『イエロー バタフライ』作・絵:オレクサンドル・シャトヒン
-
2024.05.31 レビュー
世界を驚かせたニュース番組への乱入! ウクライナ侵攻への6秒の叛乱の代償──
『2022年のモスクワで、反戦を訴える』著:マリーナ・オフシャンニコワ 訳:武隈 喜一/片岡 静
-
2022.07.21 レビュー
「写真の少女」のその後の人生──ベトナム戦争から50年
『「ナパーム弾の少女」五〇年の物語』著:藤 えりか
人気記事
-
2024.10.11 レビュー
株も賃金もまだまだ上がる!「日経30万円時代」に備えて資産を守り、増やすには?
『「エブリシング・バブル」リスクの深層 日本経済復活のシナリオ』著:エミン・ユルマズ/永濱 利廣
-
2024.10.22 レビュー
【学習まんが】北海道には「日本の歴史」とは違う独自の時代区分、歴史があった!
『講談社 学習まんが 北海道とアイヌ民族の歴史』監修:桑原 真人/川上 淳 漫画:神宮寺 一
-
2024.10.16 インタビュー
松永K三蔵さんって、どんな人? 第171回芥川賞受賞作家スペシャルインタビュー
『バリ山行』著:松永 K三蔵
-
2024.10.15 レビュー
不眠、うつ、認知症、高血圧……すべての不調は腸内環境の乱れから。腸の知られざるはたらき
『「腸と脳」の科学 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき』著:坪井 貴司
-
2024.10.08 レビュー
史上最大の経済実験「異次元緩和」の重すぎる代償──私たちはどんなツケを払うのか
『異次元緩和の罪と罰』著:山本 謙三